第25話「レベル12とレベル10」
家に帰ると、アキラは庭にカートを置いた。
発泡スチロールの山はそのままだったが、今はそれを気にする余裕もない。
「まず飯だな。腹減った」
アキラが腹を押さえる。
「わかった!」
ユウも同じように腹を押さえた。
時計を見ると、すでに午後16時になっていた。
朝ごはんを食べてから、2人とも何も食べていない。
「そういえば……今日、何も食べてないね」
「そりゃ腹減るわ」
「何作ろうかな」
「肉!」
「即答なんだ」
「今日はいっぱい動いたからな。肉だ、肉!」
ユウが笑いながら台所へ向かおうとした、その時だった。
ユウのスマートフォンが鳴った。
「電話……あ、おかぁさん!」
ユウは慌ててスマートフォンを取った。
「もしもし?」
少し離れたところで、アキラは聞き耳を立てる。
「うん。大丈夫」
「うん。アキラの家に避難している」
「うん……わかった」
「お母さんも気を付けてね」
「じゃあね」
ユウは電話を切った。
「なんだって?」
アキラが聞く。
「しばらく帰れないって」
「そっか」
「病院も大変みたい。だから、しばらくここにいていいって」
ユウはスマートフォンを見ながら答えた。
そしてアキラがニヤリと笑う。
「じゃあ、公認だな」
「何が?」
「俺の家にいること」
「そうだけど?」
「つまり……公認の仲だ」
「は?」
アキラは腕を組み、うんうんとうなずいた。
「婚約者として」
「誰がよ!」
ユウの手元からリモコンが飛んできた。
「危なっ!」
アキラは頭を傾けて避けた。
リモコンは壁に当たり、床に落ちる。
「何すんだよ!」
「何言ってんの!」
「冗談だろ!」
「冗談でも言っていいことと悪いことがある!」
「はいはい」
アキラは笑いながらソファに座った。
「さて……」
スマートフォンを取り出す。
「レベル確認するか」
アゲダマ戦記のアプリを開く。
ログインはできない。
それでも、現在のステータスだけは確認できる。
「おお!」
アキラの目が大きくなる。
「レベル12!」
「え?」
「レベル8から4も上がったぞ!」
グリズリーとの戦闘。
そして帰り道に倒したワイルドキャット5体。
さらにグレイウルフ3体。
それだけの戦闘をこなした結果だった。
アキラは自分のステータスを確認する。
【名前】アキラ
【年齢】19
【レベル】12
【速筋】42
【遅筋】41
【打たれ強さ】40
【魔力】38
【ギフト】鑑定
「結構上がったな……」
「私も見ていい?」
「ああ」
ユウもスマートフォンを操作する。
「……私、レベル10」
「おお!」
「4から6しか上がってない」
「いや、6上がれば十分だろ」
「でもアキラは4だよ?」
「俺は前衛でずっと戦ってるからな。ユウは後ろから攻撃してるし、経験値の入り方はたぶん同じだな」
ユウは自分のステータスをじっと見つめた。
「レベル10……」
少しだけ嬉しそうに笑う。
「私も2桁になった」
「そうだな」
アキラも笑った。
「最初はレベル4だったのにな」
「うん」
2人とも、ほんの少し前までは普通の生活をしていた。
ゲームの世界だと思っていたものが現実になり、魔物と戦い、魔石を集め、武器を作り、服まで強化した。
そして今。
アキラはレベル12。
ユウはレベル10。
まだ始まったばかりなのに、2人の身体はすでに普通の人間とは違っていた。
「よし」
アキラが立ち上がる。
「レベル12記念だ。今日は肉を食おう!」
「結局それなんだ」
「腹が減ってるからな!」
「はいはい」
ユウは笑いながら台所へ向かった。
だが、2人はまだ知らなかった。
庭に置かれた大量の発泡スチロールが、これから自分たちの家を守る巨大な壁へと変わることを。
そして、その壁が必要になるほど、この世界の魔物が強くなっていくことを。




