第16話 朝のニュース
翌朝、7時。
「……ん」
アキラはソファーの上で目を覚ました。
まだ少し眠い。
昨日はスライム、チョリキ、そして金色の魔石。
さらに錬金術の実験までやった。
「疲れた……」
ふと、床を見る。
「……ユウ?」
ユウがソファーの下で丸くなって寝ていた。
「お前、風邪ひくぞ」
アキラは立ち上がり、タオルケットを持ってきてユウにかける。
「よし」
それからキッチンへ向かった。
コーヒーメーカーをセットする。
豆はモカブレンド。
スイッチを入れると、コーヒーの香りが部屋に広がっていく。
アキラは洗面所へ行き、顔を洗う。
そして歯を磨く。
「ふう……」
戻ってきたところで、テレビのリモコンを手に取った。
「ニュースでも見るか」
テレビをつける。
ザーッ。
「……」
別のチャンネル。
ザーッ。
また別のチャンネル。
ザーッ。
「ほとんど死んでるな……」
大半のチャンネルが砂嵐だった。
だが。
4チャンネルだけは映った。
朝の情報番組『GIP』。
「おお……」
アキラが画面を見る。
いつものスタジオではない。
スタジオの入り口や窓には分厚い板が設置され、まるで要塞のようになっている。
キャスターがカメラに向かって説明していた。
「ご覧ください。この扉です」
カメラがスタジオの入口へ移動する。
そこには巨大な鋼鉄製の扉があった。
「こちらは昨日の事態を受けまして、急遽設置されたものです」
キャスターが扉を叩く。
ゴン。
「厚さは30mmの鋼板です」
「30mm……」
「現在、専門家によりますと、通常の魔物ではこの扉を開けることは難しいと考えられています」
アキラは黙ってテレビを見る。
「……テレビ局まで要塞になったのか」
画面がスタジオ全体へ戻る。
窓にも鉄板。
出入口にも防護設備。
スタッフの後ろには、警備員らしき人たちが立っている。
そして画面下にはテロップ。
『魔物から身を守るには』
アキラが見ていると。
「う……ん」
後ろから声がした。
ユウが目を覚ました。
「おはよ……」
「おはよ」
アキラは振り返る。
「顔洗ってこい」
「うん」
「歯も磨いてこい」
「うん……」
ユウが洗面所へ向かう。
その間にコーヒーが抽出された。
アキラはカップを取り出す。
トクトクトク。
そこへシロップを2つ。
冷蔵庫から生クリームを取り出す。
ドボッ。
「よし」
甘くしたモカブレンドを一口飲む。
「うまい」
ユウも顔を洗って戻ってきた。
「私にも」
「そこにある」
ユウがカップにコーヒーを注ぐ。
テレビからキャスターの声が聞こえてくる。
「現在、全国各地の避難所から中継をつないでいます」
画面が切り替わる。
体育館。
そこには大勢の人が集まっていた。
毛布を敷いている人。
子供を抱えている人。
不安そうにスマートフォンを見つめている人。
そして避難所の周囲には、自衛隊員が物々しい装備で警戒に当たっていた。
「……すごい人数」
ユウが呟く。
「物流も大きな影響を受けています」
キャスターが続ける。
「現在、トラックなどによる物流は大幅に停止しています。高速道路でも魔物による事故が相次いでおり……」
映像が切り替わる。
高速道路の定点カメラ。
路肩には大型車両。
そして道路上には、巨大な魔物の死体が転がっている。
「うわ……」
ユウが顔をしかめる。
「銃器による攻撃も確認されていますが、現在のところ、多くの魔物に対して十分な効果が確認されていません」
アキラは黙って画面を見る。
「やっぱりな」
「やっぱり?」
「ゲームでもそうだった」
アキラはコーヒーを飲む。
「普通の武器じゃ、魔物の種類によってはほとんどダメージが入らない」
テレビでは専門家が説明している。
「魔物を発見した場合、決して近づかないでください」
画面に避難方法が表示される。
「まず、自分の身体を大きく見せてください」
「大きく?」
ユウが首を傾げる。
「そして、大きな声で威嚇してください」
「え?」
「そのまま、魔物から目を離さず、ゆっくりと後ろへ下がってください」
アキラは画面を見ながら頷いた。
「これは正しいな」
「そうなの?」
「種類にもよるけどな」
キャスターが続ける。
「絶対に走って逃げないでください。魔物によっては、逃げるものを追跡する習性があります」
「……」
ユウがテレビを見る。
「昨日まで普通だったのにね」
「そうだな」
アキラはカップを置いた。
テレビの中では、要塞化したスタジオ。
外では魔物。
道路は寸断され、物流も止まっている。
そして、自衛隊まで動員されている。
アキラは窓の外を見る。
「……ゲームが現実になったんだな」
その言葉に、ユウも黙った。
テレビから、次のニュースが流れる。
「続いて、魔物の特徴です」




