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アゲダマ戦記:ゲームが現実に降臨して世界のルールが急変したお話。  作者: 忍絵 奉公


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第15話 クラスLINE、142件の大混乱


 ユウはスマートフォンを握ったまま、クラスのグループLINEを開いた。

 そこには、とんでもない数のメッセージが並んでいた。

「……多すぎる」

 上から順番に見ていく。

『これってアゲダマ戦記?』

『何それ?』

『ゲームwww』

『マジでゲームなの?』

『知らん』

『俺やったことある』

『レベル107だった俺、今レベル1なんだけど』

『え? お前も?』

『てか食べ物がない』

『俺んちも』

『配給とかないの?』

『配給日どこに行けばいい?』

『学校だって』

『学校で配るの?』

『自衛隊が来るらしい』

『マジ?』

『うちの近所、ゴブリン出た』

『こっちは犬みたいな化け物』

『道路封鎖されてる』

『コンビニ閉まってる』

『水がない』

『誰か水余ってない?』

『うち井戸ある』

『それ飲める?』

『知らんw』

 ユウは画面をスクロールする。

『外に出たら死ぬぞ』

『いや普通に出歩いてる人いる』

『魔物倒した人いる?』

『いるわけないだろw』

『俺、スライム倒した』

『嘘乙』

『マジ』

『スクショ』

『そんな余裕ない』

 さらに下へ。

『消防車めっちゃ走ってる』

『自衛隊も来た』

『ヘリ飛んでる』

『学校どうなるの?』

『休校じゃね?』

『先生から何も来ない』

『先生も避難してるんじゃね?』

『ワロタ』

『笑えねえよ』

 そして、その中に明らかに場違いなメッセージも混ざっている。

『今日の給食カレーだったのに』

『それ今言う?』

『カレー食べたい』

『俺も』

『じゃあ明日カレーなw』

『明日学校あるの?』

『知らんwww』

『ていうか世界終わった?』

『終わってないだろ』

『俺のゲーム機は無事』

『そこかよ』

 ユウは思わず苦笑した。

「……本当にカオス」

 魔物の情報。

 避難情報。

 食料不足。

 自衛隊の目撃情報。

 学校の話。

 そして、意味のない雑談。

 全員が不安で、何かを書き込まずにはいられないのだ。

 その時。

 ユウはふと思った。

「そういえば……」

 今日、自分たちも魔物を倒した。

 スライム。

 チョリキ。

 魔石も手に入れた。

「みんな知りたいよね」

 ユウは何気なく文字を打ち込んだ。

『私、魔物倒したよ』

 すぐに返信が来る。

『え?』

『マジ?』

『何倒した?』

『ゴブリン?』

『強いやつ?』

 ユウは少し考えた。

 そして送信。

『スライム』

 一瞬、返信が止まった。

『スライムwww』

『最初に出てくるやつじゃん』

『ゲームと同じなの?』

『魔石落とした?』

『何色?』

『何レベル?』

 ユウはさらに返信する。

『青とか赤とか緑とか』

『金色もいた』

『え?』

『金色?』

『それレアじゃね?』

 ユウはさらに続ける。

『でも服を溶かされた』

『wwwww』

『マジかよ』

『スライムに服溶かされるのゲームそのまんまじゃんw』

 ユウは何となく、今日の出来事を思い出した。

 そして。

『お尻丸見えwww』

 送信。

「……」

 数秒。

 既読が一気に増えた。

『は?』

『え?』

『マジ?』

『ユウ?』

『何言ってんのwww』

『画像は?』

『画像www』

『おい男子黙れ』

『いやお尻気になるだろ』

『気になるじゃねえよ!』

『スライム強すぎだろwww』

『服溶けるってヤバい』

『ユウ大丈夫なの?』

『今どこ?』

『アキラのにいちゃんと一緒?』

「……あ」

 ユウはそこで初めて、自分が余計なことを書いたことに気づいた。

 さらに通知が増える。

 ピコン!

 ピコン!

 ピコン!

『アキラってアゲダマ廃人のアキラ?』

『アキラ大帝様、ゲーム詳しいじゃん』

『今一緒にいるの?』

『何レベル?』

『どうやって魔物倒したの?』

『金色の魔石って何?』

『魔石って売れる?』

『食べ物に変えられない?』

『アキラ君なら何か知ってるんじゃね?』

『聞いてみて!』

『聞いてみて!』

『聞いてみて!』

『てかグループラインご招待して!』

 ユウは隣を見る。

 アキラは床で爆睡している。

「……起こしたほうがいいかな」

 だが、アキラはまったく起きない。

 ユウは再びスマートフォンを見る。

 通知は、すでに200件を超えようとしていた。

「……もう知らない。私の疲れた」

 ユウはスマートフォンを伏せた。

 その横では。

「すー……すー……」

 アキラが気持ちよさそうに眠っている。

 外では魔物が徘徊し、人々は食料を求め、街では混乱が広がっている。

 そしてアキラの知らないところで。

「アキラなら知ってる」

 という期待だけが、クラスの中で急速に膨らんでいた。

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