第14話 オリハルコンの槍と158件の通知
その日の晩御飯は牛丼だった。
「いただきます!」
アキラは大盛りの牛丼を一気にかき込む。
「うまい!」
「ちゃんと噛んで食べてよ」
ユウは呆れながら自分の牛丼を食べる。
昼間はスライムとチョリキとの戦闘。
その後は錬金術の実験。
2人とも腹が減っていた。
牛丼を食べ終えると、アキラはさっそくユウの槍を手に取った。
「よし。今度はこれだ」
「私の槍?」
「そう。もっと強くする」
まず槍の棒の部分を金色の魔石で変化させる。
「棒はカーボンだな」
キィィィン……。
槍の棒が黒く変化した。
「軽い!」
アキラが持ち上げる。
「これなら長くても振り回せる」
続いて槍先を見る。
「問題はここだ」
アキラは槍先に魔力を流した。
青白い光が槍先を包む。
「槍先はオリハルコン!」
槍先が黄金色に輝く。
「よし!」
アキラは興奮していた。
「オリハルコンは魔力を流すと形状を変えられるんだ!」
「形が変わる?」
「そうだ」
アキラは説明する。
「槍だけじゃない。さす又にもできるし、蛇鉾にもできる。青龍偃月刀みたいな形にもできる!」
「そんなに?」
「ゲームではかなり便利な武器だったんだ」
アキラは槍を握った。
「じゃあ、試してみるぞ!」
魔力を流す。
「変形!」
……。
「……」
何も起こらない。
「おかしいな」
もう1度魔力を流す。
「変形!」
……。
「変わらないね」
「なんでだ?」
アキラは槍をじっと見る。
「オリハルコンなのに……」
そして、ふと思いつく。
「まさか……」
アキラはカーボン製になった棒の部分を見る。
「魔力が伝わってない?」
「棒が原因?」
「たぶんな」
アキラはスマートフォンを取り出した。
「軽くて、熱に強くて、丈夫な金属……」
検索する。
「アルミ、チタン、マグネシウム……」
「どれがいいの?」
「まずはアルミだな」
アキラはカーボンの棒をアルミへ変化させる。
そして魔力を流す。
「変形!」
オリハルコンの槍先が、ほんの少しだけ動いた。
「おっ!」
だが、そこで止まった。
「……微妙」
「ちょっとしか変わってないね」
「魔力伝導率が低いんだ」
次はチタン。
「これならどうだ!」
変化させて魔力を流す。
……。
「さらに悪い!」
アキラは頭を抱えた。
「じゃあ……マグネシウムだ」
棒をマグネシウムへ変化させる。
そして魔力を流す。
「……」
「どう?」
「……いける」
オリハルコンの槍先が、ゆっくりと形を変え始めた。
「おお!」
アキラの目が輝く。
「これだ!」
「やったね!」
「マグネシウムなら魔力がちゃんと伝わる!」
しかし。
「はぁ……はぁ……」
アキラの息が荒くなる。
「アキラ?」
「ちょっと……疲れた……」
「大丈夫?」
「魔石から魔力を引き出すのって、結構疲れるな……」
アキラはその場に座り込んだ。
「ちょっと休む……」
「うん」
アキラはそのまま横になった。
「……」
数秒後。
「すー……すー……」
「寝た……」
ユウは苦笑した。
そして、さっきの槍を手に取る。
「本当に変形するのかな」
ユウが魔力を流す。
すると。
グニッ。
オリハルコンの槍先が、ゆっくりと形を変えた。
「わあ!」
さらに魔力を流す。
槍先が左右に分かれ、さす又のような形になった。
「本当に変わる!」
ユウは楽しそうに槍を元に戻した。
「便利だね」
そしてスマートフォンを見る。
「……あれ?」
魔力の数値が表示されている。
【魔力:5/19】
「1回で5も使うんだ……」
ユウは驚いた。
「今のレベルだと、3回だけだね」
隣を見る。
アキラは完全に寝ている。
「アキラ、よくこんなの何回もやったね……」
ユウはスマートフォンを操作する。
その時だった。
ピコン。
ピコン。
ピコン。
「……?」
通知が次々と表示される。
「何これ?」
ピコン。
ピコン。
ピコン。
通知欄を見る。
「158件……?」
ユウの目が点になる。
「え?」
さらに確認する。
「クラスのグループLINE……142件?」
「何があったの……」
通知はまだ増えている。
ピコン。
ピコン。
ピコン。
ユウはしばらく画面を見つめた。
公園で魔物と戦っている間。
世界では、別の騒動が始まっていた。




