第13話 世界初のミスリル
家に戻ると、ユウはすぐに自分の家へ戻った。
「私、着替えてくるね」
「おう」
ユウが帰っていく。
アキラは1人になると、昼間に手に入れた金色の魔石を手のひらに乗せた。
夕方の光を受けて、黄金色に輝いている。
「……まさか、こんな序盤でこれが手に入るとはな」
アキラは魔石をじっと眺める。
ゲームの中では、金色の魔石は非常に特殊な魔石だった。
「これは……打ち出の小槌だ」
アキラは工具箱を開けた。
中から針金を取り出す。
魔石を針金で固定し、グルグルと巻いていく。
簡単な指輪が完成した。
「よし」
アキラは右手の指にはめた。
「まず、何をするかな……」
ガチャ。
「ただいま~」
「おかえり」
戻ってきたユウは、スウェットの上下に着替えていた。
「何してるの?」
「これか?」
アキラが指を見せる。
「金の指輪だよ」
ユウが近づいて見る。
青い針金に固定された金色の魔石が、キラキラと輝いている。
「綺麗……」
「だろ?」
「でも、それ何ができるの?」
「これか……」
アキラはニヤリと笑った。
「見てろ」
工具箱からペンチを取り出し、テーブルの上に置く。
そして、金色の魔石に魔力を流した。
キィィィン……。
魔石が金色に輝く。
その光がペンチへ流れ込んでいく。
「え?」
ペンチ全体が金色に染まった。
「わあ!」
ユウが目を輝かせる。
「色が綺麗になった!」
「違う」
アキラはペンチを持ち上げる。
「これは……」
「ぴっかぴかの魔道具?」
「違う」
アキラは得意げに笑った。
「これはな……金だ!」
「……は?」
ユウが固まる。
「まさか……」
「そういうことだ」
「そんなこと出来るわけないでしょ!」
「それがゲームだからな」
アキラは楽しそうに笑う。
「まだあるぞ」
再び魔石に魔力を流す。
今度はペンチが青白く輝き始めた。
金色だった表面が変化していく。
「今度は?」
「これはな……」
アキラがペンチを掲げる。
「ミスリルだ!」
「ええっ!」
「錬金術の魔石だよ!!!」
アキラは完全に興奮していた。
「この魔石の大きさなら、1mくらいの物体なら材質を変化させられる!」
「1m……」
「つまりだ!」
アキラは指を立てる。
「食べ物がなくなったとしても、そこら辺の枝を……」
「枝を?」
「小枝チョコに変えられる!」
「本物の小枝!!食べ物に出来るの!?」
「できる!」
「それはすごい……」
ユウもさすがに驚いた。
「じゃあ、まず……」
アキラは自分の腰を見る。
そこには、以前自分で作った段ボール製の鞘があった。
「これを何とかしよう」
アキラは柳葉包丁を抜く。
段ボールの鞘に金色の魔石を当て、魔力を流した。
キィィィン……。
段ボールが光に包まれる。
次の瞬間。
鞘の表面が黒く滑らかな素材へ変わった。
「できた!」
アキラが鞘を持ち上げる。
「カーボンだ!」
「へえ!」
アキラは鞘を振ってみる。
「軽い!」
そして何度も持ち直す。
「段ボールと重さがほとんど変わらない!」
「よかったね」
「これなら安心して刀を持ち歩ける!」
アキラは嬉しそうに鞘へ柳葉包丁を収めた。
カチッ。
「最高だ!」
「じゃあ、私の槍も色々変えられる?」
「もちろん!」
アキラはユウの槍を手に取った。
「これも強化しよう」
「お願い」
「それから……」
アキラは自分の柳葉包丁を見る。
「俺の刀もだ」
金色の魔石を刀身へ向ける。
魔力を流す。
光が刀を包んだ。
刀身が青白く輝く。
「……」
アキラは息を呑んだ。
「ミスリル……」
「本当に?」
「本物だ」
アキラは刀を掲げた。
「世界初のミスリルだ!」
「そんなに嬉しい?」
「嬉しいに決まってるだろ!」
アキラは子供のようにはしゃいだ。
金。
ミスリル。
カーボン。
ゲームの中でしか存在しなかった素材が、今、自分の手の中にある。
「これなら……」
アキラはさらに想像を膨らませる。
「魔石さえあれば、文明そのものを作れるぞ!」
「その前に晩ご飯ね」
「……」
ユウが台所へ向かう。
「今日も私が作るから」
「頼む!」
「あと」
ユウが振り返る。
「いい加減、服着てよ」
「え?」
アキラは自分を見る。
上半身は裸。
下半身は、スライムに溶かされてボロボロになったショートパンツだけ。
「……」
「その格好でミスリルだ金だって騒いでるの、ものすごく変だから」
「いや、でも世界初だぞ?」
「服を着てから喜んで」
「はい……」
アキラはミスリルの柳葉包丁を眺めながら、まだ嬉しそうに笑っていた。
その夜。
ユウが晩ご飯を作る横で、アキラは何度も金色の魔石を眺めていた。
世界はまだ、魔物に怯えている。
だが。
アキラの手元では、すでに新しい文明が始まろうとしていた。




