6 配信するのって難しいね②
あの後どんどんスライムを潰していったところ、なぜか視聴者が14人に増えていた。
多分2時間ぐらいプチプチしてたと思う。
『なにこのASMR』
『スライムってこんなに弱いんだ…』
『プチプチィ!』
読み上げも若干足りなくなってきた。コメント数も増えてきたからな。
「うーん、そろそろ飽きてきたなぁ。」
『スライム=飽きた』
『可哀想に』
『次の餌食になるのは何だろ』
『このダンジョンがどこかにもよるよな』
ちなみにここのダンジョンは広島の呉ダンジョンで、ある程度探索者もいる。
不思議な目でこちらを見ながら観察している人もいるな。
邪魔だからどっかにいけ。
あと、どこのダンジョンを探索中かは、絶対に誰にも言わない。
……あと、多分広島湾が近いから、ドパ牡蠣が出てきたのかもな。
「一旦ステータス割り振るか。レベルも上がっただろうし。」
『どういう振り方するんだろうな。』
『妖力って魔力と関係するのか?』
『そこら辺教えてよクロセもん』
『パチえもんいるな』
そうそう、スワイプにも魔力使ってる感じはあるけど、言うほどでもないんだよな。
壁動かしたときが一番魔力使った感覚ある。
「あー、魔力を妖力に変換して倒してる。だから、魔力でできないことも俺は出来るってことだ。」
もちろんそんな機能はない。
今適当に考えた嘘だ。でもそれっぽいだろ?
『ほぇー。アバターだからただの魔力を妖力って言ってる可能性はあるけど。』
『このV結構凝ってるもんな。』
『本当だと思う人もいるかも知れないな。』
『それっぽい嘘つくなー』
まぁ嘘ってことぐらいバレるよな。でもバレても何かしらの支障はないし。
ってか俺のこと時々VTuberって思ってる人いるけど、なんでだよ。
仮面被ってるだけだぞ? なんか違和感があるな。
まーいいや。俺には別に支障ないし。
この仮面のおかげで妖力使えてるって設定にしてるし。
『だとしても元から無名だったのはおかしくないか』
『たし蟹』
『なんでそんなすごい力持ってるのにスライムを倒してるんだろう。』
やっべ、なんかバレそうになってる。
「この仮面を手に入れたのが最近だからだよ。」
『仮面?』
『Where?』
『外人紛れ込んどるぞ』
Whereってなんだっけ。俺英語わかんない。
多分日本語もよく分かってない。最近まで一段落のことをひとだんらくって読んでたし。
誤読のくせにスマホの変換で出てくるんじゃねぇよ。
そんなことはどうでも良くて。なんで仮面がわかんないんだ?
「ほら、仮面付けてるじゃん」
『表示されてませんよー』
『アバターのバグじゃない?』
『可視化ONにしてる?そのパーツ。』
ほんとに何言ってるんだこいつら。
やっぱなにかおかしいよな。
『その耳と尻尾は表示されてるのにな。』
『そのアバター誰に作ってもらったん? 教えてよ。』
耳…? 尻尾………?
耳はわかるとしても尻尾はおかしい。なんだこの違和感は。
「ちょっとすまんが、配信はここで終了だ。チャンネル登録と高評価よろしく! 次もまた来てくれよな!」
『えっ?』
『お疲れしたー』
ポチッ
配信終了っと。
アーカイブは非公開にして、ファイルに保存しておく。
「ふぅっ。」
俺は仮面を外して考え事をする。
配信画面はこっちからじゃ見れないから、視聴者がどんな俺を見ていたのか知らないが、少し認識が違っていたな。
1度スマホでアーカイブを確認するか。
ステータス画面は、配信は出来るくせに、なぜかスマホの機能は使えないんだよな。
どこに境界線があるのかが分かりづらい。
「一回ダンジョンを出るかぁー」
換金も済ませときたいし。今回はかなりの量を集めたからな。
体感合計2時間半ほど潜ってた気がする。
若干腹も減ってきたしな。
あ、そうそう、ずっと言ってるのになぜか忘れてたステータスの割り振りもしとくか。
今のレベルは4から10まで上がった。
つまり、SPは今18pt手元にある。
今のところは魔力で困ってたりしないし、やっぱ体力全ブッパで良いや。
これで体力は130だな。
スライムだけを倒して2日で10レベルになったんだ。
このままやって、気づけば最強みたいなのになってるのがラノベなんだろうが、あいにくドーパミンが不足してきた。
もうプチプチじゃ快感を得られない体になってしまった。
なんて贅沢な体なんだ!
贅肉はついてないよ? ホントだよ?
とまぁ、そんな事を考えているうちに、ダンジョンの入口まで来てしまっていた。
さぁ黒瀬涼、お前はどちらを選ぶ! 換金か? それともアーカイブを確認するか?
おーっと! 換金所に向かって一直線だー!
流石男子高校生! とっても守銭奴だ!
ってやかましいわ。
「魔石の査定を頼む」
「わかりました。こちらに魔石を出してください。」
俺は虚無をスワイプして、アイテムドロワーを出現させる。
配信の時もだが、多分これは誰にも見えてないんだよな。
そこから俺は小魔石を少しづつつかみ取りで、全部出して、トレーに山盛りにする。
アイテムドロワーによると、241個入っているらしい。
最高記録更新だ!
更新の要因は、多分魔石を拾うっていう動作が必要じゃなくなったからだな。きっと。
受付嬢は最初は何もないところから魔石を取り出していたことに驚いていたが、だんだん表情が絶望に染まっていった。
がんばれー ふぁいとー(棒)
「……帰りたい」
「え?」
「いえ、何でも有りません。査定が終わるまで少々お待ちください。」
「これ全部で241個です。」
「へ?」
なんか可哀想だから、ちょっと教えてあげよう。
「いえ、こちらで確認させていただきます。ミスによる誤差は発生すると、私達が大変なので。」
「はぁ。」
ちぇー。まぁアイテムドロワーを教えないと、そこら辺も確証が持てないもんな。
そもそも、多分このアイテムドロワー、鑑定スキルとか持ってても不可能だろうしな、見るの。
とりあえず席座るか。
ステータスは鑑定で見ようと思えば見れる。
だが、見られた側には違和感があるから、大抵すぐバレてる。
でも、鑑定妨害とかのスキルもある。なぜなら、見られたら、捕まえてもそいつには情報があるってことだから、どうしても見られたくないものがあれば、鑑定妨害を手に入れることをおすすめする。
まぁ、習得方法が、大量に鑑定されて、それに抵抗する。もしくは、スキルオーブから獲得するしか無い。
まぁ、スキルオーブもある程度流通してるけど、大抵オークションだから鑑定師に金を払って修行したほうが安上がりだったりする。
別に俺はドパガキを見られても、最終手段スワイプで宇宙へGO! すれば証拠もなく跡形もなく情報が消えるから、問題ないんだけど。
…防犯カメラに写ったら終わりだな。
そもそも見られて何も怖くないスキルだし。
あーでも、黒い狐面被ったやつがドパガキってスキル持ってたらビビるか。
あ、黒い狐面で思い出した。アーカイブ今のうちに見ておくか。
俺はコインロッカーからスマホを取り出し、アーカイブのファイルを確認しようとした途端、
「黒瀬様、査定が終わりましたー!」
えぇー、なんでこのタイミングで終わるかなぁ。
俺はトボトボと換金所の方へ行く。
「小魔石241個で、合計4820円です」
あーでも、そんなもんか。
最短効率でこれだもんな。こっから先はこれ以上上げるのはしんどいかもしれない。
俺はお金を受け取り、スマホを開く。
正直今日はもうダンジョンは良いかなって思った。
あーでも、それより先に昼飯食いたいな。家に帰るか。
俺は歩きスマホをしながら家に向かう。
多分怒られそうなことしているが、事故らなければ無問題。
…警察に見つかれば注意される可能性はあるけど。
とりあえずファイル開いて今日の配信の動画見るか。
「…誰だこいつ」
画面に写っているのは黒い狐耳と尻尾の生えた和装の人だ。
…そう、サムネのときに取った写真と同一人物だ。
『テステス、やっほー、見てるー?』
たしかこんなセリフ言ったっけ。え、じゃあこれ俺ってことか?
顔も美化されて、狐耳、尻尾も生えてめっちゃメロい(?)
「こんなの最高じゃねぇか!」
これで俺はもっとチヤホヤされるってことだ!
ひゃっほーい!
まぁ確かに、これがVTuberっていわれるのも納得だな。
VTuberのダンジョン配信者ってどれぐらいいるんだろうか。
そのへんに詳しい愚妹に後で聞くか。
……
………
家につくと、ダイニングにはそうめんがあった。
そっかもう12時か。
愚妹に色々聞くのは後でかな。
「あら、おかえり。先シャワー浴びる?」
「いや、このままご飯食べる。」
ダンジョン内じゃ汗をかくことはほとんど無いからな。
走って帰ってきたわけでもないし。
「じゃあついでに二階にいる2人を呼んできてくれるかしら。」
「わかった。」
俺は階段を上がり、まずは父さんの仕事部屋に向かう。
この人基本的に在宅ワークだからな。仕事内容はなんか色々してるらしい。
聞いてもあんまり言わないし、そこまで興味あるわけでもないからあやふやだ。
コンコンコン
「ご飯できたよー」
「わかった。少し待ってくれ。もうすぐ一段落つくから。」
あ、俺と同じ間違いしてる。訂正せずにこのまま放置しとこっと。
次に愚妹の部屋に向かう。
なぁーにが「りんのへや」だ。トイレで十分だろ。
コンコン
「おう、ご飯できたって。」
「ここトイレじゃないわよ!」
なんだよ。ノックの回数に不満でもあるのか?
そんなどうでもいいところに反応しやがって。
「すまんすまん(棒)、とりあえず一階こい。」
「わかったわよ。」
ガチャ
「あぁ、そうそう、お兄ちゃんの配信見てたわよ。」
え? お前にチャンネル名教えた覚えないんだけど…
「どうしてかおすすめにでてきたのよ。」
「なんでだよ」
「しらないわよ。」
まぁいいか。見られて嫌なこと特にしてないし。
「あんなコスプレ持っていたの?」
「コスプレしてねぇよ。なんか気づいたら勝手にああなってた。」
「どういうことよ。」
「知らねぇよ。」
わかんないことが多いな。ダンジョンなんてそんなもんか。
そもそも存在が不思議だからな。
トタトタトタ
2人で階段を降りる。
「まぁでも、初配信で14人は上出来なんじゃない?」
「なんで上から目線なんだよ。」
「…背伸びする必要あった?」
えー、だって上から目線うざいもん。
物理的に上にいてもあんま意味ないんだけど。
「じゃあお前は上目遣いとかで対抗しとけ。」
「お兄ちゃんをパシるときに試すね」
「そんなときに試すな。」
「はいはい、漫才してないで早く階段を降りなさい。」
「「あ、父さん」」
父さんに急かされて俺達はダイニングに向かった。
………
「「「「いただきます」」」」
俺達は昼間の時間帯のあまり面白くないニュースを見ている。
…いや、だって平日の昼間の番組って、大抵ご老人向けだったりするじゃん!
喋ってる速度とか、内容とかあんま興味ないんだよ。
ズゾゾゾ
部屋にはそうめんを啜る音と、テレビから聞こえる音だけが響いている。
うーんとりあえず、これ食べ終わったら愚妹に収益化の条件とか聞いとくか。
…収益化しなくても、ダンジョンで稼げはするけどな。
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