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55 …結局ドパガキはドパガキ

「……暇だぁ…」


 もっそもっそと、冷凍食品の唐揚げを食べながらそんな事をぼやく。

 昼休みの時間、一つの机を囲うように4人で昼飯を食う。


 ……狭ぇよ。


「ダンジョンは〜?」

「レベル上がりすぎててスリルがないし、上がらないし、稼ぎもいらないし。」

「他のダンジョンに行けば良いんじゃないか?」

「んなめんどくさいことするわけないだろ。日帰りでサクッと行きたいんだよ。」

「わがままだなぁ…」


 暇すぎて死にそうだ。

 ……死んでも生き返るけど。


「そういえば来月に修学旅行あったよな?」

「あぁそうそう。確か奈良のはず。……せっかくなら沖縄とか行きたかったんだが。」

「お前なら簡単に行けるだろうが。」

「光、お前が言うか。」


 金持ちが。俺みたいな平民はそんなに簡単に重い腰を上げれねぇんだよ。

 庶民魂だ。……言ってて虚しい。


「そこのダンジョンに自由時間でこっそり行ったら良いんじゃないか?」

「お前天才か!?」

「言われずとも。」


 その手があったか!

 …っていうか天才の自覚あるんじゃねぇか。うざっ。


「………いや、どっちにしろ来月じゃねぇか。」

「………」

「……愚策」

「天才じゃなかったね〜」

「うるさいなぁ!」


 ぷぷぷっ、煽られてやーんの。

 ……いや、八つ当たりでこっち睨むなよ。完全に理不尽だろうが。


「じゃあ、考察でもしといたら良いんじゃないか?」

「あ〜、そういえばあの動画見たよ〜」

「……フェイク」

「フェイクじゃねぇよ! つーか、俺が考察できると思うか?」

「「「無理無理」」」

「満場一致で否定してんじゃねぇよ!」


 …お前らにまで怪しまれたらもう終わりじゃねぇか。

 あと、ドパガキに考察をさせようとするんじゃねぇ。変な方向に思考が跳ぶに決まってるだろ。


「そういや、ノーマルダンジョンとユニークダンジョンって分かれたじゃん。」

「そうだっけ?」

「……なんで俺のほうが詳しいの?」

「いや、俺呉ダンジョンしか行ったこと無いし。」

「ネットニュースでも、テレビニュースでもいいから、それぐらい見ろよ。」

「……光……これで10回目」

「もう言うの諦めようかな。」


 諦らめんなよ。…元凶俺だけど。

 つーか明日香、お前数えてたのかよ。…絶対適当言ってるだけだろうけど。


「呉みたいに個性のあるダンジョンがユニークダンジョンで、普遍的な何の面白みもないダンジョンがノーマルダンジョンな。」

「ほえ〜」

「マジで知らないんだな…」


 いや、興味ないし。

 …あ、じゃあユニークダンジョンには神器があるってことなんかな?


 じゃないと分ける理由もわからないし。

 あぁ、じゃあ神器欲しい時はユニークダンジョン行けばいいんだな。


 …あれ? じゃあ異世界人を受け入れたくない時はノーマルダンジョン攻略しておけば良いのでは…?


「ユニークダンジョンが奈良とかに密集してるんだけど、なんでかを考えるとかをしてみたら? 動画にでもすれば良いんじゃないか?」

「確かに。………いや、文化が密集してるからだろ。」

「「「え?」」」

「揃えて質問するんじゃねぇよ。動画でも言ったけど文化吸収のためにダンジョンがあるって。文化の結晶が神器なんじゃないかって。」


 まぁ、これに関しては鈴が言ってた話だから、俺の理論じゃないんだがな。


「あー、なんか言ってたよね。じゃあ、ユニークダンジョンには神器があるってこと?」

「そうだな。こういう大和が…」


スッ


「「「ストップストップ!!!」」」

「あっ」


 アイテムドロワーから大和出しかけた……

 あっぶね。なんかもう使い慣れすぎてて自然に使ってしまう…


 …あぁ暇だなぁ…

 …なんか事件起こらねぇかなぁ…


「あ、そうか。俺が事件起こせば…」

「…犯罪者にでもなるつもりなのか?」

「誰も止められない凶悪犯じゃーん。」


 確かに常人じゃ止められないよな。

 多分アドガキ使えば銃弾避けられるよと思うし。


 俺を最も苦しめてくる脅威は暇だったのか…

 ドパガキの天敵だな。



◆ ??? ◆



「これより、突如現れ、異常な功績を上げ続ける正体不明の黒狐クロセに対する対応の会議を始める。」


 長机にスーツを着た重鎮のような人々がキッチリ座って会議をしている。


「結局、彼は何者なのだ?」

「動画投稿サイトの会社に聞いてみたが、プライバシーということで詮索を拒否された。」

「怪しい者は見つかっているのか?」

「特定には至っていませんが、急激にステータスが上昇した高校生が1人おり、【ステルス】持ちの調査員が調査を進めています。」


 未だにアバターでダンジョンを配信している黒狐クロセ。

 神出鬼没により、誰も見つけられていない。


「彼の動画曰く、異世界人の存在の言及をしていたが…」

「どうせフェイクであろう。信用に値しない。あの配信すらも、AI生成と言ってしまえばそれだけなのだ。」

「否定できません。ただし、映像内のダンジョン情報が公開情報と一致している。少なくとも、ただの創作動画とは考えにくいでしょう。」


 配信中に全世界のダンジョンで異変が起きたことは周知の事実だ。これは覆しようがない。

 私は、日頃のストレスから少し胃を痛めながらも発言する。


「最近探索者が武力を持ち始めている上に、神器を持つなど。さらに、神器を持つものがその地を統治するなどあってはならないことではないのか? 世界の統治体制が全て変わるような内容なのだぞ?」

「そうだ。1個人で軍隊一つほどの実力を得ているということに違いはない。」

「じゃあ、彼から全てを没収するというのか? それこそ相手の反感を買うだけであり、亡命をされる可能性だってあるだろう。」

「はぁ… 進んで国に預ければ良いものを…」


 やはり、軍隊による抑止力が意味をなさない。

 警察すら、彼を止めることは不可能なのだから。今のところ犯罪行為に手を出していることはないが、今後何を起こすか分かってはいないからな。


「探索者など血の気が盛んなただの犯罪因子だろうが! 人権を剥奪すれば良いのだ!」

「それは憲法に反する上に、無理やりが過ぎます。疑わしきは罰せずです。」


 …はぁ、話がまとまらない。


「スタンピードを抑止しているのも探索者で間違いないのだ。探索者全てを無くしてしまえば滅ぶのは我が国だぞ?」

「…異世界人を受け入れるのは、労働力としては良いな。GDPのさらなる上昇、人口減少、出生率の問題も回復する可能性もある。この日本の現状を覆すのならばなにか動きが必要なのではないか?」

「異世界人が犯罪を起こせばどうする!? 人間は持たない超常的な力を持っている可能性があるのだぞ!」


 ……色んなものを受け入れている日本。だからこそ、率先して異世界人とやらを受け入れる必要があると思うのだが…


「…やってみないことにはなにもわからん。黒狐クロセを発見次第、援助を始めろ。」

「ですがっ!」

「未知を恐れず突き進む人材を支援せずに誰を支援するのだ? 余っているこの資金は何のために使うのだ?」

「ダンジョン被害に…」

「スタンピードによる被害はもう過去の1/20まで減っているのだぞ? ならば新規開拓の道しるべとなる黒狐クロセを支援せよ。わかったな。」

「…はい。」


 …庁長の言う通りかもしれないな。

 俺も、色々と動くとしますか。

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