4 スライムで遊ぶのって楽しいよね。
―ステータス―
名前:クロセ リョウ
Lv.4
体力:112
魔力:100
SP:0
【スキル】
・ドパガキ
・配信 New!
なんかスキル生えているし…
まぁいいや! タップしてみよう!
やってから考えよう!
―配信―
lv.1
紐づけアカウント:なし
・自動カメラワーク
・投げ銭不可
・自動読み上げ
あっ、なんか隣に変な白いキューブ出てきた。
こいつがカメラか?
やっほー? 見てるー?
配信してねぇから誰も見てるわけねぇよな…
紐づけアカウントってもしかしてこれインターネットに繋がってんのか?!
タップしたらキーボード出てきた…
とりあえず自分のアカウントで入るか。 あ、本名アカウントじゃんこれ。やめとこ。
一回ダンジョン出てからやるか。 はーめんどくせぇ。
もっとスライムも密集してたらプチプチ倒して気持ちよかっただろうに、手応えもなく密度スッカスカなせいでドーパミンが足りてねぇや。
はぁ、楽しくねぇなぁ。 ここでどうこうしても配信はできねぇし、新規アカウント作ってくるかぁ。
……
………
よし、チャンネル開設っと。多分ドパガキメインでやってくと思うし、少し恥ずかしいけど【ドパガキチャンネル】でいいか?
なんかひねり入れたいよなぁ。ってか今後黒歴史にならないような名前にしたいよな。
プルルルルル
『どうしたのお兄ちゃん』
「いや、【配信】ってスキルが生えたからちょっと相談しようかなって。」
『お兄ちゃんに相談っていう機能がついていたの!?』
「おめぇ俺のことなんだと思ってんだよ!」
『…ドパガキ?』
「……」
…ぐうの音も出ない。
「ま、まぁとりあえず、新規アカウント開設してチャンネル名考えてるんだけど、何が良いと思う?」
『ドパガキチャンネルで良いんじゃない?』
こいつとネーミングセンス一緒なのかよ。
なんか変なところで兄妹感がでたな。タイミング悪すぎる。
「いやでももうちょいひねり入れたいんだよ。」
『ってかその前に、配信スキルって何!?』
「え、なんか配信してぇなぁって呟いたら生えてきた。」
『えぇ……』
何引いてんだよこんちくしょう。
…生えてきたのもドパガキのスキルの影響だったりするのか?
なんか、有用なスキルの匂いがしてきたな…
『検索したら、配信者達が持っている基本のスキルらしいよ』
「え、機材とかいらないの?」
『別になくてもスキルがすべて処理してくれるらしいよ』
「ほへぇ〜」
『そんなことも知らないんだね…』
言うな。俺は配信系の動画は見ないんだ。ってかお前も知らなかったんだろうが。
あと俺は主に切り抜きがメインだ。
―――それもスワイプしてたらたまたまでてきただけだが。
そういや、スマホの画面スワイプしてもスキル発動しなかったよな。
そこら辺の定義はどうなってるんだろう。
「………」
『どうしたの黙って? そんなにショックだった?』
「いや、少し考え事してただけだ。」
『そうなのね。で、配信はどうするのよ?』
「うーん、そのうち深層配信者にでもなろうかな?」
『良いんじゃないの? 実力が追いつくのなら。』
一言余計だ。一言。
お前が一番応援するべき立場にいるはずだぞ、俺は。
「とりあえずもう、名前は『ドパガキ日誌』で良いや。」
『なんでお兄ちゃんの人生を観察日記にするのよ。』
「なんでそれをお前が気にするんだよ。」
『お兄ちゃんの観察日記なんて需要無いからに決まってるでしょ。』
「お前マジ後で覚えてろよ。じゃあな。」
プツンッ
兄のことを何だと思ってんだ。もっと敬え。
どうせ動画の収益根こそぎ奪ってくるつもりだろこいつ。
「お兄ちゃんはダンジョンの収益があるでしょ」とか言って言いくるめられるんだ。どうせ。
まぁ動画の収益なんてほぼ出るとも思ってないしな。
そもそも収益化の条件に達しなさそうだし。
「ドパガキ日誌っと。」
これでアカウント開設だ。
…もし利用できない単語がありますって言われたらどうしようかと思った。
うーん、でも初っ端から配信するにしても、顔出すのは若干しんどいよなぁ。
夏だし、薄着でいたいからさぁ。
…ん? いや、ダンジョンって年中一定の気温なんだっけ。
砂漠とかそういう気候のフロアじゃない限り。
案外ダンジョンの中は涼しかったし、避暑地としても良いかもしれない。
友達と遊んでた時、熱いからコンビニ寄ろうの感覚でダンジョン行こーぜみたいな。
多分頭おかしいって言われる気がする。
顔隠すならマスクとか着けたら良いのかもな。
うーん、一回家帰ってから考えるか。
――あ、スワイプの検証とかするの忘れてた。
……
………
スッ プチッ てくてく スッ プチッ
「気持ちぃぃぃぃ!!!」
そう、絶叫しているのは涼ほかならない。
時々近くの探索者に変な目で見られるがあんまり気にしない。
ちょっとは気にするけど興奮してて気にならない。
今やっていることはスライムの核をスワイプして壁にぶつけて倒している。
さっきまでスライムを壁にビッタンビッタンさせて遊んでたんだが、倒すならこっちのほうが良いと思った。
ビッタンビッタンするのも楽しいが、プチって音でスライムが潰れるのは気分がいい。
ビッタンビッタンさせてたら時々汁がこっちに跳んできて気持ち悪いし。
面倒なのは魔石を拾うってところだがな。ドーパミンを阻害しやがる。
魔物は死ねば霧散してドロップしか残さないから、グロテスクな感じもない。
そろそろ鞄がパンパンになってきたな。換金するとするか。
昨日と比べて1時間近くで鞄が埋まった。
ポケットより容量が多いはずだが…
ってかもう金属バットが邪魔なお荷物になってきている。
ついでにコインロッカーに預けてくるとするか。
走りながらついでにスライムをプチプチと倒していく。
うーん、魔石を拾うのめんどくさいから倒すのはやめとこうかな。
あ、後でステータス振っとかないと。また体力でいいか。
でも、スワイプするたびにちょっと疲れるんだよな。
これが魔力を消費してるって感覚なのか?
一応三分の一ぐらいは魔力に振っとくとするか。
お、出口が見えてきた。鞄と金属バットが地味に重くてちょっとつかれた。
受付に向かい、話しかける。
「魔石の査定を頼む」
「わかりました。こちらに魔石を出してください。」
なんかデジャヴ。
ジャラジャラジャラ…
鞄から大量の魔石を出す。
「長い間潜っていらっしゃったのですね。」
「いや、小一時間ぐらいだ」
「…素晴らしいですね。少々お待ちください。お名前は?」
「黒瀬涼です」
「黒瀬様、査定が終わりましたらお呼びいたしますので、少々お待ちください。」
「わかった」
近くにあった椅子に座る。
多分昨日の2倍ぐらいの魔石を集めたと思うから、かなりの金額になるだろう。
一時間でこれだけ稼ぐのなら、探索者ってだいぶ夢のある職業だよな。
…まぁ人によるか。探索者じゃない人達もいるからこそ、この日本も成り立ってるわけだし。
ダンジョンが生まれたことによって、石油の価値が激減し、輸入量も減った。そして、日本には探索者が他の国と比べてかなり多いため、魔石の産出国として世界トップに君臨している。
GDPも年々増えており、すべての職業の給料が上がった。
全国の最低賃金が1500円を突破したレベルだ。
「黒瀬様ー! 査定が終わりましたので受付までおこしください!」
俺は受付に向かった。
「小魔石88個で、1760円になります。」
「うおっ、結構もらえるな。」
昨日の約5倍の時給か。え、高くね!?
これがドパガキの恩恵か。
いや、ドパガキがちゃんと働いた大人と同じ金額もらえるってなんかおかしくないか…!?
これだけあるなら好きなだけ課金できるじゃん!
もっと稼ご!
「鞄も軽くなったし、一回家に帰って配信とかの準備するか。」
俺は家に向かって歩き出した。
「ほえー、ジムとか結構行ってる人いるんだなぁ。」
家までの道中に見かけたジムを見て俺はそんな事を言った。
そういや、確かステータスって体力と魔力しか無いけど、あれってデフォルトからどれぐらい増えるかを書いてるってことだよな。
確か、自分の基礎スペックが高ければ高いほど、ステータスによる伸びもそれだけ高くなるらしいよな。
つまり、50m10秒の人がいたとする。遅いって思ったやつは、一回黙っとけ。
それが体力のステータスが100だった時の話だとする。
そいつのステータスの体力が、200になれば、50m5秒で走ることが出来る。
だが、ここからがステータスの面白いところだ。
デフォルトで50m6秒の人が、体力200になれば、50m3秒で走ることが出来る。
同じステータスなのに速度が違うんだ。
つまり、ダンジョン探索者はジムで筋トレをすることが多い。
それだけで基礎値が上がって強くなれるからな。
…魔法系の人は、塾で勉強をすることが多い。魔力は、頭の良さに依存する。
つまりショート動画で脳みそが汚染された俺には魔力は必要最低限しかいらないってことだ。
0には何をかけても0だからな!
…なんか自分で言ってて虚しくなってきたな。
あとでスライムを壁にビッタンビッタンしてやる。速度上げれば上げるほど面白い光景になるからな。
そうそう、自分をスワイプさせるとか考えたけど、前後は無理で上下左右しか動かせなかったんんだよな。
スワイプするとブレーキかからないし、壁にぶつからないと止まらない危険物なんだよな。
つまり天井のないところで何かをスワイプすると宇宙へグッバイ! ってことになるから気をつけないといけない。
家についたので、なにかないか色々探してみる。
クローゼットには何もなしか。
うーん、紙マスクとか布マスクとか着けて配信ってなんか嫌だよなぁ。
ダサいというかなんというか。
庭の倉庫漁ってみるか。
「お? なんだこれ。」
狐の仮面…? 口元はなくて、鼻から上を隠すようなやつだ。
確か半面って言うんだよな。
黒色で模様も凝ってある。こんなの見た覚えないんだが。
肌触りもいいし、なんだこれ… 何で出来てるんだこれ?
木材っぽい肌触りから、軽いプラスチックみたいな感じだ。
紐もないし、どうやってつけるんだよこれ。
なんとなく着けてみる。
ん? なぜかめっちゃフィットするんだが。つけ心地も悪くない。
むしろ良いまであるぐらいだ。
「え?」
下を向いても外れない。だが手で外せば取れる。
…物理法則無視してるじゃねぇか。
とりあえず家の中に入り、母親に聞いてみる。
「母さん、これなんのやつ? 使って良い?」
「あら、懐かしいわねそれ。」
「知ってるの?」
「えぇ、昔の知人にもらったものよ。そうねぇ、ここ3年ほど会ってないわ。」
へぇ。なんか奇妙なものをもらったんだな。
「確か京都の稲荷ダンジョンで手に入れたものだって言ってたわよ。」
「え、これダンジョンアイテムなの?」
へぇ。貴重なもんをもらってるじゃん。
あんまりそういうの興味なかったのかな。その人。
ってかそんなもの倉庫に放置するなよ!
「そうよ。別に私も使わないし、涼の好きなようにしなさい。」
「ありがと!」
俺はお礼をした後愚妹の部屋へ向かった。
コンコン
「入るぞー」
「ちょっと待ってよお兄ちゃん!」
「?」
何してんだこいつ。急にパソコンの画面隠しやがって。
なんだ? Hなサイトでも見てたのか?
「一瞬そっち向いて!」
「おう。」
難しい年頃ってやつなのか? 思春期の俺が言うことではないんだけど。
シスコンではないから手を出すわけもなく。
「はぁ。で、どうしたの? お兄ちゃん。」
「そうだな、配信する時この仮面を着けて配信しようかなって思ってて。」
「良いんじゃないの?」
案外あっさりしてんなぁ。
「いや、お前視点から見てこれを付けた人が配信してるのって変じゃないかの確認をしに来たんだが。」
「顔バレ防止のために仮面とか付けて配信してる人もいるよ。VTuberみたいなもんじゃないの?」
そんなもんなのか? よくわからねぇな。
「じゃあアカウント名も変えたほうが良いよなぁ。」
「ドパガ狐?」
「鈴被告、しょーもないダジャレ言った罪で懲役5年」
「なんでそんなに罪が重いの!?」
わかんないのか? 俺がおもんないって思ったからだ。
存分に理不尽を体感してくれ。
「とまあ、お前にネーミングセンスがないってことが分かったから、友達とかに募集してみるわ。」
「それ、顔バレしないようにしているの意味なくならない?」
「…確かに」
「馬鹿じゃないの? ってかネーミングセンスがないってどういうことよ!」
そのまんまだよ。説明を求めるな。
「そういうことだ。じゃあまたな。」
「ちょっ! お兄ちゃ…」
バタン
さーて、どんな名前にすっかなー
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