3 スマホをベッドに持っていくのは習性なのだろうか。
あの後晩ごはんを食べて部屋に戻った俺は、真っ先にネットを開いた。
ショート動画を見るためじゃないぞ? ダンジョンについて調べるためだ。
ついでにスマホの水没も回復してた。案外早かった。
正直、ダンジョンって行ってみたら思ったより刺激があって面白かったし、ダンジョン内じゃネット使えないからデジタルデトックスにもなって一石二鳥だしな。
多分帰ってきたらまっさきにショート開くんだろうけど。
Wikiとか見ても、多分あてにはならないんだろうなぁ。
Tier表とか多分見ても当てにならないだろうし。
ソシャゲのTier表とか嘘乙みたいなことが書かれてたりするんよなぁ。
掲示板とかあるけど、正直俺がスキル持ったっていくら自慢しても嘘松扱いされるだろうし。
だって【ドパガキ】だぜ?
【火魔法】とか、【剣術】とかのポピュラーなスキルじゃなくて、【ドパガキ】だぜ?
見知らぬ人が急にスキル【ドパガキ】ゲットだぜ!
とか言っても誰も信じねぇだろ。せめてさぁ、ネットスラングじゃなくてスワイプとかのスキル名なら良かったのに。
検索 ダンジョンにクレームを入れる方法
結果 探索者ギルドへのクレームはこちら
そうじゃねぇよ! 別に探索者ギルドにクレーム入れるつもりもないし。
俺はDQNじゃねぇから、こじつけクレームをするつもりもねぇ。
調べてみても、スキル【ドパガキ】にヒットするものはないらしい。
じゃあ俺のユニークスキルってやつか? 不名誉なユニークスキルだな。
ユニークスキルって例えば上級探索者の持つ【剣帝】とかあるけど、そういうの求めてたんだよ。
ユニークスキルはお一人様お一つまでってダンジョンの制約があるらしい。
つまり俺のユニークスキルは【ドパガキ】で確定したわけだ。
ふざけるなぁー!
いや、衝動食いした俺も悪いんだけどな。
生牡蠣を衝動食いするアホって珍しいと思う。
どうも、珍生物 黒瀬涼です。
つまり俺は今後ドパガキ系配信者になるってことだ。
どういうことだ。
なんか、配信用の機材とか要るのか? そこら辺はあいつどうするつもりなんだろう。
俺のことを金のなる木としか思ってない愚妹がぁ。
なんか、マネージャーとして切り抜きとか色々やるらしいけど、あいつ受験生だぞ。
中3の重要な時期じゃねぇの?
…あいつ無駄に頭いいから多分大丈夫なんだろ。SNSばっか見てるくせに。
話が脱線しすぎて空を飛び始めたぞ。
とりあえず、ダンジョンについて色々調べるんだった。
ある程度はショート動画で流れてくるダンジョン攻略の切り抜きとかで知ってるけど、「初心者必見おすすめ武器!」みたいなのはすぐスワイプしてたからなぁ。
だって当時興味なかったもん。
検索検索っと
今持ってる金属バットは、結構Tier上だった。
いや、ね? ある程度Tier表も役に立つことあるじゃん。
見ないのは損だと思うんだよ。さっき散々言ったけど。
多分浅層なら金属バットで十分だと思うんだが、それ以降は剣とかが必要っぽいな。
持ち歩くのめんどくせぇ〜
金属バットも重たいし。まぁ壊れにくいっていう点では良いところだけど。
金属バットを振り回すドパガキ配信者黒瀬涼が爆誕する。
文字列が頭悪い。
まぁ、そのうち稼ぎも安定して、金がある程度溜まったら武器とか防具を新調するか。
魔物も、うちの近所のダンジョンは一層目はスライム、二層目は角ウサギ、三層目は二角鹿、四層目は投擲猿らしい。5層目は宿敵の牙猪だ。
まぁ、スライム ウサギ 鹿 猿 猪って呼べばだいたい伝わる。
まぁだいたいこんなもんかな。
俺はベッドに潜り込んだ。(スマホを片手に)
……
………
「お兄ちゃん!そろそろ起きて!」
「あと5分…」
「お兄ちゃんの5分は50分なのよ!」
ちぃっ愚妹め、俺の快眠を妨害しよって!
「さき朝ごはん食べとくからね!」
「…ふぁい」
バタン!
まぁ起こしてくれるのはありがたいんだが、もう少し体を揺さぶるとかして優しく起こしてくれねぇかな。
大声で叫ばれると寝起きの頭にはしんどい。
「ふぁぁぁああ、寝不足だ。」
言わずもがな、原因はスマホのせいだ。
ダンジョンについて色々ショート動画で調べてたら、気づいたら2時を回っていた。
今は7時だから5時間睡眠だ。
高校生は8時間以上の睡眠を推奨されているんだぞ!
よって10時までの二度寝を申請する!
と言ってもそのうち母さんに叩き起こされるから今のうちに起きておくか。
ベッドから出て扉を開き、トタトタと、音を立てながら階段を降りる
「おはよー」
「おはよう、涼。スマホは程々にしときなさいよ。」
「はーい」
これがいつも通りの会話だ。
母さんに関しては、もう半ば諦めているが、一応言っている程度の感じだ。
「おはよう、またいつもの寝癖か。」
「父さんおはよー」
ちなみに俺はいつも朝起きたら髪型がサ◯ヤ人になっている。
だからこのまま洗面所に直行するのがいつもの流れだ。
そしてその流れを阻害するかのようにすでに洗面所を占拠しているのがうちの妹、鈴だ。
「鈴、そこどけ」
「ちょっと! 起こしてもらった妹に対してその態度はひどくない!?」
「ごめんごめんー(棒)」
「ちょっとぐらい感情を込めろ…!」
そう怒るなって。カルシウム足りてないんじゃないのか?
「はぁ、ちょうど洗顔終わったよ。」
「おう、ナイスタイミングだ。」
ちなみにうちの妹はインフルエンザ…ゲフンゲフン、インフルエンサーでもないのに美容にめちゃくちゃ力を入れている。
なんか、同級生にチヤホヤされるのが嬉しいらしい。
告白も何回もされただとか。
―――カァーッペ! ハッハー! クソでもくらっとけ!
と、内心思いながら水を被って頭を冷やす。
寝癖も怒りも戻るので一石二鳥ってやつだ。
ワッシャワッシャ
髪を拭いて乾かす。ドライヤーなんていらない。
自然乾燥に身を任せる。
そんなだから髪が傷んで寝癖になるんだよって妹に言われたが、無視だ。
あとはついでにうがいもして、朝の準備は完了だ。
ダイニングの椅子に座って、朝ごはんを食べる。
目玉焼きと味噌汁、ご飯というスタンダードな朝ごはんだ。
ちなみに周りはもうすでに食べ始めていて、俺が一番最後だ。
朝はニュースを見ながらご飯を食べるのがうちの流儀だ。
心底どうでもいい政治の話とかを横目に見ながら、朝食を食べる。
あ、あそこスタンピード起きたんだ。へー、もう鎮圧されたんだ。
現代兵器が効かないってのになぁ。
そうだ、なんで火薬を使った武器は魔物には無効化されるんだろう。
銃チートは許さないってか? 強制的に原始人にしようとしてきている。
その割に魔力を使って飛ばす銃とかも開発されているから、そこら辺が現代兵器にも流用されているんだよな。
ダンジョンができたのが今から5年前の1/1で、その時はめっちゃ地震が起きた。当時小6だった俺は、めっちゃワクテカしながら何が起きたのかを待ち構えてた。
ダンジョンができたって聞いて、一気に興味を持ったが、当時は死人が多かったので、一気に興味がダンジョンから抜け落ちて、スマホへと移っていった。
そしてドパガキになった。いや、そこは割とどうでもいいか。
魔力は石油や石炭に代わる次世代エネルギーとして脚光を浴びて、魔石を動力源にして動く自動車や電球。あとは、魔力発電とかもできたな。流石に電気を使わないっていう手はないから。
そしていま魔力について研究者達が躍起になって解析しているが、なぜかまだノーベル賞を取っている人とかは居ない。
あーでも、スタンピードの鎮圧とかを何度も行った結果平和賞を取ってる人は居たな。
半年ダンジョンを攻略しなかったらスタンピードが起きて、中の魔物が外の世界に溢れ出してくる。
中にいるダンジョンボスを倒すと、スタンピードは終了して、ダンジョンも消滅する。
つまりスタンピードを起こしたダンジョンが強力すぎると、スタンピードの終結にはかなり時間がかかるってことだ。
というか、半年ダンジョンに誰も立ち入らず、魔物を間引いたりしないと、スタンピードが起こるって感じだな。
そして5年前にひよりまくってダンジョンに半年間手を出そうとしなかった国は、スタンピードの餌食となった。
とまぁこの辺は覚えなくてもなんとかなるし、国とかが色々対策しているから問題ないな。
俺達は脳死でダンジョンを攻略していれば良いんだよ。
「ご馳走様でした。」
一番最後に食べ始めた俺が、最初に食べ終わるという謎現象を起こしながら、俺は食器を台所に持っていく。
とりあえず寝間着から服に着替えて金属バットを持ってダンジョン行くとするか。
―――配信の機材とかは後で揃えりゃ良いや。
いや、愚妹にすべて丸投げにしてやる。あいつが提案したんだから相応のものは受け取ってもらう。
……
………
ダンジョンの受付についたんだが、昨日は気づかなかったコインロッカーがある。
最悪だ。ここに入れとけばスマホも水没しなかったというのに。
いや、昨日には存在しなかった。そうだ。そうだ。昨日ここにはベンチがあった。
――そう思い込むとしよう
今日はここにスマホとか色々入れといて、最低限のものを持ってダンジョンの中に入るとするか。
まぁ、電源は切らなくてもいいよな。電話なったらゴメンってことで。
鞄とバットを持ってコインロッカーに100円を入れ、鍵を閉める。
ガチャ
鍵を締めて、腕につける。いわゆる温泉によくあるやつだ。
ちょっと邪魔だが、落とすよりは良い。
ダンジョンの入口で立ち止まる。
いざ! 尋常に!
そう心のなかで唱えながら入る。あくまで心のなかでだ。
俺にはしっかり羞恥心はある。
そっち系の変態に走ってドーパミンを感じ始めたら人間的にも社会的にも終わる。
お出迎えかのようにやってきたスライム。
核を叩けばすぐ死ぬ。
スライムといえば酸性だが、この世界のスライムは弱酸性だから、ずっと触れていない限り特に問題ない。
スライムの入浴剤とかもあるぐらいだからな。
……
………
暇だなぁ。スライムばっか叩いててもつまんなくなってきた。
あードーパミンが足りねぇ!
癖でポケットに手を突っ込む。
あっ、スマホはコインロッカーにあるんだった。
「配信できたらなぁ」
コメント返信とかで暇つぶしできたんだろうけどなぁ。
[パパーン! スキル【配信】を獲得しました! ステータス画面から配信を開始可能です!]
うるっせぇ! え、配信できるの? 機材いらないの?!
…妹の労力減っちまうだろうがぁ!
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