↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/58

39 死に挑むラプソディ【呉】⑬

「で、これをどうすりゃ良いんだ?」


 与えたものによって変化するんだっけか?

 ちょうどいいものがあったかな…


スッ


 アイテムドロワーを開き、中身を確認する。


―アイテムドロワー―

・小魔石×738

・149-1-S×1

・鞄×1

・金属バット×1


 そうだった。

 光が帰る時、重たいから持って帰れないとか言って返してきたんだよな。

 今はもうスキルオーブとか買ったんかな?


「…この大量の小魔石とか使い道ないし、ここで消費するのもありか。」


 だって、お金は十分足りてるんだし。

 投げ銭ブルジョワジーができるほどの額をもらってるからな。


「あとはこれか…」


 アイテムドロワーから、149-1-S…もとい、エスリルの魔石。

 これがなくなれば、もう参加できなくなる可能性はあるんだよな…

 …いや、ここで攻略するから正直今後使わない可能性もある。

 名前だけ覚えて、ここで使っちゃうのもありだな。


 研究者とかに渡したくないし。これは俺のコレクションの一部みたいな感覚だからな。


「…よし、使っちまうか。」


 人格とか作り始めそうで面白そうだ。

 相棒って、武器としての相棒か、人としての相棒か。

 …正直、後者だと少し嬉しい。あーでも、人判定になったら、この試練を一緒に攻略とか出来るのか…?


 どうなるかわからないのが怖いな。

 まぁだが、ニュートラルってのは中立って意味だし、何かしらの意思は受け継ぐと思うんだよな。


「…こいつも入れるか…?」


 長門を眺めながら俺はそんな事をいう。

 正直、愛着しか無い。初めて持ったユニークウェポンを、こんな変なことに使って良いのか…?って。

 上手く行けば、強化。失敗すれば、なまくらに成り果てる。


 一世一代の大博打だ。

 失敗してしまえば、俺はこのあとの試練がクリアできない。

 俺はこいつにかなり依存しているからな。


 言ってしまえば、強化or死のハイリスク・ハイリターンだ。

 素手で戦えとか無茶言えってんだ。


 まだ、試用期間が一月を経っていないとはいえ、こいつと死地をくぐり抜けてきた。

 鍛造の宝珠っていう強化ルートもある。

 こんなイレギュラールートを通ったあとの結果が怖い。


「…いや、こんなくよくよしてる俺は俺じゃない。」


 俺がしたいことをする! 失敗したらそれまで。

 だが、失敗しない自信がなんだか虚空から生み出されてきた。

 こういう時ぐらいは物欲センサーも黙ってくれるだろう。


 砂上の楼閣のような自信で良い。一歩を踏み出せない、足をガチガチに固めるコンクリートよりは。


「さぁ、天下分け目の大勝負! 俺の積み上げたもの持っていけ! ニュートラル・マテリアル!」


ザァアアア


 俺はアイテムドロワーから、小魔石をまず全てニュートラル・マテリアルにシャワーのように浴びせる。

 この量を出しても、全てを吸い込むかのように飲み込んでいくニュートラル・マテリアル。


 …こいつ名前長いな。N・マテリアルでいいや。


 乾坤一擲なんだ。ここで失敗したらあとがない!

 だったら自信満々でやってやろうじゃねぇか! 怯えて日和ったら運も逃げちまうだろ!


 次にエスリルの魔石を入れる。

 こいつとは、3度しか会っていないが、すこし良いやつだと認識している。

 こっちのノリに乗ってきてくれるからな。それに、良いツッコミ役にもなってくれそうだった。


スッ


 存外あっけなく、N・マテリアルはエスリルの魔石を吸収する。


「…行ってこい! 長門!」


 脇差のように腰に差している長門を、鞘ごとN・マテリアルに投げつける。


スッ


 包みこまれるかのように長門が吸収される。

 …長門のほうがデカいはずなのに…


 …俺のなってほしいものになれよ。

 唱えてやろうじゃねぇか。


スゥゥゥ―――


「――――深層心理を読み取ってくれ!!!!」


 ハッハ! 他力本願? 結構!

 意識ってのは全体の一割って言われてるんだぜ? だったら9割読み取ってもらったほうが俺の思ったとおりになってくれるんじゃねぇか?

 アレやコレや考えるのはもうやめだ! ダンジョンアイテムなんだからそれぐらいしてくれて当然だろ? お客様は神様なんだ。探索者様も丁重におもてなししな!


 カスハラ心理しているが、それより深層心理を読み取れ!

 お前と俺は一心同体の相棒になるんだろうが!!!


フッ――――


 あれ… 意識が……


バタンッ…






「…テ……ハヤクオキテ」

「…んぁ…? ここは…?」


 気づけば、周りが黒くて、謎に少し明るい場所に出ていた。

 壁みたいなのは見えない。際限無く広がってるみたいだ。


「ココハ、ナントイイノカシラ?」

「なんで疑問形なんだよ。」

「ワタシモ、ワカラナイノヨ。」


 へぇ〜 …………あれ?


「なんでここにエスリルがいるんだよ!」

「イマサラネ。アト、ワタシモ、ワカラナイッテ、イッテルジャナイノ。」

「なんでそんな区切るんだよ。」

「キキトリニクイト、ドウリョウニ、イワレタカラ…」


 確かに区切らなきゃわかんねぇな。

 もっと聞き取りやすい喋り方すればいいのに。若干片言なんだよな。

 こいつらしいっちゃらしいけど。


「ちょっとぐらい改善できないのか?」

「頑張ッタラ、コレグライ。」


 おー、若干聞き取りやすくなったか?

 …って、気にするところはそれじゃないんだよ…


「ここに呼ばれた心当たりとかってあるか?」

「…私ハ、気ヅイタラココニ居タ。」

「ほーん、じゃあ俺にしか心当たりがないってことか。」

「先ニソレヲ言イナサイヨ。」


 おー、久々のツッコミ。なんか快感。

 …一応、俺にMの気質はないからな?


カランっ


「ん?」


 足元で何かを蹴ったような…

 周りが真っ暗でよくわからない。


「よっと。」


 拾ってみると、それは長門だった。


「やっぱN・マテリアルが元凶だったか…」

「アナタソレヲ使ッタノ!?」

「N・マテリアルのことか? あぁ、なんか面白そうだったから。」

「相変ワラズノ考エナシネ…」

「失敬な。」


 だからって、俺がここにいる理由はないんじゃないのか?

 なんでここに引き込まれた理由がよくわかってないんだが…


「システムー 聞こえてるー?」

『聞こえていますよ』

「マスター!?」


 何驚いてんだエスリル。

 お前らしくないんじゃないか? ってかマスターってなんだよ。

 そもそもこの世界に入り込めるのかよ。


 疑問が圧縮に圧縮を重ねてモーニングスターを形どり始めたんだが。

 俺の脳みそが破壊される前に色々整理してほしい。


『この世界は言ってしまえばまだ何も創造されていない空の世界とでも言えば良いのでしょうか。アナタ達がこの世界を自分の都合よく想像し、創造することでアイテムの特性を創り出すことができます。』

「なんでんなこと知ってんだよ。」

『それはダンジョンマスターですので。経験豊富ですよ。』


 ほえー、お前ダンジョンマスターだったんか。

 じゃあまず階層守護者の時々あるふざけた名前を解消してほしいんだが。

 クレームはお前まで送りつけたら良いんだな。


『このアイテムも万能ではないのです。深層心理まで勝手に読み取れるわけがないでしょう。あなた達が求めるように、作り出せば良いのです。』

「ッチ… 聞かれてたのかよ…」


 配信して全国放送してるんだから今更だけどな!


「マスター!」

『エスリル。』

「ハイ!」

『あなたは、もう私の支配から解き放たれているのです。今後はあなたの好きなように生きなさい。』

「ナッ…!?」


 虚空から聞こえる声は、さも子離れを慈しむかのような、母親のようだった。

 …まあ、実際生みの親ではあるんだろうけどな。

 名付け親の途中からのネーミングセンスよ。


『いい相棒を見つけたのですね。もしかしたらまた再開することがあるかも知れません。いきなりですが、あなたは好きなように、自由に生きなさい。』

「…ハイッ!」


 ずいぶんいきなりだし、都合の良いことばっかり言ってるみたいに感じるが、俺の口出しするところではないよな。

 …って、良い相棒って俺のことなのか…? 任されたことに喜ぶべきか迷うんだが…


『それでは、頑張ってくださいね。』

「へーい。」

「ハイ!」


 元気がいいな。言い方は悪いが、切り捨てられたってのに。

 まぁ、相手側にも悪意がある感じではないんだがな。


「じゃあ、やっていくか。」

「分カッタ。ドンナ風ニシタイノ?」

「そりゃあ、これから少しずつ考えていくんだろう?」

「ソウネ」


 さぁ、どう調理してやろうか!

気に入っていただけましたら、ブックマークや評価での応援をぜひよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。