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26 死に挑むラプソディ【呉】①

「これと、これを2つ。あと予備でこれ1つください。」

「わかりました。では、〆て合計2万3000円になります。」

「はい。」

「お買い上げありがとうございます。お気をつけてください。ポーションがあるといえど死んでしまえば意味がないのですから。」

「気をつけます。」


 …今からするのはめっちゃ危険なことなんだろうがな…

 俺は今ダンジョン前にある受付に来て、5000円2個、3000円1個、保険として一万円1個を買っておいた。

 多分これで準備万端だ。


 帰ってきてすっと2万五千円を出してきた妹には驚いた。

 簡単に渡せるぐらい稼いでいるんだなって。


 あと、少しケチって二千円分だけ残しておいた。

 帰りに買い食いでもしようかな〜 使い方は俺の自由なんだから。

 そういや、このポーション代って経費で落ちねぇかな。後で妹に進言しとこ。


 そんなしょうもない事を考えながら、俺はダンジョンに入っていく。

 今は10時なので、暇人どもがダンジョンにはちらほらいる。


 スライム階層なんて稼ぎが知れているからな。

 軽い贅沢のために稼いでいるひとがほとんどなんだろうな。


 リーマンっぽい人とか、俺と同じような高校生、大学生らしき人だっている。

 まぁ、全員知らない人なんですけどね!


 光なら全員と面識ある可能性があるからあいつの顔の広さは侮れない。

 なんなの? どこのランドマークだよあいつは。

 コミュ力高すぎるだろ。外交官とか向いてる気がする。


 …そろそろ人間関係とか見直したほうが良い可能性が出てきたな…


 まぁ、そこら辺見直す前にまず今のことを考えないとなぁ…

 現実逃避もそこそこにしておくか。


「はぁ… やるかぁ… ………フンッ!」


ガチッ!

スッ


 慣れたステップでEXゲートに入っていく。


―ダンジョンコロシアム【呉】へようこ…


 あーはいはい、いつものね。

 もう知ってるからいいや。


ジッジジッ…


 ……うわぁ…嫌だぁ…



―ダンジョン殺死阿武(コロシアム)【呉】ヘヨウコソ�―

ここは地獄の一丁目。各階層守護者が貴方に死を突きつけてくる。

そなたが生存できる難易度に設定されていない。貴方1人だけで挑む試練。

戻るなら、今のうち。これは、開けてはならない扉。

己の無力さを呪うだろう。それでも、厄災との戦いを望むか?

終焉には、絶望が待っている。途中で引き返すことは出来ない。

それでも限界を突破し、打ち勝つことが出来ればそなたは希望を手にするだろう。


そなたには挑戦する勇気はあるか? Y/N



ゾワッ…!


 …全身に鳥肌が立つ。一文字一文字から、不気味さがひしひしと感じられる。

 …本当に今のままで打ち勝てるのか? 希望っていうのはただの甘い罠なのでは?

 そんな疑念がずっと頭の中を駆け巡って、払拭することが出来ない。


 本当に俺はこんな絶望を望んでいるのか? 俺は楽しみたいんじゃないのか?

 引き返すことが出来ないって、この一回の選択で俺の人生が左右されるんだろ?


 …正直、怖い。


 どうせLUNATICって見栄を張って、前とほぼ変わらまいと思っていた。

 せいぜい、敵の攻撃力や体力が増える程度だと。言ってしまえば舐めていた。


 平和ボケした脳みそに、死という概念が刻み込まれるようだ。

 これまでは、自信の塊みたいな俺だったが、これを見てそんなハリボテの自信はへし折られた。

 俺の本能が言っている。やめておけと。


 自然と、体が出口の方へ向いてしまう。

 …情ねぇな、俺。

 いつもの俺なら、戦略的撤退だとか言って、笑い飛ばしたんだろうがな。


 出口の方へ一歩踏み出す。

 どこからか、昨日と同じ声が聞こえる。


『諦めるのですね。期待した私が馬鹿でした。』


 …あ?


『次回からは、前回と同じ難易度で案内しましょう。貴方が勝てる強さで。』

「…何が言いたい?」

『私は、ただ貴方に失望しただけです。そのレベルでここまでたどり着いた。それを称賛して、貴方に限界を突破してもらいたかった。』

「……」

『ですが、逃げ出すのなら、私はもう一度貴方が来れるように難易度を下げるまでです。』


 …んだと?


『勝ち目のない敵に挑まないような人には、扱う器があるとは思えませんが。私は、いつでも待っていますから。』

「………やってやろうじゃねぇか…」


 さっきから言わせていれば言いやがって。

 だんだん腹たってきたじゃねぇか…!


 煽り耐性がねぇんだよ、俺にはなぁ!


「首を洗って待っていやがれ!」


 仮面を被り、配信を開始する。

 タイトルもサムネも適当だ。俺はとっととあの声の主をぶっ飛ばしてぇんだよ!

 殺死阿武(コロシアム)なんてふざけた名前しやがって!


 なぁ〜にが生存できないだぁ? んなもん誰が信じるんだよ。

 こんだけ大口叩いてんだ。面白い事になってくれるんだよなぁ?

 せいぜい俺を飽きさせないように気をつけることだな!


 俺は煽られてスイッチが入ったからってのもあるが、ここは俺の意思決定だ。

 次がないのなら、次を必要なくすればいいだけだ。


 死の可能性? それならその分のリターンを望んでもいいだろう?

 千載一遇のチャンスだ。

 正直行きたくないがここを逃して後悔するほうが嫌だ。


「Yes!!!」


 さぁ何が出てくるんだ?

 拍子抜けさせたらただじゃおかねぇからな?


『よく言いました、それでこそです。では、地獄はここからですよ。』


ジッジジッ…


―ルール―

・戦闘中ポーション等の回復アイテム利用禁止

・最初に挑戦者のレベルを50に減少

・武器での攻撃は試練中10回まで

・1人だけで受けることが可能

・リタイアは不可能

・戦艦制圧時、ボーナスが獲得できます。

・合計10隻の戦艦です。

・全ての戦艦を制圧すると、最終試練が始まります。


 …戦艦…??


[転送が始まります…]


フォンッ


[海上ステージ モデル【呉】 に転送されました。]


 …え?


ズズズズ…


「―――甲板の上ってどういうことだよ…!」

[是非頑張ってください。生き残れるかは、あなた次第です。]


 …最後に不穏なことを残してるんじゃねぇよ…!

 だが、生き残ってやろうじゃねぇか。俄然やる気になってきた。

 あの煽りを完膚無きまでに叩き潰してやろうじゃねぇか!


 …周りにはデカい戦艦が9つも並んでいる。

 ヤだなぁ… あれ全部攻略しなきゃなのかぁ…


ズズズ…


「オヤ、サンドメネ」

「っと、荒波に見惚れてたわ。一昨日ぶりだな、エスリル。」

「ソウネ」

「あれ? 今回は大人しく会話してくれるのか?」

「メイドノミヤゲグライナラ、イイトオモッテ。」

「っは! 冥土に行くのはまだ早いかもな!」


 まだ死ぬつもりはない。

 …なんて、強気でいるが、今でも足が震えそうだ。

 前回戦った時と違って、圧を感じる。


 …俺の知らない感覚だ。


「なぁ、お前って結局なんなんだ?」

「…ソレハワカラナイ。」

「は?」

「ワタシタチハ、キヅケバウマレテイタ。」

「はーん」

「…キョウミナサソウネ」

「そのとおりだな。まぁ、戦うとしようじゃないか?」


 メインは戦闘なんだろう?

 どんな強化されているか楽しみじゃねぇか。

 最悪、アドガキを使うことだって惜しむつもりはないしな。


「ジャア、ヤリマショウ」

「あぁ! そうだな!」


 怖い。

 今だって逃げたい。


でも――


 ここまで来て、怖いから帰りましたじゃ、あまりにも癪だ。


「……まぁ、怖がってたって仕方ねぇか」


 怖がるぐらいなら、楽しんだほうがいいじゃねぇか!

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