25 現実逃避
「………え? ……………?」
「処理落ちしてるぞ型落ちPC」
「………??」
混乱してるじゃん。だれだよメダ◯ニかけたやつ。
…実際にありそうだよな、ダンジョンだし。
「……! …涼。お前だったのか。いつも配信していたのは。」
「俺はゴンじゃねぇよ。」
「いや黒狐なんだからあんま変わんないだろ!」
「あ、そうか。」
やっと気づいたかこいつも。
これで家族以外に初身バレ達成したわ。
…あ、口封じしといたほうが良いかも?
「…いや、俺疲れてるのかも知れない。ちょっと幻覚見え始めたから帰ろうかな…?」
「残念現実だ。」
「嫌だ! 俺は現実逃避をする!」
「現実がジェット機でお前に向かってきてるぞ。」
「音になって逃げる!」
「お前光だろ…」
ってかジェット機は音速超えてるから音になっても捕まるだろ。
「なんでそんなに拒否するんだよ…」
「俺が尊敬していた人が幼馴染って言われたショックはお前には計り知れないだろうな!」
「あんま興味ないな。」
どーでもいいわお前のショック程度。
はよ帰るなら帰れ。俺も帰るから。
俺だってEXゲートから現実逃避したいんだよ。
「ってかお前尊敬してたのか… ちょっと… いや、かなり嫌だな。」
「俺も嫌だよ…」
まぁ、こいつが強くなったら一緒にEXゲート攻略してもらうのもありだな。
だって、LUNATICを一人で攻略とか絶対に嫌だぞ?
しかも推奨攻略人数4人だぞ?
2人でも足りねぇんだから。後2人ねぇ…
育成するのめんどくさ。適当に募集しといたほうが良いのかな?
「で、これで満足か? 俺はそろそろ帰りたいんだが。」
「…あ、あぁ。帰る…か。」
なんなん? こいつ脳みその処理速いくせに時間軸が違うのか?
もしかして俺ゾーンに入ってるの? なんで?
「お前の素振りは十分見たし、帰るかぁ…」
「…母さんに頼んで落札してもらうかな…? いや、金余ってるし買うか。」
「うわ、ボンボンめ。」
スキルオーブの話ししてるよ。
ってか、本気で潜らないとか言ってた気がするんだが、それだけ高値のものかって後戻りできなくなるぞ? ほんとに大丈夫か?
「そういや、相場ってどれぐらいなんだ?」
「スキルオーブのこと? 確か一番安い跳躍が20万とかだったかな…?」
「高っ!?」
え… 俺長門だけで跳躍がめっちゃ増えてるのに…
ユニークウェポンがチートすぎるだけか。
「じゃあユニークウェポンとかは?」
「え? 売れるわけ無いじゃないか。」
「は?」
…? 何言ってるんだ?
「そもそもユニークウェポンと使用者は主従関係にあって、他の人が使おうとしても弾かれるんだよ。」
「え? マジで?」
スッ
「これと俺主従関係にあるの?」
「えっ!? あっ、そっか。…未だに飲み込めない…」
「ほれっ」
「ちょっ!?」
長門を投げ渡す。
バチィ!
「痛っ!」
「へ〜 こんな感じになるんだな。」
「ちょっ! こんな乱雑に扱うものじゃないし俺に一言謝れ!」
「あー、ごめんごめん」
これなら盗まれる心配もないな。
…もっとも、盗まれそうになること自体があまりなさそうだが。
とりあえず帰って飯食うか。
もう5時だ。 …飯にはちょっと早いか。
スーパーにでも行って菓子買い込んどこ。
戦闘って結構カロリー消費するし。
…ってか地味にスーパー遠いんだよな…
長門使いてぇ〜
◆ ◆ ◆
あ〜あ、結局今日も成果なしかぁ… 会社戻りたくねぇなぁ…
あの怒号を正面から聞いたら鼓膜破けちゃうよ。
ガラス割れるんじゃないかな。あの声量で。
トボトボと歩きながら、体はダンジョンから遠のいていく。
夏の蒸し暑い風が不快感を湧き立てる。
黒狐クロセの取材に行けと言われて、一日中張っていたが、結局見つからず。
神出鬼没で入口を張っても出てくるのはどう見ても一般人のみ。
高校生とか、リーマンとかそのへんの人ばっかり。
若すぎたり、どう見ても体型からあんな戦闘はできないような人たち。
それっぽい人を見つけては、質問してみたが何も知らないとの返答。
途中で叫び声が聞こえた方向に行っても、誰も居ない。
すぐさま逃げられたんだろう。
今のネットニュースには一つも載っておらず、誰もインタビューができてないみたいだ。
掲示板にも誰も接触した人や、心当たりのある人が居ないとのこと。
「僕が病んだらあいつのせいだ。」
直訴してやろうか。…名前がわからないから無理…ではないか。
チャンネル名は個人を特定するものでもあるんだから、頑張れば出来るか。
黒狐クロセを追ったことによって人生が転落した人は何人も居る。
まずはあの受付嬢。事の発端となった人だ。
あの人が警備を呼んだりして、あの受付にいればあいつを止めることだって出来たはずだ。
だが、早々に家に帰って寝ていた。それがバレて、泣きわめく姿が全国放送された。
もう彼女を雇おうと思う企業はないだろう。
次に規制中のダンジョンに突撃した記者たち。
数十人が入っていった。僕は傍観していた側だけど。
その人々は全員捕まった。一応、ダンジョンは国の所有物となっている。
まぁ、不法侵入として捕まったってことだ。
あの狐が捕まっていないのは、出入り自由とされていたタイミングだったため、処罰されることはなかった。
そのせいで、不平等だとか理不尽だとか喚き立てる連中もいる。
いまは署名を集めているそうだ。
「本当に馬鹿げてるよ。自業自得なのに。」
突撃記者集団は前科持ちになったので、クビになったものが多い。
そういう人達が集まって秘密結社を作っているっていう噂もあるけど、どうせ妄想の話だろう。
日本人ってのはそういったものが大好きなんだから。
「そろそろ潮時かなぁ…」
もうあのはげ頭は見たくないし、この会社も辞めるとしようか。
プルルルル…
『おい! なにか成果あったか?!』
「いえ、ありませんでした」
『はぁ!? オイちょっとお前…』
「この会社辞めます」
『あぁん?!』
「では。」
『おまっ…』
プツンッ
「ふぅ。電話越しでもうるさいな…」
着信拒否して、スマホの電源を切る。
これで迷惑電話は来ないはずだ。
「これからどう生きようかなぁ…」
そんな事を考えながら、家に向かって歩き始める。
だけど、少しだけ心は清々しかった。
◆ ◆ ◆
次の日の朝になって、ダンジョンいかなきゃなーって思ってたあたりで、ふと思い出した。
ちょっと頼みたいことがあるんだった。
「なぁ鈴〜」
「なによ?」
「ATM行って金おろしてきて〜 ポーション用に」
「なんで私がいかなきゃナラないのよ。」
「だって俺どの口座に結びつけられてるか知らないし、パスワードもわからんもん。」
「あぁ。そうだったわね。」
「忘れてんじゃねぇよ!」
はぁ… なんでこういうところは抜けてるんだよ…
「そもそもほとんど俺の金なんだから、俺に管理させろよ」
「どうせお兄ちゃんなら散財するんだから。」
「俺そんな散財するほど欲しいもの多くないが?」
「信用の問題ね。」
ふざけんなや。お前が横領しても俺にはわからねぇんだよ。
通帳を俺にも見せやがれ。
まぁ、こいつが変なことに使うとは思えないがな。
ってか、半々なんだから口座分けとけよ。
「おこぼれもらってる身で何を言っているんだか。」
「配信を提案しなかったらこのお金さえ入ってこなかったのよ?」
「ダンジョンで稼げるし…」
「どうせお兄ちゃんならちまちました稼ぎなんてすぐ飽きるに決まってるじゃない。」
「………ぐぅ」
「ぐうの音は出るのね…」
俺だって本気を出せば出来るし!
多分! きっと! 確証はない!
「まぁ、LUNATICに挑戦するにおいて結構必要だと思うんだよなぁ… ポーション。」
「怪我したら一大事だもんね。」
…なんか腹立つなぁ…
なんというか、俺の怪我を心配していると言うより、収入がなくなることに心配している感じがあるんだよな。
解せぬ。
「とりあえず、一万円ぐらいのポーション買ったら欠損も治るんだっけ。」
「四肢は治らないけど、指、骨折、打撲、傷ならほぼ治るって。」
「へぇ〜 …ほぼってところが少し怖いが。」
「若干痕が残るみたいよ。」
…ちょっと嫌だ。
ニョキニョキ生えてくるんか? だとしたら生理的に無理だな…
「ってか内臓の損傷とかってどうなるんだ?」
「それはちょっとなら治るけど、破壊とか、完全に潰れて機能が消滅していたらたしか10万以上するポーションで治るはず。」
「…安いのか高いのかわからないな…」
「本来助からない命も助かるから、これでも安いって言われているわよ。」
「へぇ〜」
そんななのにポーションの値段が安いってどういう事だ?
産出量がめちゃくちゃ多いとかなのかな?
「医者の仕事を奪って舞台に立っているポーションだけど、病院への補助金とかが浮いたから、それをポーションの価格抑制に当てているらしいよ。」
「へぇー…」
「…興味なさそうね。」
そのとおり。俺は全く興味がないんだ。
すまんな。
「とりあえず、コンビニでお金おろしてくるから待っててね。」
「サンキュー。適当な金額を頼む。」
「わかったわ。」
こういう頼み方で本当にちょうどいいことをしてくれるからありがたいんだよな。
…腹立つけど。
妹が帰ってくるまでどうやって暇潰そうかなぁ〜
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