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21/58

21 神様が左手で設計したような

「ごちそうさまでした」


 昼飯は予想通りのそうめんだった。

 まぁ、夏といえばそうだよな。夏休みの風物詩みたいなものだし。


 …久々に流しそうめんやってみたいな。竹がないけど。


「ダンジョン行こうかなぁ…」

「お兄ちゃん、そういえば配信見てたよ」

「うげっ…」


 やっぱバレてたかぁ…

 いや、まだ俺には弁明の余地がある!


「あのだな…」

「別に配信したことを怒るつもりはないわよ。でも、流石に自重して。好奇心に身を任せすぎ。」

「…検討に検討を重ね検討を加速しておきます。」

「それ結局しないやつじゃん!」


 黙れ! 俺の行動理念はドーパミンが出るか否かなんだよ!

 最近はアドレナリンも追加されたけど!


「はぁ… せめてポーションとか持っていってよね。」

「ポーション?」

「え… えぇ…?」


 うわぁ… 知らないことにドン引きされたぁ…

 え、? 常識じゃ… え? みたいな顔しないでもらえますぅ!?


「…最近の医療用具としても結構普及してるのに…?」

「すまん、ニュースとかには興味ないんだ。」

「かなり一般常識だけどぉ!?」


 えー 別にいーじゃん。

 まぁポーションって名前からだいたい内容はわかるけど。


「どうせ回復とかだろ?」

「まぁそうなんだけど… 高価だけど、一応怪我したときに便利だから。かけるだけでも効果があるし、一番は飲むのだけどね。」


 まぁそうだよな。そんな便利なものが安価なわけもなく。

 いやー、しっかし知らなかったわ。

 もっと勉強しなきゃな。


 ――――そのうち。


「ポーションはどこで買えるんだ?」

「はぁ… 受付で買えるわよ…」


 えぇ? うっそだぁ。そんなの見たことねぇよ。

 見つけたら (´・ω・`)ショボーン って顔してやるよ!


 …こういう時はたいてい見つかるんだけどな。


「まぁとりあえず行ってくるわ」

「いてらー」


 走るか。

 ってか、コピーの階層守護者倒しても経験値はいらないからレベル上がらないんだよな。

 …今後体力値上がることはほぼなさそうだよなぁ…


 …ちょっと俺も筋トレしたほうが良いんだろうか…?




「うわ、まだ人いるじゃん…」


 昼飯食べとけよ… 入口に人が多いし。

 とりあえず受付行って確認するとしようか。



 ッチ… ポーションあるじゃねぇか…


 (´・ω・`)ショボーン


 これで満足か!? おお!? (???)

 …何やってんだろ、俺。


 ってかウゲッ、値段が結構高ぇ… 一番安いので1500円するんだが…

 しかも効果が擦り傷が治る程度って… 結構貴重なんだな。


 非課税で助かった。こういうところは優しいけどさぁ…!

 値段が懐に優しくねぇ!


 …3000円の打撲、切り傷が治るやつにしこう。

 あ、金たりねぇ。 …1500円しか持ってねぇ…


「換金お願いしまーす」

「はい、ここに魔石を置いてください。」


ジャラジャラ…


「80個です」

「わかりました、1度確認させてもらいます。」


 重りばかりとか無いのかなぁ…?

 こういうのが面倒なんだよなぁ… リアルにスキップ機能がやっぱり欲しい。




「はい、ちょうど小魔石80個でしたので、1600円になります。」

「ありがとうございましたー」


 これで買えるな。正直、大量の一気に全部換金できたら一番楽なんだけどなぁ。

 妹がいちいちうるさい。そんなんだからぺったんなんだr… ゾワッ!


 なんだか家の方向から殺気が…

 …ま、まあ、さっさとポーション買ってダンジョンコロシアムに向かうとしよう!





 アイテムドロワーから長門と仮面、階層守護者の魔石を取り出す。

 周りには人は居ないのをしっかり確認している。


 …見つかったらあの愚妹になんて言われることやら。


ガチッ


 さっさと攻略するとしよう。

 次の敵はなんだったかな?


スッ



 仮面被って配信開始っと

 サムネ撮って… あとは【ダンコロ配信】でいいや。


 いつも通り虚無からキューブが生まれてくる


―ダンジョンコロシアム【呉】へようこそ!―

ここはボスラッシュで各階層守護者のコピーと戦闘することが出来ます!

戦闘能力は、各階層守…


「Yes!!」


 そう言うと、魔石が出現し、砕け散る。

 …やっぱこういう演出って飛ばせるのがゲームなんだよなぁ…


 そのうちダンジョンのアップデートで出来るようにならねぇかなぁ?


 中からは、猿っぽいが、腕がムッキムキな猿?が出てきた。

 …ほぼゴリラじゃねぇか。


 あぁ、そうそう、スロウモンキーだったよな。元々は。

 …ん?


ブンッ!

ドォォォン!


「はぁぁぁぁ!?」


 おい今何投げてきた!?

 黒っぽい球を高速で投げてきたぞ!?

 ステータスで強化されても見えない速度ってなんだよ!?


 絶対あのスライムの大砲より速えよ!

 二百越えてるだろ! この速度!


「ックソ! かすりかけたじゃねぇか!」

「ウキッキイッ!!」


 何喜んでるんだクソ野郎!

 金属バット… は、ちょっと使いにくいな。


 …いや、打ち返す前にバットが折れて爆発するな。


ブンッ! ブンッ!


ドォォオオン!!!ドォォオオン!!


「っぶねぇなぁ!?」


 紙一重だぞクソ! 何だこのドッジボール!

 こんなデッドオアアライブのドッジボール嫌だわ!

 避けるのさえ運と長門の速度でいまなんとか成り立っているみたいなもんだからな!?


 ってか爆発するってなんだよ!

 爆発物を投擲(スロウ)するんじゃねぇよこの危険生物!


「ッチ! ぶっつけ本番だがやるしかねぇのか!」


 まだ俺には切り札があるんだよ!


「モードチェンジ! アドガキ!」


ッゾワッ!


 全身に鳥肌が立つ。

 なんだ…? この異常な高揚感は?


「ハッハア!! 今ならテメェなんざ赤子をひねるように潰せる気がするぜぇ!!」

「ウッキィ!?」


 はぁあああ!! この高揚感は最高だなあ!

 まるで自分が自分で無いようだ!


ブンッ!

ドォォン!


「ッハァ! もうその程度見切れるんだよぉ! もっとバリエーションはねぇのかぁ?!」


 相手の行動が手に取るようにわかる。

 体がオートで避けているかのように、反射で動ける!

 なんっだこれ! 楽しい!


「オラァ! ご自慢の部分ががら空きだぜぇ!?」


ガキィィン!


 んっだこれ! 肩硬すぎるだろ!

 筋肉の限界を突破してんじゃねぇのか!?


「ッチィ! 長門でも切れねぇとはなぁ…」


 やっぱり弱点部位が必要なのかぁ!?


ブンッ!


「フッ!」


ガシッ!


「ウキッ!?!?」

「ずいぶんと驚いているようだが今の俺にはこの程度余裕綽々だぜ!」


 ジャンプで空中で投擲物を受け取ったぜぇ!

 やっぱりこれは砲弾だったかぁ!! 砲丸じゃなくて砲弾投げってかぁ!?

 着弾地点で衝撃がなければ爆発しねぇと思ったんだよぉ!


「返品だぁ! 丁重に受け取れよ!」

「ウk…」


ドォォォン!!


「っしゃオラァ!」


 次はお前が投げられる番なんだよぉ!

 斜め上から投げつけられる気分はどうだぁ!?


「ッシャオラァ! ずっと自分は投げる側だと思っていた猿がよぉ!」

「ウッキィ!!!!!!」


 おぉ!? 激昂モードかぁ!?

 来いよ! 相手してやるからさぁ!


ブンブンブンッ!!


 連続投擲ってか!


「っはぁ! これだよこれぇ! スリリングで最っ高じゃねぇか!」


 ハッハァ!!! アドレナリンが全身を巡っている感覚があるぜ!

 この高揚感を求めていたんだよ!


ブンブンブンブンブンブンブンブンブンブン!!!!


「もうヤケクソじゃねぇかそりゃあ!」


 どっからそんな量の砲弾出していやがるんだよ!

 そろそろ決着を…!


「…スゥ……」


 急に頭の中がクリアになる。

 まるで、世界がスローモーションのようだ。


 さっきまであれほど早かった砲弾さえ、今となっては遅く感じる。


 不規則で視界を埋め尽くすかのように、いまだ投げ続けられる砲弾。

 今となっては相手の姿すら見えなくなっている。


 このままだったら避けれずに死んでしまうだろう。


 だが、空中にいるというのに、落下している感覚がまったくない。


 …うん、今ならできそうだな。


「…【41cm砲】」


ドンッ!


 …このスキルの本領は、直線で切るのに補正が入ることではなく、抜刀中に俊敏と攻撃力を超強化するというものだ。


 足の力だけで空気を圧縮し、右側の壁に向かって跳ぶ。


 …俊敏が超強化されているからこそできる賜物だろう。

 空気のはずなのに、しっかり質量があるように感じる。

 後ろで空気が爆ぜる音がする。


ダンッ!


 空中で体を捻りながら衝撃を殺しながら壁に着地する。


 そこから、まだ砲弾の向こう側に俺がいると思っている猿の横面に向き直る。


 …もうすぐ鞘から抜ききれそうな刀を、首に狙いを定めて…


ドンッ!


…スッ


 いつもなら一瞬で切れる瞬間さえも、まるで普通に切っているような感覚だ。


 刀の角度を変え、首が上に吹き飛ぶように調節して切る。

 …演出を怠らないのが、配信者という生き物だから。


…ズバッ!


 首を跳ね飛ばし、地面に着地し、残心をする。

 そこから鞘に刀を収める。


カチンッ…



 永遠にも感じられるかのような刀を鞘に納める音が響くと、世界が元の速度に戻る…


「…!?………?」


 …………はぁ!? 今何が起こったんd……


クラッ…


バタンッ…

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