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13 第一階層守護者

「ふぁぁあああ… よく寝た。 …ん?」


 寝ぼけ眼に、薄く光るキューブが目に入ってくる。


「…あ、……やべぇ」


 …つまり、俺は


「配信切り忘れてたぁぁぁああああ!!!!!」





「ふぅ、やっと落ち着いた。」


 どうも、寝顔を全世界に晒した男、黒瀬涼です。

 まぁ、仮面被ってたから問題ないんだけどな。


 途中で外れるとかなくてマジで良かった。

 素の寝顔公開してたら恥ずか死してたぞ。数千年後ぐらいに発掘されるんじゃないか?

 そしたら博物館で厳重に保管してくれ。


 寝顔晒して恥ずか死した数千年前の配信者ってな。

 …超不名誉じゃん。


「お前等、絶対に忘れろよ、さっきまでのを。」


 コメントを読む気にもならねぇ。何言われてるかによっては俺一生ダンジョンに引きこもる。

 俺の周りでウゴウゴしていたスライムは、ひとしきり絶叫した後に核同士をぶつけて粉々にしといた。


 なんで俺食べられなかったんだろう。

 …やっぱスライムは最弱ってことか。


 好き嫌いとかだったら、ちょっと悲しいか?

 いや、めっちゃ嫌われるようなことしてるか。同胞をついで感覚で殺してるんだから。


「とりあえず、最後の一個を投げつけるか。」


 今となってはレベルも上がりまくって、10から38まで上がったからな。

 結局、魔力には振らず体力に全振りした。

 いちいち考えるのがめんどくさい。


 今となっては体力が214になって、身体能力は素の2倍だ。

 つまり、筋トレをすれば2倍の効率で筋トレが出来る。

 よっしゃ、効率良い=ドーパミンが出るっていう公式が成り立つ!


「オラッ!!」


 俺はフルスイングで助走をつけて投げつける。

 十体目のレアモンを倒した時の魔石だ。

 これで何か起こらないわけがないと思う。


スッ


 いつもと同じように魔石が吸い込まれる。


「フルスイングした意味ないじゃん。」


 そんなことをぼやきながら、輝きを強めていく魔石を見つめる。

 だんだんと、人の形を成してくる。


 …ん?


「なんかフォルムおかしくね…?」


 だんだんと人の形をする。

 …おい! 俺にそういう趣味はないぞ!?


「…こういうのが好きな人に忠告しておく。敵なら容赦なく殺るから。」


 あーあーあー、聞こえない聞こえない。コメ欄で叩かれてるかもしれないが、見ない。 

 ―――絶対に見たくない。


 新種のスライムは、肌や髪の質感は完全にスライム。見た目は女性だ。

 …服着てんのかよ!


「髪の毛が触手みたいに太くなってるし、なんか、あぁ、スライムだなぁって感じだな。」


 だからなんだって言う話ではあるんだが。

 それより言わせてほしい。


「―――お前がセーラ服である必要性はないだろぉ! そのせいでJKみたいなってるじゃねぇか!」


 やっぱダンジョンお前周りの文化吸収してるよなあ!?

 学習能力あるんだったらもっと別に応用できただろ!


[第一階層守護者が出現しました!]


 …え、こいつ守護者なの…?

 なら、倒せばしっかり報酬があるよなぁ!?


「はぁ。核はちゃんとあるのか。」


ビュルッ! ズゴォ!


「うおあっぶねぇ!」


 くっそギリギリじゃねぇか! これ普通に死ねるじゃねぇか!?


「一個前までクソ雑魚だったじゃねぇか!」


 あの時の丸っこくて核を壁に打ち付ければ死ぬスライムはどこ行ったんだよ!

 …まさに守護者ってところか…?


ビュルッ! ズガッ!


「お前第一階層にいて良い強さじゃねぇだろ!」


 回避で精一杯だぞ!


 ックソ! スワイプできたら勝ちだってのに!

 まず狙いが定まらねぇ!


 無駄に小さいんだよ! しかも動き回るな! 核!


ビュル! ビュルッ!


 っくそ、避けるのしんどい!


「狙いさえ定まれば…」


 …何かしらの起死回生の一手はないのか?

 あーもう、都合の良いところで進化しねぇかな!? ドパガキ!?


ビュルッ! ビュルッ!


 そんな事が起きるわけもなく!


ビュルッ!


 ガチでしんどい! ダンジョン来るんじゃなかった!


「ハヤ…ク、シネ」

「お前喋れるのかよ!?」


 たどたどしいけども…! 言ってることが物騒すぎるんだよ!


 なんかこのヒリヒリ感…若干弾幕ゲー思い出すな…!


ビュルッ!


 だんだん殺意が高くなってきてるし、密度も高くなっている!


「シニナ…サイ」


 あっぶねぇな! クソが!


 …ん? 弾幕ゲー…


 ゲーム…


ビュルッ!


 「クソが! 考え事してる時に攻撃してくるんじゃねぇ!」


 だーもう、うだうだ考えてる暇がねぇじゃねぇか!

 ウネウネと突撃してくる触手を避けるゲームなんてプレイしたことねぇよ!


 …ゲーム、?


「…そうか」


 俺は一瞬の間に、アイテムドロワーから金属バットを取り出す。


「…?」


 何をするんだと言わんばかりにスライム(強)はこちらを見る。

 アイテムドロワーからの取り出しの速度には視聴者は驚いてぎっくり腰になっただろう。

 …間違えた。腰を抜かしただろう。


ビュルッ!


「あぶねぇ! もっと他のバリエーションはないのかよ!」

「アナタニ、ハコレデ…ジュウ、ブン」

「お前の言葉聞き取りづらい上に、俺のこと舐め腐ってんじゃねぇよ!」 


 なぁーにがこれで十分だ!


「お前を殺すぐらい朝飯前だ!朝食は食ってきたけど!」

「センセンフコク?」

「あぁ。そのつもりだ!」


 っくそ! 大口叩いた割に全然避けるので精一杯だ!

 そもそも、こんな真面目な戦闘なんて初めてなんだよ!


ガキィン…!


「ったぁ!」


 なんだこれ! 触手が出していい音じゃねぇ!

 金属バットに当ててみたが、衝撃で俺がダメージ受けただけだったじゃねぇか!


 っくそ! 俺がジリ貧じゃねぇか!


「テイコウハ…ムダ」

「るっせぇ! それはお前が決めることじゃねぇよ!」


 だが、今ので若干感覚を掴んだ。

 っし来た!


ギャリッ!


「っしゃぁ! どうだ!」

「フッ、ソノテイド」


 ッチ。嘲笑してるんじゃねぇよ。

 せっかく受け流したってのに! ヌルッってしてなさすぎるだろ!

 スライムっぽさがなさすぎる!


 だが、俺はゲームとしてこの戦闘を楽しませてもらうとしよう。

 ってかなんちゅうクソゲーだよこれ!

 制作者性格悪すぎる!


ギャリッ ギャリッ!


「っし! 三連続!」

「ン…」


 うわっ! 密度上がったじゃねぇか!

 本気出してねぇってことかよ!


 …このヒリヒリ感、たまんねぇ!

 認識を変えるだけでゲームっぽくなるじゃねぇか!


 いっつも憧れてたゲームの世界に来てるようなもんだ!

 楽しまなきゃ損じゃねぇか!


 ―――死んだら元も子もないけど!


「コレナラ、ドウ?」


 だんだん喋るのが流暢になってきやがってるなこいつ。


ドンッ!


 そんな音が聞こえてきそうな速度で、何かが飛んできた。


「っあっぶねぇ!? 何だ今の!?」

「ッチ、ハズシタ。」


 だぁークソが!

 ここで行動パターン増えるのかよ!

 これ以上好き勝手させるわけにはいかねぇんだなぁ!?


 …ちゃんと見極めろ。

 敵の攻撃、一本一本の触手の動き。

 そして、何が飛んできたのか。


ドンッ!


「見え…ねぇ!!」


 まぁそんなすぐに見極めれるわけもなく。

 着弾点を見たいが、そんな暇があるわけもなく!


「何かしらの打開策がねぇと…!」


 ってかあの飛んできたもの絶対時速160km越えてるだろ!

 プロ野球選手かよ!


ドンッ!


「…ッノーモーションで攻撃してくんじゃねぇよ!」


 行動が読みにくすぎる!

 今は奇跡的に被弾していないだけで、集中がゆるめばどんな目に合うかわからねぇ!

 触手ぜ… 今そんな事考えてる場合じゃねぇ! 普通に死ねるわ!


 マジでこっから手数が更に増えたら俺は死ぬぞ?

 防戦一方過ぎて勝ち目がない!


 …逃げるのは、ナンセンスか。

 あと5分。それ以上はやめておこう。

 集中力が続かないってもんだ。


「ほんとに! さっきまで寝ておいてよかったぜ!」

「ワタシハマチクタビレタ」

「そりゃあすまなかったな! あの世で存分に俺を恨んどきな!」


 …今持っているものは、大量の小魔石と、鞄だけだ。

 それ以外のものはアイテムドロワーに入れていない。


 …目眩まし程度になりゃ良いがな!


「オラッ!」


 俺は5つほど小魔石を出し、投げつける。


パキキキキキッ


「ッチ! 無駄に無駄なく洗練された触手さばきだこと!」

「ホメテルノ?ケナシテルノ?」


 あぁ、思いっきり褒めてるよ!

 だがな、それが命取りになるってことも伝えてやる!


 ――――金がもったいねぇが! やってやる!


「オリャア!」


 ―――大量の小魔石を投げつける。

 手のひらに持てる限界の量を投げつける。


パキキキキキキキキ…


 一瞬で粉々にされる魔石たち。

 だが、今意識がこっちにない瞬間に、俺は―――


 後ろを振り向くっ!


「スライムッ!?」


 着弾点と思われるところには、スライムがいた。

 つまりあいつは、部下? 同僚? を大砲みたいにこちらに飛ばしてきてたんだよ!


 ―――なんて非人道的なんだ!

 おれにとっちゃあどうでもいいけど!


「コソクナテヲ!」


 姑息…ねぇ。また誤用が増えそうな言葉を使って。

 まぁだが、これで突破口も見えたわけだ。


 ただのその場しのぎのじゃねぇってこと見せてやる!


ドンッ!


「オラァッッ!!!」


ガキィィン!!!!


「ナッ!? ダガムダナコト!」

「それはどうかな?」

「ッ!?」


 俺は、たじろいだ一瞬の隙に肉薄する。

 そして、至近距離に近づいたことで核が目の前に来ている。


 セーラー服が透明なのが仇になったな!


スッ!


「ナッ……」

「…ッ!?」


 何だこのバカげた魔力消費量は! スワイプ1回で8割ぐらいごっそり持っていかれたぞ!?

 どんな重量してるんだよ! ダイエットしやがれ!


「だが、これで…」


 こいつはもう動けない。

 核が体から分離してしまったからな。


「ハァ。」


 俺は核の落ちているところに向かう。

 どんだけ遠くに行ってるんだよ! 壁にぶつかるまで止まってねぇじゃん…


 俺は核を持ち上げる。


「重っ! ボウリングのピンかよ!?」


 ビー玉みたいなサイズしてるくせに、ボウリングのピンぐらいの重さをしている。

 いや、ステータス補正でこう感じているだけだろう。


 実際は二倍の重さってことか…

 だが、これであの消費量はおかしいと思う。

 まぁ何かしらの原理が作用したんだろうが、もう頭を動かしたくない。


「最後に言わせてもらう。バットってのはなぁ――――」




「球を打つためにあるんだ――ッよ!!!!」


ガキィィン!  コロコロ…パリンッ!


 あの強敵の核は、少し床を転がったあと、砕けて煙となった。

 …バットに当たったタイミングで砕けろよ。オイ。

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