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12 良い夢見てね

◆ ◆ ◆


「ふぅ。やっとか。」


 今俺は、9匹目のビッグスライムを討伐した。


「正直、飽きてきたんだよな、倒し続けたせいで。」


 はぁ〜、疲れたぁ


「絵面が地味すぎるんだよ。スライムをずっとプチプチするのになんの需要があるんだよ…」


 好きな人にとっては好きなのかもしれないが、正直俺にとってはだんだん作業化してきてつまらなくなって苦痛になってきた。


「ぬーん、一回二階に降りて気分転換でもするか?」


 めんどくせぇなぁ。階段もどこにあるかわからんし。

 もしかしたら非常階段みたいな感じであるかもしれない。


「外に出るのも嫌だしなぁ、下に下がるのもめんどくさいしなぁ。」


 あ〜、引くに引けなくなっちまったじゃねぇか。


「あと百体行きますか〜」


 俺は気だるげな声を出しながら、走り始めた。


[パパーン! 配信レベルが上がりました!]


「うるっさ!」






 本日何度目かのファンファーレを聞いたあと、俺は99体のスライムを倒した。


「最後の最後で最低確率を引くかなぁ…」


 まぁ、あと一体を倒せば確定なんだから、その分ワクワクするってもんよ。


ぴょこっ


「あ、スライム」


スッ プチッ(m… 以下略)


「…やっべ、条件反射でやっちまった。」


 えー、最後はよっしゃー! とか、感動みたいな感じにしようと思ってたのに…

 スライム、お前らが悪い。(理不尽)


「…まぁいいか。いつも通りのレアモンなんだ。今更感動なんて無いか。」


 いつも通り、倒されたところからアイテムドロワーから回収されない魔石がドロップする。

 それが、少しづつ大きくスライムの形を成していく。


スッ ズガガガガガガガァン! パキッ


 はい、終了。


「…ん?」


 なんであの魔石アイテムドロワーに格納されていないんだ?


「なんで残っている…?」


 …まさか。少し、嫌な予感がするな。


 ―――だがな。



「―――――――砕けろぉぉぉぉぉ!!!!!!!」


ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!


 今持てる全ての魔力を使って必死に砕こうとする。

 これで砕けないのはおかしくない!?

 しかもダンジョンの壁自体はびくともしないし!


 スワイプの指がつかれてきたわ!

 腱鞘炎になったらお前のせいだからな!


ズガガガガ……ガン、ガン、コロンっ。


「…ゼェ、ハァ。…これが魔力切れってやつなのか…?」


 クソっ、疲労感と倦怠感がヤバい。

 ここで変な行動に出たら俺が詰む…


 最大の武器、スワイプが使えないんだから。


 …まぁでも、やってから考えるが俺のモットーだ!


「小魔石でも投げつけてみるか。」


 俺は、おもむろにアイテムドロワーから小魔石を一つ取り出す。

 個数は俺の想像した量を自動的に手に出してくれるから、こいつのぶっ壊れ具合がよく分かる。


「オラッ!」


ビュンッ!


 ステータスを体力に全振りしている俺の全力投球を喰らいやがれ!

 学校のソフトボール投げでは男子4位だった実力を見せてやる!


 …ちなみにクラス内でだ。


カンッ  …コロンッ


 …なんの意味もなかった。


「小魔石じゃダメなのか? …じゃあスライムの魔石…… こいつ高値で売れそうなのに、勿体ないなぁ。」


 もし変な傷がついたら価値が下がるかもしれない。


「うーん、背に腹は代えられないか。まぁ、面白そうだし、色々試してみるか。オラッ!」


ビュンッ!


 小魔石より、一回り大きいので投げやすい。

 小魔石は、ペットボトルキャップぐらいだが、スライムの魔石はピン球ぐらいだ。


スッ


 …スッ?

 …おい、おい。


「俺の魔石いぃぃぃい!!」


 クッソ、俺の金を吸い取りやがって。

 しかももと魔石をくれみたいに若干光りやがって。このクソ魔石が。


「お前がその気ならくれてやるよ!」


 俺は一気に7個スライムの魔石を投げつける。

 一個手元に残したのは、万が一のためだ。


ズゴォォォ!


 吸い取り方がおかしいだろ。おい。

 ダインソの掃除機か。


「眩しいな、お前。」


 魔石とは言えば、もう少しで進化しそうなように、煌々と光っている。


「うーん、あと一個投げつけたら即戦闘になりそうだよなぁ…」


 魔力切れのせいであんまり戦いたくないんだよ…


「――――うん、寝るか!」


 俺はそう言って、魔石から離れたところで横になった。

 …あんな眩しいところで寝れるってか。



◆ ◆ ◆



「ねぇ、馬鹿なの?私のお兄ちゃんは。」

「いつものことよ。」

「そうだな。」


 今はリビングでテレビにキャストしながら、家族全員でうちの愚兄の寝顔を見ている。

 なんでこんな事になったかというと…




「鈴!母さん! 涼がテレビに写っているぞ!?」

「まぁ、本当ね!?」


 そんな声が一階から聞こえてきた。

 超絶、嫌な予感がしながら私は一階に向かった。


「…うわぁ」


 一階に来た時の第一声はこれだった。

 …お兄ちゃんがテレビニュースに写っていたからだ。


 なんでスライムをプチプチしている配信を全国に発信しているのよ、この局は。

 もっと報道するものあるでしょ。地上波ですることじゃないわよ。


「…わぁ」


 スマホを確認すると、テレビのせいでか、視聴者が10万を突破しようとしていた。

 結構頻繁に配信のレベルが上がったみたいで、「鼓膜が破れそうだ…」って言ってる。


 自業自得のくせに。


「涼、凄いわねぇ」

「いや、お母さん! それは違うよ!」

「なんで?」

「お兄ちゃんはダンジョンが規制中なのに入ってるんだよ! だからこんなに目立ってるの!」

「まぁ、そうなの!?」


 はぁ〜 テレビ沙汰になったらもう終わりじゃん、お兄ちゃん。

 …お兄ちゃんなら、むしろ楽しみそうだ。


 そして記者とかを困らせるに決まっている。


「はぁ、テレビでお兄ちゃんの配信見る?」

「ああ、頼む。」


 そして、今現在に至る。


「ほんっと、何呑気に寝てるのかしらこのこ。」

「まぁ、好きにさせろって言ったのは母さんじゃないのか?」

「だからってここまで変なことをするとは思っていなかったわよ。」


 …はぁ。

 この愚行に評論している専門家とか暇なのかな。


 手元にあるスマホのネットニュースに、名前も知らない時々出てくる謎専門家がコメントしている。

 仕事しろよ。専門家。


 これが仕事なのか。


「起きるまで配信ってきっとこのままよねぇ。」

「そうだね。多分。」


 今は謎に、カメラが縦横無尽に移動して、色んなアングルから狐耳の付いたお兄ちゃんの寝相を撮っている。


 何横の無駄機能。


「はぁ…」


 私は盛大にため息をつきながら、一番収益を出す方法について考えていた。



◆ ◆ ◆



『ファッ!?』


『はぁっ!?』


『んぇ!?』


『やべぇ…ww』


『このタイミングで!?』


『どういう精神してるんだ?!』


『豪胆無比かよ ダンジョンで寝るとか』


『頭おかしい』


『馬鹿じゃん』


『傍若無人すぎる』


『肝が座っているどころか、鎮座してるじゃねか』


『やっべぇwww』


『ピッカピカに光っている魔石ちゃん可愛そうに』


『あんだけアピールしても気づいてもらえないなんて…』


『確率検証(寝顔配信)』


『無駄に寝顔を再現して少しかわいくしているのはちょっとギルティかな』


『頭おかしいどころじゃないか』


『アバターのくせに! 俺よりもイケメンなんて!』


『いや確かに、魔力回復には良いけどさぁ…』


『コメ欄が荒れすぎてて誰もボケにツッコミができないww』


『寝顔…(・∀・)イイネ!!』

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