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14 【長門】

「だーもう、疲れたぁ。」


 はぁ。なんで無駄にあいつ強いんだよ。

 あんな事しなけりゃよかった。


 キューブが俺の顔を覗き込んでくる。

 …配信切るかぁ


「そろそろ配信切りまーす。アーカイブは残しとくのでみたい人は見てね〜 高評価とチャンネル登録よろしく〜」


プツンッ


 結局1度もコメ欄見なかったな。絶対に荒れてただろあれ。

 即エゴサしたいけど、今スマホ使えないからなぁ。


 コインロッカーに入れず、アイテムドロワーにはいっている。

 入ってるのは小魔石と鞄って言ったが、あれは壊れて良いものだけだ。


 スマホが壊れたらあんなスライムより怖いものが怒ってくるからな。

 逆らえないから攻略不可能だ。

 いかなるダンジョンボスに勝てようと、母さんにだけは勝つことはできない。


「いやーでも、楽しかったなぁ」


 あのヒリヒリ感や、あれだけ本気で体を動かすのはなかなか味わえない感覚だ。

 アドレナリンがでてたな。ドーパミンじゃなくて。 


 …アドガキなのかなぁ…

 勝利の快感もあったし、スリル満点だったもんなぁ。

 ドパガキとアドガキって共存関係にあるのか?


ゴトッ


 さっきまで浮遊していた、核を破壊した時の煙が宝箱となって現れる。


「ヒャッホイ! 報酬の時間だ!」


 あんな強敵を倒したんだ。生半可なものじゃ許さねぇからな?


 人生で二度目の虹箱を見つめる。

 宝箱ってなんか種類が雑なんだよな。


 木、鉄、銀、金、虹っていうなんのひねりもない宝箱の種類だ。

 ダンジョン(`´)<悪かったな!


 これ以上のものもあるかもしれないが、今はまだ見つかってない。


 …二個も宝箱見たのに、どちらも虹かぁ。

 どっちも災難のあとの虹箱だから、やっぱリスクがつきものってことだよなぁ。

 ってかそういや罠の先が宝箱って、他に誰も気づかなかったのもおかしいよな。


 あー、考えるのはやめだ。もう頭回したくない。


「早速オーペン!」


 ん…? なんだこれ


「小刀…?」


 いや、おかしくないか?

 呉なのに小刀って。どういうことだ?


 装飾もされている。

 まぁこの地域にゆかりのある刀なんだろうけど、わかんねぇ。


「うおっ、重っ」


 結構しっかりした…


[パパーン! ユニークウェポン【長門】を獲得しました!]


「うわっ、うるせぇ!」


 ユニークウェポン…?


「ってえぇぇぇぇえ!?」


 男子なら誰もが憧れるあのユニークウェポン!?

 名前の通り、この世に唯一無二の代物で、錆びつくことも壊れることもない。


 そして、性能はもちろん、必ず特殊能力を持っているわけだ。


「よっしゃぁあぁああああ!」


 一生手に入れれるものだとは思っても見なかった。

 上級の中でも一握りの人間しか持つことができないともいわれているからな。


「そういや、長門って戦艦の名前だったよな。」


 じゃあ、この短剣? 小刀? も何かしらの由来があるんだろうな。

 あとで愚妹に聞くか。


「あぁ〜 帰るのめんどくせぇな〜」



◆ ◆ ◆



「おい! まだ来ないのか!?」

「もう配信が切られたじゃねぇか!」

「おいお前ら! 押すな!」


 眼の前に立ちはだかる大量の人々。


「出遅れたか…」


 とある新聞の記者をやっている私は、寝坊したせいでここに来るのに遅れてしまった。

 幸い、まだ出てきていないみたいだ。


「どこだぁ!? 黒狐クロセ!」

「クソっ! 俺は乗り込ませてもらう!」

「ちょっ! お前それはダメだ!」

「うるっせぇ! 妨害するな!」


 記者の1人が規制線をかいくぐり、ダンジョンの中へと入っていってしまった。

 なんでこんなに雑な規制線なんだろうか。

 よくこれまで誰も入らなかったな。


 テープ二本程度で人間が止まると思ってるのか?

 ならばこれを張った人はあまりにも人間を舐めている。

 しかも、ここに誰もこれを止める人がいないのがおかしいよ。


 ほら、じきにダムが決壊するぞ。


「えぇい! じれったい! 俺も入る!」

「っなら私も!」

「手分けして探せぇ! 必ず逃すな!」

「どこだぁ! 黒狐クロセぇ!」


 あーあ。ほらね。

 やっぱりこうなると思ったんだ。


 一つほころびが生まれれば、それは全体に伝播する。

 馬鹿だなぁ、本当に。


「ここで待ってれば、必ず出会えるってのに。」


 さっきまで人がごった返しになっていたダンジョンへの入口は、がらんとしていた。

 私はここで彼が出てくるのを待つとしよう。



◆ ◆ ◆



「うおぉぉ!! 速えぇぇぇえ!!」


 俺は今、長門を片手に走っている。

 ステータスから長門の詳細を確認したところ、能力が2つあるらしく、


【長門】

・抜き身時、攻撃力上昇

・納刀中、俊敏、防御、跳躍力上昇

・魔力消費20%カット


【41cm砲】

・抜刀時、攻撃力、俊敏超上昇

・使用後、20秒使用不可能


 まぁ、オールラウンダーみたいな感じでユニークウェポンにしては…みたいな感じに思ってた。

 だが上昇値がかなり高く、納刀中の俊敏がかなり高くなっている。

 体感3倍ぐらいだ。


 刀を抜いていると、俊敏が普通に戻るがそれだけ攻撃力が上がるんだろう。

 防御力も、跳躍も上がってるみたいだから、後で試してみよう。


 今はとりあえず腹が減ったので帰りたい。


「昼ごはん何かなー」


 そんな呑気なことを言いながら走っていると、知らない人がいた。


「何だあの人。見かけてないし、もしかして規制線を突破してきたのか?」


 えー、ちょっとリア凸は嫌だな…

 しかもおっさんだし。美少女なら大歓迎なのになぁ…


「一応仮面外したほうがバレにくいよなぁ。」


 俺は仮面をアイテムドロワーに入れて、手に持っているのは【長門】だけとなった。


「このまま一直線で出口だから、このまま抜刀で通り過ぎるか。」


 奥の方に、地上の光が見える。偶然、その通路には誰も居ない。

 さやを左手に、腰に当てた状態で、柄に右手を添える。

 軽く握り、足に力を入れ、抜刀の姿勢になる。


 なんだか、補助されているような感覚がある。

 体がまるで最初から知っているかのように動き出す。


「【41cm砲】!!」


ドォンッ!


 まるで大砲が発射されたような、空気の圧縮された音がする。

 音速超えてねぇかこれ!?


 気づけば、周りの景色は一変し、少し見慣れた入口からまっすぐ行ったところで、長門を軽く抜いた状態で固まっていた。


「うおぉぉ…! すげぇ…!」


 ポロッと言葉が口からこぼれた。

 近くに、唖然としている人がいて、ちょっと目が合った。


「…あ、ども。」

「…ども。」


 …変な空気になったじゃねぇか…

 俺は、すぐさま刀を納刀し、アイテムドロワーに入れて家に向かって全力疾走した。


 …なんだか嫌な予感がしたな…


「顔バレはまだしたくねぇなぁ…」


 はぁ、面倒だし、後で考えるか。





「ただーいま! 昼ごはん何ー?」

「あら、おかえり、涼。配信見てたわよ。」

「うげっ…」


 やば。怒られるか…?


「炎上商法はダメって言ったわよね…?」

「ごめんなさい!!」


ズザァァァ…


 流れるように、スライディング土下座を行う。

 言い訳はそれからだ。


「あれは不可抗力だったんだ!」

「あ、お兄ちゃ… えっ…」


 おい、愚妹! ドン引きするな!

 ある意味お前が原因でもあるんだからな!

 俺に配信を始めさせたっていうな!


「はぁ、涼。なんで配信をやめてすぐに帰ってこようとしなかったの?」

「…だって、楽しそうだったから。」

「相変わらずの考えなしね…」


 あーあ。俺の家族にはもう味方が居ないのかよ…


「まぁ、過ぎたことはしょうがないから、せいぜい私達に迷惑をかけないようにしてね。」

「はい…」


 これがきっと最後の温情だ。これ以上は堪忍袋の緒が爆発するだろなぁ…


「お兄ちゃん、ニュースにまで載ってたから、数日は外出禁止ね。」

「…えっ?」

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