一つの下品な冗談、一つの啓発的な冗談
「蛇崇拝は記述された歴史以前から存在するが、現代においてこの慣習で最もよく知られているのは『七蛇の姉妹会』である。女性信者のみで構成されるこの宗教は、それぞれがいくつかの特性を象徴する七柱の神聖なる蛇を崇拝している。中でも人気があるのは、ストア主義、忍耐、そして痛みに耐える能力を司るティシェドラであり、これらの特性は出産時や特定の時期に望ましいものとされる。姉妹会は地上の蛇についても非常に知識が深く、様々な蛇の毒から抽出したポーション、粉末、毒薬を販売することで組織を維持している。グループは新規会員を受け入れているが、布教活動は行わない。会員資格は主に世襲制であり、母親が娘を信仰へと導く。比較的新しい分派として、二十年ほど前に誕生した『蛇の姉妹会』があり、彼らは元のグループのように七柱すべてではなく、ただ一柱の神聖なる蛇を自由に崇拝すべきだと考えている。『七蛇の姉妹会』からは異端と見なされており、両グループ間で致命的な衝突も発生している」 ――『タイコロスの年代記』より
魔法のいかなる形態を用いる政府機関も、安全上の理由から、サファイア・コートにある他の政府庁舎群からは隔離されていた。それらは代わりに、工房や鍛冶場、その他の工業施設、そして低技能労働者向けの安価な住宅が主に立ち並ぶ『スタック地区』へと追いやられていた。アバナシーはこの街の一角に滅多に足を踏み入れることはなく、常にその空気の不快な臭いに圧倒されていた(「お前はスタック地区のような臭いがする」という言葉は、誰かがひどく悪臭を放っていることを伝える際、現地で使われる慣用句である)。サファイア市の主任錬金術師であるバリン親方は、スタック地区の北端にある実験室と工房の小さな複合施設で働いており、ホンネル隊長はアバナシーにそこで落ち合うよう伝言を送っていた。
彼はバリンの応接室に辿り着いた。親方はかなり質素な木製の椅子に腰掛けていた。顔は、例外的に豊かな塩胡椒混じりの口髭を除けば綺麗に剃られており、灰色の髪は後頭部でまとめられ、手元では安全眼鏡のコードを暇そうに弄んでいた。彼は呪文の使い手たちが好むような緩いものではなく、手首が締まった長袖の濃紺のローブを纏っていた。親方は曲がりくねりながらも非常に白い歯を見せて微笑んだが、立ち上がって出迎えることはしなかった。
「バリン親方、私はアバナシー・ザ・クリアです。ホンネル隊長がなぜ私をここで落ち合うように求めたのか、ご存知ですか?」
バリン親方は首を振りかけたが、途中で止めた。「実際のところ、あなたがその物質のサンプルを発見した人物だからだと思われます。アイスデールの事件現場の壁からは、メッセージそのもの以上の何か――例えば、絵画の筆致パターンのようなものが隠されている可能性を考慮し――最小限の削りカスしか採取を許可されませんでした。しかし、それではあまりに量が少なすぎて、我々としても手が出せなかった。あなたが回収したサンプルは、極小ではありますが、いくつかの錬金術的操作を行うには十分な量でした。何より重要なのは、その物質を大量に複製することができたため、様々な試験を実行できたことです」
「何か興味深いことは分かりましたか?」
「ええ……あなたはホンネル隊長の客人ですが、それでもこの件については、隊長の到着を待ってから議論するのが礼儀というものでしょう」
「ああ、そうですね」アバナシーは急いで、気まずそうに言った。「もちろん、おっしゃる通りです」数瞬の不快な沈黙が流れたが、別の錬金術師の到着によってありがたくも破られた。若く、ほとんど若すぎるように見える男だった。少年のような顔立ちに、大きな青い瞳、寝起きのようにも見えるブロンドの髪。そして、今にも満面の笑みへと弾けそうな、生意気な笑みを浮かべていた。丁寧に縫製された上質な素材のバリン親方のエレガントな濃紺のローブとは対照的に、その若者は二サイズは大きそうで、明らかに洗濯の必要がありそうな派手なオレンジ色のローブを着ていた。彼の前腕には、見覚えのある独特な色の染料のようなものが塗りたくられていた。
「やあ! 君がホンネル隊長かな。いやはや、剣と鎧を期待していたんだが。私はクリヴィントン・ベイツ。よろしく頼むよ」
「初めまして、ベイツさん。ですが、私は――」
「実はね、私はここで長らく研究を重ね、数々の難関な試験を突破したのだ。正式な称号は『マスター』だよ」
「失礼しました」アバナシーは手を差し伸べながら言った。「初めまして、マスター・ベイツさん」
若者は口の中でくぐもった音を立てた。バリン親方は大きく溜息をついた。ベイツはアバナシーの差し出した手を見下ろし、にやりと笑った。
「マスター・ベイツと握手して本当にいいのかい?」彼は笑いをこらえきれない様子で尋ねた。アバナシーは困惑した表情で彼を見、それから明らかに恥じ入っているバリンの方を見た。
「クリヴィントン」年長の錬金術師は、固く冷ややかな口調で言った。「前にも話しただろう。君のその幼稚なユーモアは他の錬金術師の間では辛うじて許容されているが、来客がいる前では全くもって不適切だ」
「ああ、堅いこと言うなよ! ホンネル隊長は兵士だぞ。ありとあらゆる罵り言葉を聞いてきているはずだ。俺の知らない罵り言葉だって使っているだろうさ。そうだろ?」彼はアバナシーを肘で軽くつつきながら尋ねた。「俺の知らないエキゾチックな呪詛を教えてくれよ」
「その服装を見れば分かる通り、これはホンネル隊長ではない」バリン親方が言った。「これは隊長の客人、アバナシー・ザ・クリア殿だ。二人とも非常に重大な件で来ているのだ」
ベイツは爆笑した。「そいつは傑作だ。『重大(grave)』な件だって。わざとやったのか、それとも偶然面白かったのか? おそらく偶然だろうな」彼はアバナシーの方に向き直った。「ここでは来客は稀だし、実に退屈なんだよ。誤解しないでくれ、我々は重要な仕事をしている。だが、退屈さで魂が潰れそうになるんだ。俺はただ、日々のルーチンの単調さから、皆に少しばかり気楽で馬鹿げた休息を提供しようとしているだけさ。そうすれば、我々も少しは仕事が上手くこなせるだろう?」
「ベイツ氏のことは謝罪する。彼はここでは決して『マスター』ではなく、現在の振る舞いを続ける限り、そうなることもないだろう。断言するが、彼の仕事は極めて有能だ――率直に言って、十分すぎるほどにね」この言葉にベイツは顔を輝かせた。「しかし今のところ、彼のより……衝動的な言葉や行動を抑制できていない」バリンは悲しげに首を振った。
「冗談はさておき、俺の腕は本物だよ」ベイツは言った。「それが彼らが俺を解雇しない唯一の理由さ。召喚術アカデミーは三年目に俺を追い出したがね、だからバリン親方には感謝している。だが、俺がマスターになる器かどうかは分からないし、彼らは俺が違うと確信しているようだ。というわけで今のところ、俺は実験をしたり錬金術の手順をこなしたりしている。もちろん、卑猥な冗談を言うのもね」
アバナシーはついに口を挟む機会を察知し、獲物に飛びつく猫のようにその隙を捉えた。「実験と言えば、君の前腕が目に留まったのだが。あれは……?」
「君が回収した物質か? ああ、間違いない。予備分析では既知の毒素は検出されなかった。二匹の動物で実験を行ったよ。安心しろ、フラッフィーもミスター・ウィスカーズも実に元気だ。無害だと確信したから、人体実験をすることにしたのさ――」
「――全くもって規約違反だ」バリン親方が厳しく口を挟んだ。
「まあ、そうだけどね。だが見ての通り、俺は腕にその物質を塗りたくったが、何の悪影響も受けていない。皮膚への刺激すらないんだ。つまり、毒性はないということさ」
「ひょっとして、体内に摂取した場合のみ毒性があるのでしょうか?」アバナシーが尋ねた。
ベイツは首を振った。「もしそうなら、フラッフィーとミスター・ウィスカーズがとっくに異変を教えてくれているはずさ。食べる分には無害のようだよ」
「クリヴィントン、アバナシー殿はホンネル隊長の客人だ。我々が報告すべき相手は隊長であり、隊長が最初に聞くべきであって、二人目の聞き手であってはならない」
「いや、参ったね」ベイツはアバナシーに言った。「礼儀作法ってやつだ。で、隊長はどこなんだい? なぜ二人で一緒に来なかったんだ?」
「私が職場で仕事をしている時に、ここで落ち合うよう指示する伝令が届いたのです。たまたま私の方が近かったのでしょう。あるいは、隊長が遅れているのかも」
「へえ、君はオフィスを持っているのかい? 何の仕事をしているんだ? 当ててみよう……君は調査員だね。金持ちの依頼で働くような類で、市がこの件について君に相談料を払っているんだろう」
「いいえ、実は私は――」アバナシーの言葉は、ホンネル隊長の到着によって遮られた。紹介がなされ、握手が交わされた。
「被害者の鼻腔内にあった物質について、何か進展はあったか?」ホンネルが尋ねた。
「その大半は、被害者自身の粘液です。他に何が含まれていたとしても、ごく微量であるため、我々にできることはほとんどありません」
「それに、なぜ粘液が茶色く変色したのかも不明です」ベイツが付け加えた。
ホンネルはクリヴィントンの腕を指差した。「それは……?」
「ああ、そうです」ベイツは陽気に言った。「実験を行うためにその物質を複製しましてね。その一つとして、毒性があるかどうかを調べるために人の皮膚に塗ってみたんです。痒みすらありません。ですから、これが何であれ、人を殺すために使われるような代物ではありませんよ」
ホンネルは頷き、バリン親方に向き直った。「複製したのか。それで、何か分かったことはあるか?」
バリンは溜息をついた。「ある意味では、全てであり、無です。情報は豊富にありますが、異常な点は一つもありません。植物と、ある種のバッタの体の一部、粘土、そして微量の豚の血を組み合わせたものです。成分に毒性はありません。宗教的、政治的、あるいは文化的な重要性も、我々が把握している限りではありません。もっとも、それは我々の専門外ですので、リストはお渡しします。要するに、この物質の構成要素には何の意味もないようです」
「普通のものばかり、か。素晴らしい」ホンネルは苛立ちを隠さなかった。
「ええ、少し違うかもしれません。一つ興味深い点があります。この物質に何らかの用途があるとしても、それが何なのか特定できませんでした。最初は塗料かと思いましたが、それほど粘性がなく、キャンバスや羊皮紙への染み込みも悪い。そこで、時間の経過とともにどう変化するかをシミュレートする試験をいくつか行いました。結果、すぐにひび割れて壁から剥がれ落ちてしまったのです。キャンバスでも試しましたし、インクとしても試しましたが、実際の塗料やインクのように染み込む媒体はありませんでした。あと数日もすれば、事件現場で見たメッセージは消え失せ、床には赤みがかった埃の山が残るだけでしょう」
「つまり、せいぜい質の悪い塗料だと言いたいのか。それなのに、どうしてもメッセージを残したかった犯人が、世界に言葉を伝えるためにそれを使うと決めた、と?」
「その通りです」
「おそらく、それが狙いなのでは」アバナシーが口を挟んだ。「メッセージは恒久的なものである必要がなかったのかもしれません。犯人は、我々が物理的なメッセージそのものに囚われるのではなく、彼自身、あるいは彼が残した言葉に注目することを望んでいるのかもしれません。あくまで専門的な判断ではなく、即興の推測ですが」
「ふむ」ホンネルは納得がいかない様子で唸った。「バリン親方、物質を複製したと言ったな。手元にどれだけの量がある?」
「各分野の専門家がこの問題に取り組んでいると伺っていましたので、各自でサンプルを欲しがる者がいるかもしれないと考え、いくつかの容器に物質を小分けして用意してあります。元となった分は我々が保管していますし、必要であればいつでも追加で生成可能です」
「素晴らしい判断だ」ホンネルはドアを開け、外で待機していた部下の一人を呼び入れた。「軍曹、いくつか容器を本部まで運んでもらう。落とさないように注意しろ」
「イエス・サー」
バリン親方はベイツに向き直った。「クリヴィントン、軍曹のためにサンプルを回収してきてくれるか?」ベイツが向かおうとしたその時だった。
「オークと戦って死ぬなよ」軍曹が彼の背中に向かって声をかけた。
ベイツは足を止め、軍曹を振り返った。その常に浮かべている笑みに、わずかな当惑が混じった。「すまない――オークって何のことだ?」
「おっと、戦場へ行く前にサンプルを持ってきてくれよ」軍曹は笑いながら言った。「もっとも、鎧の着け方を知っていることを祈るぜ。その塗り方はひどいもんだからな」軍曹がくすくすと笑った。部屋は葬式のように静まり返った。軍曹は突然喉に何かが詰まったような感覚を覚え、必死に飲み込んだ。その音は全員に聞こえるほどだった。
「軍曹」ホンネルが危険なほど冷静で平坦な調子で言った。「説明しろ。なぜこの男にオークだの戦いだのといった話をしている?」
「あ、いや、隊長、ただの冗談です。申し訳ありません。ただ、彼がその塗料を腕に塗っていたもので。普通は顔に塗るものなので」
「この塗料を知っているのか?」
「思い出すのに少々時間がかかりましたが、はい。白い肌の上に塗られているのを見たことがなかったので、一瞬迷ったのです。ですが、独特の匂いがあります。虫刺され用の薬草湿布のような匂いが少しするんですよ」
「では、何なんだ?」ホンネルが問い詰めた。
「ええ、隊長。あれはオークの戦化粧だと思います」軍曹が言った。
「オークの戦化粧だと?」ホンネルが怒鳴った。「何度もオークと戦ってきたが、戦化粧を使っているところなど見たことがないぞ」
「ほとんどのオークも見たことがないでしょう、隊長。一般的な戦いでは使われません。彼らは、他のオークを殺す時だけこれを纏うのです。私は傭兵団に数年いたことがありまして、ある時、オークの部族と戦うために、別のオークの首長に雇われたことがありました。連中は皆、顔にその戦化粧をしていました。口数は多い連中ではありませんでしたが、私が理解した限りでは、それはある種の……何と言うか……これから殺そうとしている同族のオークの怒れる霊から身を守るためのものらしいです」彼は、口を開かなければよかったと後悔し、これ以上何も言わずに済むことを切実に願っているような男の顔をしていた。
「軍曹、このサンプルの一つを、我々の『異文化専門官』のところへ持っていけ。名はエッタ・ハンシンガー。本部の二階にオフィスがある。君の説が正しいか確認してもらえ。もし彼女が裏付けを取れたなら、他のサンプルを配る必要はない。すぐに私に報告に戻れ。行け」
軍曹は直立不動の姿勢をとり、敬礼して「イエス・サー!」と吠えると、サンプルを回収するためにベイツの後を追って行進していった。
「つまり、我々はオークを追っているということか」ホンネルが言った。「これでかなり絞り込めたな」彼は一瞬黙り込み、それからアバナシーを見た。「アリンの屋敷でオークに絡まれたのではなかったか? 報告書には……家事使用人のような者だったとあったが?」
「ええ、まあ、絡まれたというほどではありません。彼女はアリンの幼い息子を守っていただけで、我々が何者かを知らなかったのです。すぐに終わった誤解ですよ」
「いずれにせよ、彼女をよく調べておく必要がある」
アバナシーは咳払いをした。「素人の意見で恐縮ですが、これが単なる目くらましである可能性はないのでしょうか? 犯人が、いかにもオークの仕業であるかのように見せかけようとしているだけという可能性は?」
隊長は溜息をついた。「ああ、それも考慮に入れている。だが経験上、誰かが『巨大な翼で空から舞い降り、鱗と尾を持ち、熱い炎を吐いて被害者を殺害した』と言えば、我々が探すべき相手はドラゴンだ。火球の呪文を唱えながらドラゴンに変装したグリフィンに乗った魔法使いの可能性はあるか? ある。だが、実際にはまずそうはならない。男が自宅でフライパンで頭を殴られて死んだ場合、犯人は金持ちなら料理人、貧乏人なら妻だ」
「経験に異論を唱えるのは難しいですね。隊長が多くの経験をお持ちであることは明白です。ただ、これは戦化粧であり、メッセージを書くためのものではないという点が気にかかるのです。それに、オーク同士の戦いでしか使われないはずなのに、今回の被害者は二人ともオークではありませんでした」
「もっともな指摘だが、我々には手掛かりがなく、今まさにオークとの繋がりを示唆する手がかりがある。唯一の手掛かりなのだから、これを追うしかない」隊長は苛立たしげに言った。
アバナシーは息を吸い、感じていた苛立ちを吐き出した。口調を丁寧で専門的なものに保つ。「隊長なら必ずや真相を突き止められるでしょう。メッセージの解読にあまり貢献できず申し訳ありませんが、この戦化粧の手がかりを見つけられたことは幸いでした。本日はお招きいただきありがとうございます。多くの患者が待っていますので、職務に戻らなければなりません。ご武運と、無事の捕縛をお祈りします」そう言って、彼は頷くとドアへ向かった。
「礼を言う、医者」隊長が言った。「君が発見したこれは、非常に大きな突破口になるかもしれない。市に対して大きな貢献をしたな」
「どういたしまして」アバナシーはそう答え、部屋を出てドアを閉めた。研究所を出ると、彼はどこへ行くべきか考えた。どこかで一杯飲むこともできる。あるいは、飛び切り美しい踊り子がいる上品な店へ行くのもいい。シティ・ウォッチとの関わりから生じた混乱に対処してくれた礼として、ルシンダの家へ行き、夕食に誘うことも少し考えたが、彼女には彼女なりの目的で自由な時間が必要だろうと思い直した。
もう一つの選択肢として、アヘン窟へ行くこともできた。サファイア・シティは自由貿易の上に築かれた街だが、唯一厳しく管理されている商品がアヘンだった。市のみが所有・販売を許可されている。貿易都市である以上、闇市場が存在するのは当然だが、私的に所有されたアヘンはすべて没収され、販売に対する罰則は過酷だった。
アヘン窟はカード制で運営されていた。市民なら誰でも、名目上の手数料でアヘン鑑札を取得できる。鑑札には利用者の血が一滴捧げられ、魔力で封印されていた。アヘン窟で鑑札を提示し、もう一滴血を捧げることで本人確認が行われる仕組みだ。その後、鑑札は十日間無効化され、その期間中は再利用が防がれるようになっていた。鑑札所持者は、豪華なクッションが備え付けられた小さなカーテン付きの個室(あるいは、より高額な、より快適な宿泊設備)を借り、店内で喫煙するために決められた量のアヘンを購入する。
アバナシーは二年前、泥で滑って左肩を痛めた際にアヘン鑑札を申請したことがあった。五、六回ほど通ったところで肩が治ったため、行くのをやめていた。彼は現実逃避を好む方ではなかったが、一年ほど前、ある患者が受けた酷い仕打ちについて聞かされた非常に辛い診察のあと、その恐怖から逃れるためにアヘン窟へ足を向けたことが一度だけあった。
彼が現在その渦中にいる事態は、確かにある意味で恐怖と呼ぶにふさわしいものだった。しかし結局のところ、決断は彼に代わって下されることになった。鈍い稲妻の光と、かすかな雷鳴とともに、雨が降り始めたのだ。アバナシーは体や服が濡れたり、泥まみれになったりするのを好まなかったし、自宅には夢中になって読んでいる本が待っていた。そのため、彼は通りがかった馬車を呼び止め、御者に指示を出して我が家へと向かった。道中、雨は激しさを増し、彼が到着する頃にはかなりの勢いで降りしきっていた。
彼が暮らしているのは、オフィスから歩いて十五分ほどの場所にある、かなり広々としてはいるが簡素な家だった。彼が住む地域の周辺には開けた土地が多く、そのため研究所や芸術家のスタジオ、時折見かける製造業者の工房、いくつかの大きな市場、さらには公演のための劇場などが集まる傾向があった。一時期、小規模なレース場もあった。そこは手頃な大きさの珍しい生物に特化したレース場だったが、広範囲に及ぶ不正行為が発覚した調査のあと、一年前に閉鎖されていた。
この地域に住む人々の大半は、彼と同じように広い空間を必要とする者たちだった。芸術家、錬金術師やその他の魔法の使い手、実演家、そして商品の生産者たちだ。彼の最も近くに住む隣人は、流行の革製品をデザインしており、近くにあるワークショップでは、訓練された労働者たちが彼の作品を複製していた。この地域に人が住み始めたのはここ十年のことにすぎず、そのため人口密度はまだ低かった。犯罪者たちは標的が豊富な環境を好む傾向があるため、街のこの一画はほとんど無視されていた。
アバナシーは御者に運賃を支払い、雨の中の対応に対する心付けを少し上乗せして渡すと、玄関へと急ぎながら、目につく泥水溜まりをできるだけ避けて進んだ。ドアの外側と、中に入ってすぐの場所にマットが敷かれており、彼は靴を脱ぐ前に両方のマットで入念に靴の汚れを拭き取った。雷鳴は先ほどよりも大きくなっていたが、アバナシーはとにかくくつろぐことに意識を集中させていた。
彼はワインのボトルを手に取り、二階の寝室へと向かった。暖炉のすぐ隣にある、信じられないほど快適な椅子の脇には、簡素な木製のテーブルが置かれていた。彼はその上に、本と並べてボトルを置いた。火を熾し、椅子に深く腰掛けると、数日前の夜から本の脇に置かれたままになっていたグラスにワインを注いだ。その本の物語は伝説の時代にまで遡るもので、ジンの魔人から三つの願いを叶える機会を与えられた男の物語が綴られていた。ただし、それぞれの願いが誰かの死をもたらすという条件付きだった。彼は本を手に取り、最後に読み終えた場所から読書を再開した。ワインを一口すすり、頭の中から雷の音を締め出し、暖炉の火を楽しんだ。しばらくして、彼は胸の上に本を広げたまま、テーブルの上に空のワイングラスを残して、眠りに落ちていった。




