仕事帰りの未亡人訪問
「妖精族は人間が自分たちの領分に立ち入ることを嫌い、また彼ら自身も人間に干渉すまいと努めているが、今日我々が知るこの世界は、間違いなく妖精たちによって形作られたものと言える。
富裕層の評議会によって統治される強大なヴェスプッチア王国は、本土から離れた、比較的狭くも細長い大陸に位置している。彼らは近隣諸国を猛烈に侵略し、その土地を吸収するか、あるいは持てる者による統治システムに従う新たな統治者を据えていった。もし海から海へと網の目のように走る、鬱蒼とした大木群『ツリーウォール森』がゆく手を阻まなければ、彼らは大陸全土を征服していたかもしれない。
その森は現実世界の構造の裂け目で満ちており、妖精たちが自由に行き来できるようになっていた。彼らの女王《漆黒のリアノン》は、平和に赴き、平和に去る者は森を横断することを歓迎するが、それ以外の者はすべて、彼女の部下たちによる即決裁判の対象となると布告した。
ヴェスプッチアが最初に偵察隊を森へ送り込んだとき、彼らは丁重に追い返された。二度目、さらに規模を大きくした部隊はクマに追い回された。その後、一箇中隊の兵士が送り込まれたが、彼らは一時的な盲目に陥り、手探りで家路を探さねばならなくなった。
ついに、森に対する総攻撃が開始された。兵士たちは自分たちのただ中に怪物の軍勢を目撃し、激しく交戦した。しかし、やがて妖精の幻惑から覚めた彼らが目にしたのは、自分たちが虐殺した同胞たちの姿だった。
ヴェスプッチアが再び森に軍隊を送ることは二度となかった。彼らが森を迂回して航海できるほどの広大な海軍を構築した頃には、反対側の近隣諸国も侵略に対して十分な備えを固め、独自の海軍を築き上げていた。結果として、ヴェスプッチアは本土での征服活動に舵を切る方が容易となり、現在では本土にいくつかの属国を従え、多くの軍事基地を建設している。しかし、もし彼らが最初に大陸全土を圧倒できていたならば、今日、本土の大部分をも支配下に置いていた可能性は極めて高い」
――『タイコロスの年代記』より
魔法のアイテムのデザインにおける優雅さを称える賞があるならば、「話す石」は間違いなくそれを受賞していただろう。その石は肉体的には極めて単純で目立たない姿をしており、それは意図的なものだった。他者の目を引かないように設計されていたのだ。それが最も効果的に機能しているとき、その所有者以外は誰もその存在に気づくことはなかった。
所有者が間もなく口に出そうとする概念を形にすると、「話す石」はその言葉を思考やイメージへと翻訳する。そして言葉が声に出されると同時に、その声が届くすべての者の精神へと働きかけ、まるですべての言葉がその者の母国語で語られたかのように、それらの思考やイメージを伝え始める。それだけでも奇跡的なことだが、人々は奇跡に対して高い代償を払うものであり、この石は誰もが切望するような代物として設計されたわけではなかった。
そのため、いかにも魔法めいたその機能を隠すべく、「話す石」は聞き手に対して、話し手が実際に発している言葉ではなく、聞き手自身の言語で語られた言葉を「聞く」ように錯覚させた。さらに、石は聞き手の意識を言葉そのものよりも、言葉によって創り出されたイメージや思考へと集中させるため、大半の聞き手は、話し手の口の動きが自分たちの「聞いている」翻訳済みの言葉と完全に一致していないことすら気に留めなかった。
石は地域特有の方言や訛り、語彙や教養の違いをも補正した。たとえ所有者と聞き手が同じ言語を話していたとしても、石は話し手が口にする前の思考を汲み取り、言葉が発せられるのと同時に聞き手の精神へと直接送り届ける。
この石は、所有者が身に付けている限り機能し続けた。また、所有者自身が耳にするあらゆる言葉を理解させることも可能だった。石がその力を所有者に対して偽る必要はないため、アバナシーの耳には言葉がそのままの言語で届くが、それでも思考やイメージとして完璧に理解することができた。さらに、石が所有者の集中を奪うこともなく、望めば翻訳されたイメージを意識的に無視することもできた。ただし、この石は所有者専用に調整されており、それ以外の者が触れれば、たちまち千頭の馬の蹄の音と千頭の竜の咆哮が合わさったかのような、耳を聾するほどの轟音を「聞き」、行動不能に陥るのだった。
アバナシーはいつも通り、シャツの内側に隠されたポケットにその石を忍ばせていた。現在その石のおかげで、彼は比較的日の浅い患者であるスターライトの言葉を理解することができていた。
スターライトは卵殻白色の毛並みに、やや汚れて手入れの届いていない尾、平均的な長さの一角、そしてその身体にはかなりの肉を蓄えた一角獣だった。彼が長椅子に近づくと、長椅子は彼の身体の大きさに合わせてサイズを変えるだけでなく、彼が足を踏み入れて落ち着けるように、その位置を低くした。
スターライトがアバナシーのもとを訪れたのは、一角獣の通常の食事量を遥かに超えて食べ続け、余分な体重が著しく増えてしまったからだった。彼は自分の外見に不満を抱いており、彼が属するコミュニティのメンバーからの反応も決して芳しいものではなかった。今回が四回目のセッションだったが、彼にはどこか無気力な空気が漂っており、まぶたは半分閉じられ、動作は緩慢で、返答は静かで短かった。
「昨夜は眠れましたか、スターライト?」
「一応な。そんな実感はまるでないが」
「今にも眠り込んでしまいそうに見えますよ」
「最高だな」少しの間を置いて、彼は続けた。「悪気はないんだ。ただ、疲れ果てているだけさ」
「気にしてはいませんよ。今日は何か激しい運動でも?」
「まさか。ただ太った身体で突っ立っているだけで、すっかり疲れ果てちまうんだよ」
アバナシーは身を乗り出した。「スターライト、あなたは憂鬱症の典型的な症状を示しています」
アバナシーが話し終えてから、スターライトが反応するまでにわずかな沈黙があった。滅多にないことではあったが、彼か、あるいは患者のどちらかが、相手の言語に対応する言葉のない単語を口にすることが時折あった。たいていの場合はいくつかの言葉を付け加えることで説明がついたが、時には余分な文章や、一瞬のヴィジョンを必要とすることすらあった。アバナシーは、おそらく一角獣の言語には「憂鬱症」にあたる言葉がないのだろうと推測した。
「そんな気がするよ」とスターライトは言った。「俺はいつだって惨めな気分なんだ。みんな、自分が何かしたせいで俺が遺恨を抱いているんじゃないかって勘違いして、傍に寄り付かない。でも俺は、ただ何から何まで嫌になっただけなのに」
「良くない知らせとしては、あなたが自ら行動を起こさない限り、その状況が変わる可能性は低いということです。以前にも運動について話しましたね」
「言っただろ、俺はただ……いつだってエネルギーを吸い取られたような気分なんだ」
「直感に反するように思えるかもしれませんが、運動は実際にあなたに活力を与えてくれます。そこは私を信じてください。また、就寝直前にしっかりと運動を行えば、睡眠の質を向上させることもできます。このような気分の時に、何かに取り組むモチベーションを奮い立たせることがどれほど困難かは分かっていますが、目標を設定する必要があるのです。まずは速歩から始めてみませんか。そうですね、毎日十分間の速歩を五日間」
「……試してみるくらいなら、できるかもしれない」
「五日も経てば、ほんの少し気分が良くなってくるのを感じられるはずです。そして、もっとできるという自信に繋がります。そうしたら、今度は毎日十分間の襲歩を五日間に切り替えるのです。それから、次の診察の日まで毎日十五分間のランニングを行いましょう」
一角獣は頭を振り、短い鼻鳴らしの声を上げた。「話す石」はその声をわざわざ翻訳しなかった。「そこまで全部は約束できないな。まずはこの毎日の速歩がどうなるか見てからだ」
「もちろんです。そのスケジュールを守れるよう、最善を尽くしてください。さて、前回は体重が増えてからの友人たちの接し方について話しましたね。その件について、もう一度振り返ってみましょう……」
スターライトとの残りのセッションは、それなりに実りあるものとなった。アバナシーは、この一角獣が実際に運動の計画を始めてくれるだろうという、確かな手応えを感じていた。
次の患者はフォルトゥーノという名のレプラコーンだった。彼は中流家庭の小綺麗な生まれで、父親の死に伴い、小さな金貨の入った壺を相続していた。運の悪いことに、特に悪賢い冒険者の一行に捕まってしまい、彼らが見事に謎かけを解いたため、金貨の入った壺をそっくり奪われてしまったのだ。この一件により、彼はコミュニティ内でほとんどのけ者扱いされ、その不名誉と孤立感に押しつぶされそうになっていた。
「前回のセッション以来、調子はいかがですか?」アバナシーが尋ねた。レプラコーンの身体に合わせて縮んだ長椅子は、これまでにないほど小さくなっていた。
フォルトゥーノは鼻を鳴らし、首を振った。「相変わらずですよ、先生。泥棒や間男、酒場の喧嘩で誰かの耳を切り落とした男とすら、普通に話している連中を見かけます。それなのに、そいつらと同じ連中が、俺と口をきくくらいならと通りを避けて向こう側に渡るんです。まるで俺が男たちを凌辱し、女たちを妊娠させ、ついでに家畜とも交わったかのような扱いですよ」
「それは大変でしたね。前回、私たちは再建のプロセスについて話し合いました。あなたがより多くの金貨を見つけようと、非常に意欲的に動いているのは知っています。また、それ以外のアイテムのコレクションにも取り組んでいるとおっしゃっていましたね。それについて聞かせてください」
「ええ、森に住む魔女の仕事を手伝っているんです。大半は人の見張りですが、時には誰かの飲み物に少量の粉薬を忍び込ませたり、小さな品物を拝借したりもします。彼女は金貨を持っていませんが、幸運をもたらす数々の物品をコレクションしているんです。呪物や、トーテム、魔除け(チャーム)――そういった類のものです」
「人々の飲み物に物を混入させているという話については、いずれ詳しく掘り下げる必要があると思いますが、今はあなたの目標に集中しましょう。なぜ、それらすべての幸運の魔除けを集めているのですか?」
「一つには、それらが俺に幸運をもたらしてくれることを切に願っているからです! 良いことがあっても罰は当たらないでしょう。ですが同時に、どこかの時点でそれらを売って金貨に換えられるかもしれない。あるいは、別の考えもあります。もしこの魔除けが十分に集まったら、それらを大きな壺に入れて……そう、金貨ではないかもしれませんが、もしかしたら人々が俺に少しは敬意を払ってくれるようになるかもしれない、と」
「それは素晴らしいアイデアだと思います」アバナシーは熱意を込めて言った。「繰り返しになりますが、あなたは自発的に行動し、計画を持ち、それを実行に移しています。それに、幸運の魔除け(ラッキーチャーム)で満たされた壺を作るという発想は非常に創造的です。朝、ベッドから起き上がることすらほとんどできなかった三ヶ月前と比べれば、とてつもない進歩だと思いませんか?」
フォルトゥーノは再び鼻を鳴らし、視線を落とした。「そうかもしれません。ですが、今でも恥ずかしくてたまらないんです。周囲の連中からも恥知らずだと思われているときに、その感情を乗り越えるのは容易ではありません」
「それが困難であることは分かっています。ですが、自分がどれほど遠くまで歩んできたか、少し時間を取って考えてみてください。あなたが懸命に努力したからこそ、ここで成し遂げた進歩を誇りに思うべきです」
レプラコーンは長椅子の上で身を揺らし、相変わらず床を見つめていたが、やがて天井へと視線を上げた。アバナシーは静かに待った。
「朝、目を覚ましたとき、生きていて嬉しくない日だってまだあります。それでも、俺は毎日ベッドから這い出て、自分の人生を修復するために仕事に向かっている。だから、これも進歩なんでしょうね。色々と手助けをしてくれて感謝しています」
アバナシーは微笑んだ。「心の治療は大変な作業です。その重荷のほとんどを担っているのは、あなた自身なんですよ。私は単なるガイドに過ぎません」もちろん、彼は単なるガイド以上の存在だったが、これは患者の自尊心を高めるために彼がいつも口にする言葉だった。
セッションの残りの時間は、特に問題のある行動をとっていた特定の数個人の対処に関する具体的な戦略に費やされた。また、フォルトゥーノは誰かに具体的な疑いをかけているわけではないものの、自分のコレクションが盗まれるのではないかという、軽い被害妄想に囚われていることも告白した。アバナシーは、レプラコーンを捕まえようとする者が探しているのは金貨の入った壺なのだから、誰かがあなたのラッキーチャームを狙う可能性は低いと彼に言い聞かせた。
フォルトゥーノがこの日最後の患者だった。レプラコーンが退出するやいなや、ルシンダが診察室の内扉を開け、市警備隊の隊員が慌ただしく入ってきた。
「助手の方には任務で来たと伝えたのですが、二十分も待たされました。邪魔をしてはならないと言われましてな」彼は警備隊員にしては肥満体型で、丸くて肉々しい顔をしており、鼻の頭が赤みを帯びていた。髭は綺麗に剃られていたが、二重顎だった。その声の調子は事実を淡々と述べる男のものであり、非難を込めているわけではなかった。
「彼女の対応は完全に正しい。私は患者と一緒にいたため、中断するわけにはいかなかったのです。それで、どのようなご用件でしょうか?」
「いや、先生、ホンネル隊長からの伝令で、あなたを『勇敢なるアリン』の自宅へお連れするようにとのことです。未亡人と短い話をしてもらいたいそうで。アリンが亡くなる前に何か変わった様子がなかったかを知りたがっており、先生の問いかけであれば、通常の捜査官が見落としてしまうような何かを明らかにできるかもしれない、とのことでした」
アバナシーは唇をすぼめた。「短い会話でどれほどのことが発見できるか分かりませんが、試してみるくらいは構いません。未亡人はいつ私を待っているのですか?」
「いえ、特に待っているわけではありません。ですが、私の命令は、先生の都合がつき次第すぐにお連れすることです。まだ診るべき患者はいますか? 待合室は空でしたが」
「いいえ、今日の診療はこれで終わりです。今からでも行けますよ。助手に一言伝えてきますので、それから出発しましょう」
その警備隊の隊員は気さくな男で、彼らが『勇敢なるアリン』の邸宅へと向かう間、アバナシーとの世間話に快く応じてくれた。正門の衛兵は隊員の説明に耳を傾けると、新しい洗い場女中の監督をしていた執事のもとへと二人を案内した。二人は周囲の庭園や景観を称賛しながら、屋敷の正面玄関へと続く本道を歩いた。執事は予想通り、厨房にいた。
「どうでしょうか」アバナシーの説明を聞き終えた執事は言った。「あなたが未亡人とお話しされるのが良い考えかどうか、私には分かりかねます。《ウォッチ》はすでに彼女に対して、非常に長時間の聴取を行っていますので」
「分かります。しかし、私の問いかけはそれらとは異なるものであり、彼女を怒らせたり動揺させたりする可能性は極めて低いです。それに、それほど多くの時間は必要ありません」
「それにだ」市警備隊の隊員が厳しい視線を向けながら付け加えた。「夫の死に関する新たな情報が明らかになる可能性もある。重要な情報がな」彼は「重要」という言葉に力を込めた。
青白く、痩せこけた人間である執事は、唇をなめ、一瞬床に視線を落とした。「確かに、おっしゃる通りですな。こちらへどうぞ。質問はできる限り手短にお願いします。そして、未亡人の喪に服す気持ちを尊重してください」
「ええ、もちろんです」屋敷の中を進みながらアバナシーは言った。未亡人は裁縫室に落ち着いており、子供用と思われるセーターを編んでいるところだった。
簡単な紹介の後、アバナシーは質問を投げかけた。アリンは最近、奇妙な行動をとっていなかったか。悪夢を見ていたり、睡眠が少なすぎたり、あるいは多すぎたりしていなかったか。食欲に変化はなかったか。体重が増えたり減ったりしていなかったか。個人的に非常に価値のあるものを誰かに譲り渡したりしていなかったか。運動量を変えたりしていなかったか。声が聞こえるなど、何か異常なものを見たり聞いたりしていなかったか。
唯一、否定で返されなかった質問は体重に関するものだった。未亡人が言うには、料理人がヴェスプッチアへ休暇に出かけ、最近になって非常に甘いデザートの新しいレシピをたくさん携えて戻ってきたため、アリンは「デザート太り」で五ポンド太ってしまったと嘆いていたという。
「お時間をいただき、本当にありがとうございました。お邪魔をして申し訳ありませんでした。重ねて、この度の悲劇にお悔やみを申し上げます」執事がアバナシーの腕に触れ、二人は未亡人を残して静かに裁縫室を後にした。正面玄関で執事は二人に良い一日をと言い、アバナシーと警備隊の隊員は正門へと向かった。アバナシーは右手の少し離れた場所にベンチがあることに気づいた。あれは遺体が発見されたベンチだろうか。一人の少年がベンチにぽつんと座っており、おそらく泣いたせいで顔を赤くしていた。二人は正門に到着した。
衛兵が通り道をあけるために脇へ退いたが、突然、アバナシーの脳裏に閃くものがあった。「すぐに戻ります」彼は言った。「少し確認したいことがあるんです」アバナシーがベンチへと引き返す間、警備隊の隊員は肩をすくめ、衛兵との雑談を始めた。近づくにつれ、彼は自分の直感が正しかったことを確信した。少年の顔は、運動や悲しみで赤くなっているのではなかった。むしろ、その顔には何かが塗りつけられていた。間近で見るとそれは厳密には赤ではなかったが、アバナシーに最近目にしたある色を思い出させた。別の変死を遂げた男の家の壁に、殴り書きされていたあのメッセージの色だ。
突然、彼の首の後ろに鉄のような力で掴みかかられ、小さくも鋭い刃が左の腎臓へと押し当てられた。
「止まれ!」背後から、人間のものではない声が響いた。「お前は何者だ、なぜ若き主人に近づく?」
「どうか落ち着いてください」彼は自分の声と呼吸を一定に保ちながら答えた。「私は市警備隊の同行者です、危害を加えるつもりはありません」
「市警備隊の男にしては、妙な服を着ているな」と声は言った。それは……オークのものだとアバナシーは思った。そしておそらく女性だ。
「私は実際に警備隊の人間というわけではなく、彼らのために動いているのです。今日ここへ来たのは――」
「そこの女! 離れてただちに武器を捨てろ!」市警備隊の隊員の声だった。
「グルンダ、大丈夫だ。彼の言う通りにしろ」聞き覚えのない男の声、おそらく正門の衛兵だろうか。アバナシーはまだ少年の方を向いており、これらすべては彼の背後で起きていた。
彼は喉を鳴らすような音を聞き、それから刃の鋭い圧迫感が消え、首の拘束が解かれた。刃が石畳の道にカランと落ちる音が聞こえ、彼はゆっくりと振り返った。
一人のオークが彼と対峙し、じっと見つめていた。彼女はアバナシーがこれまでに見てきた大半の女性オークよりも筋肉質に見えたが、身長は平均よりも数インチ低かった。彼女の手は異常なほど小さく繊細そうに見えたが、彼の首の後ろを掴んでいたときには、これ以上ないほど頑強に感じられたものだった。彼女の皮膚は灰緑色で、肌のきめは斑模様だった。ピンク色の突き出た鼻にはギザギザの傷跡があり、二本の括約歯(下の歯)が、豚のような顔に向かって小さな牙のように上方に突き出ていた。
「彼女はここで働いているんです」衛兵が言った。「少年の女家庭教師で、非常に保護欲が強いんですよ。ただの誤解です」
「ウォッチが来ているなんて誰も言わなかった。それに、お前は制服を着ていない。若き主人に近づきすぎたんだ」彼女は言ったが、その声に謝罪の気配は微塵もなかった。
「大丈夫です。あなたの言う通りだ」アバナシーは言った。ベンチに座ったままの少年は、少しも怯えた様子を見せていなかった。むしろ、この大騒ぎのすべてに興奮し、わくわくしているように見えた。
「恐れ入りますが」衛兵が市警備隊の隊員に向かって言った。「執事から直接指示がない限り、あの少年に話しかけるのは絶対に御法度です。あんたがたに仕事があるのは分かりますが、俺にだって仕事があるんでね」
「構いませんよ」アバナシーが言った。「質問は一つだけです。乳母から尋ねてもらってもいい。私はただ、彼の顔に何が塗りつけられているのかを知りたいだけです」
「彼に尋ねる必要はありません」オークが答えた。「この子はよくこの場所で遊んでいるんです。ここは――その、あのベンチですから」彼女は居心地悪そうに言った。「いつの間にかベンチの下に入り込んでいて、出てきたときには顔にその汚れがついていたのです。屋敷に戻ったらすぐに、気持ちよく入浴させる予定です」
「ならば」アバナシーは穏やかに言った。「この隊員と私は、ベンチの下を調べる必要がありそうですね」
「では、私は若き主人を屋敷の裏手へ連れていき、遊び時間の続きをさせます。この子にとって、一日の興奮としてはもう十分でしょう」
「でも、僕はここに残って兵隊さんを見たいんだ!」少年は哀しそうに言った。
「口答えはいけません、若き主人。来週になれば《ウォッチ》の訓練を見に行けますから、兵隊さんは嫌というほど見られます。今は、屋敷の裏にあるあなたのツリーハウスを点検しなければなりません。先ほど、怪しいリスを見かけましたので」
「スパイだ!」少年は叫び、そのまま走り去った。オークもそれに続き、誰に対しても別れの言葉一つ残さなかった。
「私は職務に戻らなければなりません。俺の職を失わせるような真似はしないでくださいよ」衛兵が言った。
「すぐに終わらせます。ベンチの下を少し覗くだけですから」アバナシーは彼を安心させた。市警備隊の隊員は彼を怪訝そうな目で見た。アバナシーは四つん這いになり、ベンチの下へと這い進んだ。ベンチの下の石畳でさえも手入れが行き届いており、ひび割れは修復され、雑草一つ生えていなかった。ベンチの奥に向かって、地面のわずかな傾斜に沿うように、石畳が少し下向きに傾いていた。ベンチの隙間から差し込むわずかな陽光の光条の中に、アバナシーは石畳の最も奥、その小さな窪みの底に、赤みを帯びた何かの塊を目にすることができた。
彼は這い出てきた。「手続き上、あなたが私の見たものを確認し、サンプルを採取するのが最善だと思います。短剣を使ってそれをすくい取り、ハンカチに包んでください。素肌で直接触れないように」彼は市警備隊の隊員に見るべき場所を伝えた。男はいくぶん気が進まない様子で膝をつき、ベンチの下へと這い進んでいったが、数分後にはハンカチを手に這い出てきた。
「これが重要なものであることを願うよ」彼は苛立ちをにじませて言った。
「重要だと信じています」アバナシーは言った。「ただちにホンネル隊長のもとへ戻らなければなりません」二人は正門から去ったが、衛兵からの見送りの言葉は、彼らが立ち去るのをどれほど喜んでいるかを物語っていた。帰り道、世間話は一切なかった。市警備隊の隊員はハンカチの中身について尋ねようとしなかった。この件の詳細については自分の給与を上回る範疇であり、口にしてはならないと言い含められていたからだ。
ホンネルの執務室の外に配置されていた部下が、彼は会議中であると二人に告げた。
「隊長はすぐにこれを聞きたがるはずです」アバナシーが言った。その隊員はためらう様子を見せた。「私たちは『勇敢なるアリン』の屋敷から戻ったばかりなのです」彼は付け加えた。隊員は頷き、扉をノックして中に入り、背後の扉を閉めた。一分後、彼は再び姿を現し、その背後からホンネルが出てきた。
「何か有益なことが分かったのか?」彼は焦れた様子で尋ねた。
「何も。しかし、重要なものを発見したと考えています」アバナシーが答えた。「彼に見せてください」と言われ、同行していた市警備隊の隊員がホンネルにハンカチを差し出した。隊長はそれを開き、目を落とした。
「私が今見ているのは、一体全体何なのだ?」彼は尋ねた。
「そうですね、私の勘違いかもしれませんが、これは――」
「待て。テイナの乳房にかけて、これはアイスデール邸の壁にメッセージを書くために使われた物質じゃないか?」
「確実なことは言えませんが、私もそう考えました」アバナシーは言った。「アリンの遺体が発見されたベンチの下で見つけたのです。ベンチの下の石畳は、奥に向かってわずかに下り傾斜になっています。ですから、雨が降れば、地面にあったものはすべてベンチの奥へと洗い流されることになります」
ホンネルは一瞬、言葉を失った。「つまり、ベンチの手前の石畳には、かなりの量のこれが残されていた可能性があるということか」彼は静かに言った。
アバナシーは頷いた。「おそらく、メッセージを書き残すには十分な量が」
ホンネルの目はほんの一瞬だけ見開かれたが、すぐに指揮官としての態度を取り戻した。「お前」彼はアバナシーに同行していた隊員に向かって言った。「このハンカチをバリン親方のもとへ直接持っていき、分析させろ。それがどこから来たものかは一切伝えるな。ただ、これがアイスデール邸の物質と一致するかどうかを知りたいとだけ伝えろ。彼の研究所で回答が出るまで待機し、その後ただちに私のところへ戻れ。すぐに行け」隊員は敬礼し、大急ぎで出発した。
ホンネルはアバナシーに視線を向けた。「もしこれが同じ物質であるなら、あの夜の雨がメッセージを洗い流してしまった可能性があるということだな。そうなれば、アリンが――」彼は言葉を切り、アバナシーを近くに引き寄せ、声を潜めた。「アリンが殺害されたこと、それもアイスデールを殺したのと同じ人物によって殺されたことが、疑いようもなく証明される」
「それが論理的な結論のように思えますね」アバナシーは囁いた。
「バリン親方が何を発見したか、追って知らせよう。もし物質が一致すれば、お前はこの事件において重大な発見をしたことになる。いずれにせよ、お前がここで待つ意味はない。自分の用事に戻ってくれ、進展があり次第、誰かを向かわせる。見事な働きだ」
「ありがとうございます、ホンネル隊長」アバナシーは答えた。彼は一瞬、誇らしい気持ちになったが、物質が同一であると確認されるまでは、自分で自分の背中を叩くのは時期尚早だと自戒した。それでも、彼は街で最も評判の良いシーフード店の一つで、スパイスを効かせたハマグリのスープを一杯自分にご馳走することに決めた。




