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漆黒の湖に揺れる光と、二つの孤独

「かつてシビュラ(巫女)は、崇め奉られる神聖な階級であった。彼女らのあらゆるニーズは満たされ、世話が行き届き、その神託は歴史を動かす者たちの行動をも左右する力を持っていた。マッスディアのシビュラは絶対無誤であるとみなされていたが、時には事象が実際に起きた後になって初めて、人々がその予言の意味を理解することもあった。反復実験や検証が重んじられるようになった『探求の時代』においてさえ、神託による知恵は意味あるものと考えられていた。しかしある時点で、統治者たちは人々に自分たちの聞かせたい言葉を吹き込む偽シビュラの価値に気づいた。一部の都市では、参拝客(と彼らが落とす金)を呼び込む目的でシビュラを捏造することさえあった。だが偽シビュラが提供するのは、お祭りの手相占い師のような曖昧で大雑把な予言に過ぎなかった。リアンサリスのシビュラのような本物のシビュラは、大嵐の到来を予言し、それによって地図上から消し去られる町の名を正確に言い当てた。エウェリンのシビュラは、ヴェールズ戦争が終結する月と、その勝者が誰になるかを特定した。現在、大半のシビュラが世間の大部分から物珍しい見世物として扱われる一方で、ダン=リヴァンのシビュラは世界で最も信頼できる存在とみなされている。滅多に出されない彼女の神託は、発せられるやいなや世界の四方に即座に送られる。彼女の祠への巡礼は、訪れる価値が十分にある。簡素な白い布切れだけを裸身に纏い、足元の地の亀裂から漂う霧の中に佇む彼女の姿には、私たちの世界とどこか別の場所が分かちがたく繋がっているという、紛れもない感覚が存在するのだ」 ――『タイコロスの年代記』より


彼らは入口のホールで再び合流し、十部ほど歩いて広場に到着した。日没が間近に迫り、周囲の至る所で松明が灯され始めていた。


「みんな先にテーブルを探していてくれ。僕はこれらの知らせをざっと見てみたいんだ」アバナシーは黒板を指さしながら言った。彼が近づいて見ると、各黒板の頂点には大きな文字で地名が書かれており、その下に一、二行の短い文が続いていた。「ポロリア帝国:ユーティ教徒に対する宗教的迫害が帝国全土に拡大」 「両海王国:アルデラ・シティで疫病が猛威を振るい、日常生活が麻痺」 「都市国家ワディラム:六日間に及ぶ洪水により、地域の作物の壊滅が確実に」 「ヴェスプッチア:統合鉱山会社によれば、新たなタランタ拠点での金の産出量が予想を上回る」 アバナシーはそれらすべてを読み、広場の反対側に渡ってそこにあるものも読み終えてから、一行の元へと戻った。


「あなたの分もお酒を頼んでおいたわよ」ヘルギは彼が隣に座るとそう言った。「それと、みんなで分け合えるように、この湖で獲れた小さな魚の切り身も持ってきてくれるそうよ」


「それは美味しそうだね」彼は愛情を込めて彼女の手を握り返しながら答えた。突然、彼の目が怪しげに光った。


「どうかしたの?」と彼女が尋ねた。


「いや、なんでもないんだ。ただ……僕たちが巨大な地下湖の上にいると思うと、なんだかワクワクしてね。こんな景色を再び目にする機会がいつ訪れるか分からないだろう? 今夜、地図をじっくり確認して、明日の朝に湖を訪ねる時間が作れるか見てみたいんだ。泳いでもいいし、釣りをしてもいいし、少し羽を伸ばすだけでもいい」


「釣りがしたいのか?」レザが信じられないといった様子で訊ねた。


「ああ、ぜひね。ゴルトゥク、君も釣りに行きたくはないかい?」彼はミノタウロスを真っ直ぐ見つめながら言った。


「やり方が分からない」と彼は答えた。「一度もやったことがないんだ」


「そうじゃないかと思っていたよ」とアバナシーは言った。「ぜひ教えたいな。とても簡単だよ。それに、ここの魚はきっと美味しいはずだ」


ゴルトゥクは突然エールのジョッキを置き、しばしその中を見つめた。「それは素晴らしい提案ですね、アバナシー先生。釣りを教えていただけるなら、とてもありがたいです」


「お前までか?」レザが訊ねた。彼は呆れたように首を振った。「世の中で最も退屈なことの筆頭だぞ」と彼は言った。


「何はともあれ、決まりだな。明日は全員で湖を訪れよう」とアバナシーは言った。「釣りをしたくない者は、泳ぐなり他の娯楽を探すなりすればいい」レザは肩をすくめた。


「案外楽しいかもしれないよ、レザ」ベイツがニヤリと笑いながら言った。「もしかすると、地元の風習では服を着ないで泳ぐのかもしれないしね」


「ここに来てから、脱いだ姿を見てみたいと思う人間は一人しか目にしていないがね」とレザが答えた。


ベイツは思わせぶりに微笑んだ。「頼んでみさえすればいいのにな」ヘルギを除く全員が爆笑した。彼女はただ鼻を鳴らし、呆れたように目を丸くしただけだった。


試食の魚料理が運ばれてきた。給仕の少女が去ると、ゴルトゥクはポーチから干し肉を取り出して食べ始めた。


「魚は試さないのかい?」とベイツが尋ねた。


「一般的に言えば、ミノタウロスは自分で仕留めた生き物しか食べないのだ」と彼は答えた。


「友よ、君の分がないのは少し気の毒だが、僕が食べられる分が増えるのは嬉しい限りだよ」とベイツが言った。


「同意します」とクラリッサが言った。「これ、素晴らしいお味です。以前にも十分に調理された新鮮な魚を食べたことがありますが、これが一番かもしれません」


食事が終わり、宿屋へと歩いて戻る途中、アバナシーはヘルギの隣を離れ、ゴルトゥクの腕を優しくつついた。二人は一行の後ろを少し離れて歩いた。


「僕の案に価値はあると思うかい?」とアバナシーが訊ねた。


「思う。狩りのことを考える時に感じるような……あの気分の悪さは感じない」


「よし。君のプライバシーを守るために、他の者抜きで予行演習を行うことを提案したい。うまくいけば、予定通りみんなで釣りをしよう。もし嫌な感情が湧き上がるようなら、明日の朝に『本当に退屈そうだからやめておく』と言ってパスすればいい」


「問題ないと思うが、その配慮には理があるな。ということは、明日の朝は早起きをするということか?」


「実は、今すぐ行こうと考えていたんだ。みんなが落ち着くのを待って、君と僕で抜け出して試してみよう」


「夜にか?」とゴルトゥクが尋ねた。


「魚は夜でも起きているさ。プライバシーを確保するにはこれが絶好の機会だ」


「異論はない。ヘルギには何と説明するつもりだ?」


「必要なことだけさ。この外出はプロとしての業務であり、守秘義務が適用されるとな」


戻った彼らは、誰がどの順番で風呂に入るかを話し合った。ベイツは、遅くなりすぎないうちに広場に戻って地元の仲間を探す幸運を試したいと言い、最初の方の順番を希望した。レザは、入浴して就寝する前にどこかでサイコロ賭博を探すつもりだから後でいいと言った。


部屋に戻ると、アバナシーはヘルギに、数時間ほど出かけなければならないが詳しい説明はできないと伝えた。


「一人で行くの?」と彼女は尋ねた。


「明確には言えないんだ」と彼は答えた。


「安全なの?」


「完全にね。本当なら今すぐ君と一緒に、この格別に着心地の良さそうなベッドを堪能したいところなんだが、この件を片付けなければならなくてね」


「私とベッドはあなたが戻ってくるまでここにいるわよ」と彼女は言った。「でも、あまり長引くと、誰かに場所を取られているかもしれないわね」彼が眉をひそめると、彼女は微笑んで彼の腕をいたずらっぽく叩いた。「行って、お仕事を済ませてきて。できるだけ早く戻ってきてね。お風呂に入ってさっぱりして待っているから」


「そんな言い方をされたら、ここから抜け出せなくなってしまうよ」と彼は言った。彼女の手が彼のみぞおちを滑り降り始めると、彼は大きく一歩後退した。「その続きは後で。できるだけ早く終わらせてくるよ」彼は再び近づいて手短なキスを盗むと、玄関ホールへと向かった。受付のデスクには、明るい笑顔を浮かべた二十代後半の魅力的な赤毛の男性が座っていた。


「こんばんは、お客様。ここまでは快適にお過ごしいただけていますでしょうか?」


「とても快適ですよ、ありがとう。連れと二人で湖へ釣りに行きたいのですが、道具はお借りできますか?」


「釣りに必要なものは一通り揃っておりますよ」と男性は言った。「ですが、どれもごく基本的なものです。もし高級な木材で作られた竿や、上質なエサ、特別なルアーをお求めでしたら、町にある釣具店をお訪ねいただく必要があります。道順をご案内しましょうか?」


「いえ、あるもので十分ですよ」とアバナシーは言った。「湖の入口まではどのくらいかかりますか?」


「迷わずしっかり歩けば徒歩で四十分、散策しながらでしたらもう少しですね。もちろん、馬車を使えばずっと早く着きますよ」


「素晴らしい。道具を持ってきていただけますか? 今すぐ行きたいのです」


「今からですか、お客様?」と男性は片眉を跳ね上げた。だがすぐに元の表情に戻った。「かしこまりました。当館では御用がない時に当館の前を通るよう馬車に手配しておりますので、おそらく二十分以上お待たせすることはないかと存じます。保証はいたしかねますがね。あるいは広場まで歩かれるのも手です。湖までの道のりは途中で松明の明かりが乏しく、迷いやすくなっておりますので徒歩はお勧めいたしません。洞窟内には夜間でも人がおりますが、夜になると少なくなります。お客様からは、日が暮れてからの帰り用の馬車は四十五分ほど待つこともあるとお聞きしておりますよ」


「表で少し待ってみて、定期の馬車が来なければ広場まで歩くことにします」とアバナシーは言った。


「賢明なご判断です、お客様。道具をお持ちしますので少々お待ちください」彼はデスクから立ち上がり、近くのドアから奥へ入っていった。彼が席を外している間に、ゴルトゥクがやって来た。


「遠いのか?」と彼は尋ねた。


「馬車に乗る必要があるね」とアバナシーは告げた。


「なら、観音扉の馬車でなければな。大きな馬車でもない限り、片開き扉だと体が通らないことが多いのだ」


「広場に行けば見つかるはずさ」男性が二本の釣り竿と、必要な道具一式が入った箱を持って戻ってきた。アバナシーはチップを渡し、礼を言った。幸いにも宿の表には馬車が待機しており、それには観音扉がついていた。ゴルトゥクが乗り込むと馬車がわずかに一方向に傾いたが、彼が中央に体を収めると、アバナシーも乗り込んだ。


「湖かい?」と御者が尋ねた。


「ええ、お願いします」とアバナシーは答えた。


「絶好の時間帯だな。泳ぐ奴も少ないし、騒がしくもない。夜の方が釣れるのさ」馬を走らせながら御者が言った。「水の中にヘッビを何匹か見かけるかもしれねえが、気にすんなよ。噛みつきもしなけりゃ巻きつきもしねえ、毒もねえ奴らだ。小さい魚を呑み込みたいだけだからな」


食事や酒が提供され、取引が行われる町の区域は明かりが煌々と灯り、いまだ活気に満ちていた。より住宅街に近いエリアを通り抜けたが、そこには人通りがほとんどなかった。湖へのアプローチはより暗くなり、馬車は速度を落とした。御者には馬車の松明が照らす範囲しか見えていなかった。ようやく到着すると、洞窟の入口がはっきりと目に入った。明るく整備された場所だった。馬車が到着した時、地味な中年カップルが外側の洞窟の壁にもたれかかり、固く抱き合っていた。アバナシーとゴルトゥクが降りると、そのカップルが馬車に乗り込んだ。


洞窟の入口から湖へと続く道には、大きく等間隔に配置された松明が設置されていた。下り坂の傾斜は緩やかで、道は極めて良好に維持されていた。たまにある障害物といえば、直前に泳いでいた者たちの足から滴り落ちてできた水たまりくらいのものだった。一番下まで辿り着くと、一本の大きな連続した湖岸が広がっている一方で、洞窟内の岩の形成によって、洞窟の床と水面が接する小さなスペースが幾つも作られているのが見えた。


湖岸の開けた場所では、小さなかがり火が楽しげに燃えていた。その周りにいるグループの大半は十代の若者のようだったが、少し離れた場所には老人が一人座り、小瓶から酒を煽りながら体を温めていた。そこから十メートルほど離れた場所では、四人家族が葦のマットの上でくつろいでいた。両親は手を繋ぎ、六歳ほどの娘が湖の縁まで走っていっては水に足指を浸し、キャッキャと声を上げて両親の元へ走り戻るのを繰り返すのを眺めていた。息子のほうはホタルが入ったビンを抱えてマットに転がり、その明滅する光に見入っていた。アバナシーは、洞窟のあちこちにさらに多くのホタルがいることに気づいた。さらに奥では、別のカップルが腰まで水に浸かり、静かに抱き合っていた。


「グループから離れて、静かな場所を探そう」とアバナシーは言った。二人は人が少なそうな右手へと歩いた。肩まで水に浸かっている二人組など、他のグループの脇を通り抜けた。そのうちの一組は水中の鍾乳石の構造体に押し付けられ、もう一人がその背後に立っていた。時折、周囲の波音に混じって喘ぎ声が漏れ聞こえてきた。


二人は大きな木製のフェンスに行き当たるまで、行けるところまで歩いた。高さは少なくとも四メートルほどあり、上部には金属製のスパイクが一列に並べられていた。フェンスには鉄で補強された重厚な木製の扉があったが、開ける方法は見当たらなかった。扉には綺麗な文字で「立入禁止」と塗料で書かれていた。近くにある二本の大きな松明が、その周囲を実に明るく照らしていた。


右手に壁、左手にいくつもの洞窟の形成物を配したことで、二人は当面の間、プライベートな湖岸を確保することができた。アバナシーは頷き、小物の入った箱を置くと、必要な道具を取り出し始めた。彼はゴルトゥクのために竿を一本用意して手渡し、続いて自分の分も準備した。二人は靴を脱ぎ、注意深く膝の高さまで水に入った。水は冷たかったが、凍えるほどではなかった。


「これには忍耐が必要なんだ」とアバナシーは言った。「それと静かさもね。魚を脅かして逃がしてしまったら、世界中のどんなエサをもってしても意味がなくなってしまう。さあ、僕が糸を遠くへ投げ入れる時の腕と肩の動きを見ていてくれ。針をできるだけ遠くへ飛ばしたいんだ。そして、魚がエサに食いついたら、ただ手前に引き寄せる」


アバナシーはゴルトゥクが見守る中で糸を投げ入れ、ゴルトゥクもその動きを真似た。二人はしばらく突っ立っていた。ゴルトゥクはアバナシーを横目で見た。彼はただ微笑み、湖のより深い方向、自分たちの針がある方を指して頷くだけだった。さらに時間が経過した。ゴルトゥクは再びアバナシーに目をやった。アバナシーは釣竿から片手を離し、落ち着くように促すジェスチャーを返した。分単位の時間がゆっくりと過ぎていった。突然、ゴルトゥクの糸にぐっと引っ張る手応えがあった。


「後ずさりして引き寄せるんだ!」アバナシーが囁いた。ミノタウロスは下がり、糸を引きながら乾いた陸地へと後退した。針にかかった何者かは虚しく暴れまわった。水から手繰り寄せられる糸が増えるにつれ、魚は浅瀬へと引きずり込まれ、そのもがきによって水しぶきと波紋が上がった。ついにそれは水から引き揚げられ、洞窟の床の上で激しく跳ね回った。ゴルトゥクが近づいた。アバナシーはすでに浅瀬を歩いて近づき、その上に身をかがめていた。


「僕の見間違いでなければ、マスの一種だな」ゴルトゥクは魚を拾い上げ、口から針を外してじっと見つめた。特別大きくもないその魚は、彼の巨大な手の中ではいっそう小さく見えた。


アバナシーは言った。「適切な調理をすれば美味しいはずだ。きっと誰かが素晴らしいレシピを教えてくれるはず――」ゴルトゥクは魚をガブリと大きく噛み切り、噛んで飲み込んだ。彼は声を漏らすと、残りの半分も口の中に放り込み、平らげてしまった。


「普通は食べる前に骨を取り除くものだが、まあ……」


ゴルトゥクは何も言わず、洞窟の床に腰を下ろした。アバナシーも釣竿をフェンスに立てかけ、同じように腰を下ろした。二人は五分ほど静かに座っていたが、やがてゴルトゥクが言った。「気分は悪くないな」


「それは良かった。狩りの時に感じていたような嫌な連想はなかったかい?」


「全くない。味は肉に劣るが、食べられなくはない。先生が言うように、適切な調理をすればなおさらだろう。骨に関しても、これほど小さな獲物なら、私の歯ですり潰されなかった分も胃の中で分解される。心配はいらん」


「ならば、これは君の問題に対する見事な解決策になるわけだ」アバナシーは晴れやかな顔で言った。


「水辺からあまり遠く離れない限りはな」


アバナシーの微笑みが少し陰った。「まあ、一時間前に比べれば選択肢が増えたさ。だからここにいる間に捕れうる限りの魚を捕まえて、燻製にするなり塩漬けにするなり、好きに加工して今後の道のりの糧にしよう」


「ああ。そして感謝する、先生。これは素晴らしい考えだ。常に水辺にいるとは限らんが、言われた通り、餓死を避けるためのもう一つの選択肢を得ることができた。サファイア・シティにいれば、釣りをする機会などいくらでもあるだろうからな。さて、もっと捕まえるとしようか?」


続く二時間で、二人はさらに六匹の魚を釣り上げた。アバナシーが釣り上げた一匹は見事な大きさで、ミノタウロスにとっても明らかに二口以上はあるシロモノだった。その大物を上げた後、アバナシーは一休みすることにした。冷たさが少々身に染みてきたため、何度か水から上がって短い休憩を取る必要があったのだ。彼はゴルトゥクが釣りをする様子を眺めながら、水面に反射するホタルの光を楽しんでいた。どういうわけか、ホタルたちは洞窟のその狭い区画に集まっており、今やその数は、途切れ途切れの明滅というより、水面がほぼ絶え間なく発光しているように見えるほどだった。


ゴルトゥクが突然唸り声を上げた。彼は竿を引っ張りながら一歩後退したが、すぐに体勢を崩して前方へとのめり込んだ。竿は綺麗な弧を描いて撓んでいた。


「これは凄まじい大きさだ」彼は骨を折る思いで二歩後退した。だが再び前へと引きずり込まれ、撓む竿に耐えながら、一歩、また一歩と前進させられた。突然、彼の足がすくわれ、光る水の中へと姿を消した。彼はまだ比較的浅い場所にいて、足場を取り戻そうと激しくもがいていた。駆け寄るアバナシーには、その全てが実に鮮明に見えていた。胃に不快な吐き気を覚えながら、彼は上空をちらりと見上げた。彼らのいる洞窟内には、ホタルなど一匹も飛んでいなかった。


アバナシーが辿り着く直前に、ゴルトゥクはどうにか自力で立ち上がった。咳込み、唾を吐き散らしながら、ミノタウロスは岸の方を指差し、アバナシーの背中を強く押してそちらへ動かした。突然、彼らと岸の間の水面がいっそう明るく輝き、水しぶきひとつ立てずに女性の姿が現れた。


彼女の体そのものが発光体であるかのようだった。湖の水と同じ深い青色の髪が、彼女の体の周りを漂いながらお腹のあたりまで伸びていた。肌はそれよりもずっと淡い青色で、ほぼ半透明に見えた。アバナシーには、彼女の体の内部で光の粒が動き回っているのが見えるように思えた。薄い唇の広い口、小さな鼻、そして丸く暗い青色の目をしていた。体つきはしなやかで引き締まっており、胸もそれに相応しいものだった。平らなお腹の下には、青い髪の薄い房が横たわっていた。湖から現れたばかりだというのに、彼女の体から滴り落ちる水滴は一滴もなかった。その右手には、ゴルトゥクの釣竿が握られていた。


「人間には、逃した魚についての冗談があるのでしょう?」彼女は竿を彼へと差し出しながら言った。「意味が分かりますか?」


「いや」と彼は言い、警戒しながら手を伸ばして彼女から竿を受け取った。「釣りは初めてなんだ」


「大したことではありません。語り草ができるというものですよ」彼女は微笑みながら言った。「水の中に引きずり込んでごめんなさいね、でも、あなたに触れてみたかったの。あなたが足を――足ではないものを水に入れた時、湖の中に何か新しいものを感じたわ。とても好奇心がくすぐられたの。湖は常に賑やかけれど、新しいものが来ることは滅多にないから」


「君が、この人々が祀っているという湖の神なのか?」とゴルトゥクが尋ねた。


彼女は首を振った。微笑みは消えていた。「もしそうなら、あなたは死んでいるか、死ぬより恐ろしい目に遭っているわ。けれど、あれは表面には出てこない。光の届かない、遥か深い底に留まっているの。私はそこへは行かない。私にはかつて妹がいたわ。彼女は下へ行ってしまって……今では私に妹はいないの」彼女は伏目になった。


「本当に気の毒に」とアバナシーが言った。「兄弟姉妹を失うのは、とても辛いことだ」


彼女は頷いた。「もう三世紀近く前になるけれど、今でも寂しいわ。今の私は、ここでただのニムフェ(水精)よ」


「ニムフェというのは聞き馴染みがないな」と彼は答えた。


「私たちは精霊よ。水と結びついた存在。この湖が私の水なの。湖は私がいなくても存在できるけれど、私は湖がなければ存在できない。湖で起きるすべてのことを私は知っているし、感じ取ることができる。深い底を除いてはね。あそこに意識を彷徨わせたりはしないわ。私は自分を水の中に散らすことも、一つにまとめることも、今あなたたちが見ているような実体のある体を作ることもできる。それは大変な作業だけれど、時々寂しくなって、人間と慰めを分かち合いたくなるの」彼女はゴルトゥクを見て微笑んだ。「でも、他の肉体を持つ生き物は刺激的だわ。人間はたくさんいるけれど、あなたのような人は誰もいない。あなたは何と呼ばれているの?」


「私の名はゴルトゥク。私の種族はミノタウロスと呼ばれている」


「あなたのような仲間がたくさんいるの?」


「人間ほどではないし、世界のこの地域では我らの数は少ないが、そうだ、私の同胞は他にもたくさんいる」


「そして、あなたは人間が好き? 彼らの言葉を話すものね。人間は私に優しくしてくれることもあるわ。そうでないこともあって、そんな時は彼らを傷つけなければならなくなるの。それは私を悲しくさせるけれど」彼女は物欲しそうな目つきで言った。


「私……話せば長くなります。私を恐れる人間もいて、そういう者たちは良くない振る舞いをします。恐れつつも放置してくれる者もいます。私と知り合った者は、少なくとも公正に接してくれます。中には、この人間のようにとても親切にしてくれる者もいて、彼らのためなら私は何でもするつもりです」アバナシーは顔を赤らめた。「あなたの種族がニムフェ(水精)と呼ばれるのは分かりましたが、あなたのお名前は?」


「アグニエシュカと呼ばれています」彼女はゴルトゥクに言った。「あなたの口でうまく発音できなくても、思い悩む必要はありません。私のことをニムフェ、あるいは湖と呼んでも同じことですから」彼が彼女の名前を言おうと試みると、彼女はそれを直した。三度目の挑戦で、彼は正しい発音を手に入れた。


彼女は微笑み、手を叩いた。「とても上手です! ゴルトゥク、あなたのことが気に入りました。私と交わっていただけますか?」


ゴルトゥクは茫然とした表情を浮かべ、無言でアバナシーの方を向いた。アバナシーも同様に呆気にとられていた。


「ごめんなさいね、人間の方。でも今日は一人だけで十分なの。あなたはとても穏やかそうな方だけれど」と彼女は言った。


「ああ、お構いなく。不躾なことを聞くつもりはないのですが、あなたの提案されていることは安全なのでしょうか? 私の友人に何か異様な後遺症が残ったりはしませんか?」


彼女は笑った。「彼が水に身を投げて私を追いかけて泳ぎたくなるようなこと、という意味かしら? いいえ。少しの間楽しいだけで、悪いことは何も起きません。変化もありません」


ゴルトゥクは平静を取り戻した。「私には……もう長いこと伴侶となる存在がいないのだ。そして、私の友人がお前を見る目つきからして、お前が美しいのだということは理解できる。だが私の同胞は……我らの精神は、人間の姿に魅力を感じるようにはできておらんのだ」


「この体が好みではないの? 練習しなければこれしか作れないのよ。でも、あなたにその気があるなら、もっと素晴らしい体験をさせてあげられるわ。湖の中へ泳いできてくれれば、私は水としての姿に戻ります。そうすれば、お互いにとってもっと大きな歓びが得られるでしょう。私を信じて。あなたを傷つけたりはしないわ」彼女は手を差し伸べた。


「アバナシー先生、開けた場所まで歩いて戻っていただけないでしょうか? 竿を持って戻っていただければ、残りの道具は後ほど向こうで合流した時にお持ちします」


「君が良いのなら」とアバナシーは言った。ゴルトゥクはアグニエシュカの手を取り、頷いた。「分かった。では、楽しんでくれ。僕の友人を頼んだよ」と彼はニムフェに言った。


彼女は笑った。「彼が詳細を話したら、あなたは嫉妬のあまり彼を友人とは呼べなくなってしまうかもしれませんね」彼女はアバナシーの脇を通り抜け、ゴルトゥクの手を引いてより深い水の中へと進んでいった。アバナシーは岸に戻り、釣竿を手にしてメインの湖岸へと向かった。彼は振り返らなかった。


十代の若者たちは相変わらずかがり火を楽しんでいた。老人の姿は消えていたため、アバナシーは彼が座っていた場所に腰を下ろした。長い時間水の中にいた彼の足と足首は、火の温もりを心地よく受け止めた。少年の一人が振り返って彼に気づき、親しげに手を振ると、再び少女の一人に冷たい水に入るよう促す作業に戻った。


ゴルトゥクが戻ってきたのは、一時間近く経った頃だった。驚くべきことに、彼は骨のように乾ききっていた。片手には釣り道具の箱を、もう片手には魚を通した麻紐を持っていた。彼は満ち足りた満足感を漂わせながら歩いていた。


「帰る準備はできたかい?」とアバナシーが尋ねた。


「いや。だが、これ以上先生を待たせたくはなかったのだ」


「そんなに良かったのかい?」


ミノタウロスは頷いた。「彼女は再び湖と一つになり、水の中のあらゆる部分を動かすことができたのだ。まるで千本の指、千本の舌のようだった。極めて小さなものもあれば、かなり大きなものもあった。体のあらゆる神経が一度に触れられているかのようだった。彼女の中に私がいたと言うべきか、彼女が私をただ包み込んでいたと言うべきか。頭まで水に浸けて、全身でその全てを感じてみたいと思わされるほどだった」


「それは凄まじいな。君がそこまでリラックスしているのも頷ける。だが、なぜ乾いているんだい?」


「別れる際、私が岸に上がった途端、体についていた水がすべて飛散するようにして湖へと跳ね戻っていったのだ。粋な気遣いだな。濡れ鼠になったミノタウロスを乗せてくれる馬車屋などいないだろうから」


「確かにその通りだ。それについてだが、次の馬車を捕まえられるよう、この続きは外の洞窟の入口へ向かいながら話すとしよう」


「では行こう。だが、これ以上話せることもそう多くはないぞ。大体は伝えたし、残りは言葉で説明するのが難しい」二人は道を上り始めた。


「つまり、彼女が実質的に水だったとして……その、彼女自身はその行為から何を得ているんだろう?」


「さあな」とゴルトゥクは言った。「だが、彼女が大きな歓びを得ていたのは極めて明白だった。体に頼らずどうやっていたのかは分からんが、彼女は声を漏らしていたのだ。言葉ではなく、声だ。そしてそれは確実に歓喜の声だった。最後に短く会話をしたが、私と時間を過ごせて本当に楽しかったと言っていた。思い出にと、湖の底から取れた光る小石をくれたよ。形見などなくても、私はこれを決して忘れないだろうがな」


「二人にとって良いことだったようだな。僕としては、彼女がこの場所で同胞唯一の存在であることに同情してしまうよ。妹を亡くした後ならなおさらだ」


「私も同じ意見だ。だが彼女はここに来る人間の一部と交流しているし、そうでない時も常に彼らを見守っている。それよりも懸念されるのは、あの深淵に潜む存在だ。妹を殺すことができたのなら、もし表面に上がってきた場合、彼女などひとたまりもないだろう」とゴルトゥクは言った。


「彼女の話では、あの存在は遥か深い場所に留まるのを好むようだった。それに、もしそうするつもりなら、すでにやっているはずさ。彼女は何世紀もここにいるんだ。君や僕が冷たい土の底に眠った後も、彼女はここで幸せに生き続けているはずだよ」


ゴルトゥクはくすくすと笑った。「そうだな」


「専門的な話をすれば、僕のここへの同行は君の主治医としての業務範囲内であり、守秘義務が適用される。他の皆にこのことを話すつもりかい?」


ゴルトゥクはしばし考えた。「先生とニムフェの間で起きたこととして、みんなに話すといい。私に関する話の部分は伏せておいてほしい」


アバナシーは頷いた。「質問を回避することはできるが、もし誰かから『その時どこにいたんだ』と直接聞かれた場合のために、あらかじめ答えを用意しておくべきだな」


「感謝する。ところで、先生は人間以外の患者を数多く診てきたのだろう。これまでに添い遂げた中で、最も人間からかけ離れた生き物はなんだ?」


「性的関係としてかい? まあ、明確にしておくと、僕は患者と寝たりはしないよ。それは重大な倫理違反だからね。だがもちろん、冒険者だった頃や、医師となった今でも、仕事柄あらゆる存在と会話をしてきた。そうだな、考えさせてくれ……」


やがて馬車が到着し、二人を宿へと送り返した。アバナシーは受付にいた、母性的な温もりを醸し出す褐色肌の中年女性に道具を返却した。彼はゴルトゥクと別れ、ヘルギに対してどれほどマズい状況になっているかを危惧した。これほど長引くとは予想していなかったのだ。


彼は部屋の鍵を静かに回し、中に忍び込んだ。ベッドの両脇には小さなテーブルが置かれ、それぞれのランプの中でキャンドルが灯っていた。ヘルギはベッドの上で、何も羽織らず、何も身につけずに眠っていた。彼は床を静歩した。ベッドに近づくにつれ、かすかな香水の香りが鼻腔をくすぐった。突然、キシむ床板が彼を裏切り、彼女の目がうっすらと開いた。


「本当にごめん。予想以上に長引いてしまって」


「いいのよ」と彼女は物憂げに体を伸ばしながら言った。「部屋に食べ物を持ってきてもらったんだけど、手持ちのコインがなかったから、配達の男の子に体で支払ってもらうしかなかったわ」


彼は唸り声を上げ、それからため息をついた。「まあ、そのくらいの嫌味は言われて当然だな」


彼女は片足を伸ばし、足指の先で彼の太ももを撫でおろした。「ここへいらっしゃい。あなたが受けるべきものをあげわ」






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