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過去を斬る覚悟――診療所を捨て、いざ国境へ!


「生き残るために良港や恵まれた天候を頼みにする人々もいるが、クリフトップ州に暮らす人々は苛烈な天候を神に祈る。生活環境は厳しく、住民は移動の困難な何マイルもの山々に分散して暮らしている。集落や村落は存在するものの、領主が住まう場所とて親切に言っても集落程度の規模に過ぎない。自らを『クリフィー』と呼ぶ彼らの生存を可能にしているのは、からくり(オートメーション)によって自然の猛威を手懐ける不気味なほどの能力である。州内には二つの大滝と幾つもの小滝が存在し、これらは水車を回す動力を供給するために利用されている。しかし、クリフィーにとっての真の王は風である。彼らの生存は、風車を回すに十分な強風が吹くか否かにかかっているからだ。幸いにも山々は彼らに味方し、強大で冷たい風が吹き荒れる。自身の選んだ天候神や霊に祈りを捧げる『風呼び(ウィンドコーラー)』たちも州内には今なお存在し、人々の尊敬を集めているが、部外者はその効力に疑問を投げかけている。しかし、クリフィーがはずみ車(フライホイール)とカムを発明していなければ、これらはすべて徒労に終わっていたことだろう。この二つの簡素な発明により、彼らは水車や風車からスムーズで安定したエネルギー出力を生成することが可能となり、穀物やトウモロコシの製粉機、製材機、鉱石粉砕機、ふいご、鍛造や成形のためのトリップハンマー、さらにはスウィートウォーターの集落にあるサトウキビから砂糖を抽出するための製粉機にまで動力を供給している。最大の水車は連なる大型バケットを動かし、輸入された原材料を山の上に送り届け、精製された輸出品を再び下へと降ろすのに利用されている。クリフィーは主にトウモロコシ粉、パン、そして乳と肉のために飼育しているヤギで生計を立てている。彼らのヤギのチーズは特に強烈な臭気を放ち、多くの貿易ルートを持っているにもかかわらず、私が観察した限りでは香辛料を一切輸入していないため、その料理は味気ない。過酷な生活には過酷な食べ物がよく似合うと、彼らは感じているのかもしれぬ」――『タイコロスの年代記』より


ベイツがドアを叩いたとき、出迎えたのはヘルギだった。彼は手に持った羊皮紙の切れ端に目を落とすフリをしながら、素早く彼女の全身を上から下まで視線で舐めるように眺めた。


「実にお見事な高身長ですね」彼は笑みを浮かべて言った。


「お気づきになりましたか」彼女は素っ気なく言った。「患者さんですね。生憎ですが、先生は大変多忙でして、現在はお話しする時間がございません」彼女はドアを閉め始めた。


「患者ではありません!」彼は慌てて言った。「ベイツです。アバナシーの旅の仲間で、恐ろしい呪文使いですよ」彼がニッと笑うと、彼女は彼をじっと見つめ、ドアを開けたまま奥へ戻っていった。「あなたの魔法使いが来ましたよ」彼が足を踏み入れドアを閉めると、彼女は声を張り上げた。ルシンダが角から顔を出し、彼に向かって威勢よく手を振った。「来てくれたのね、クリヴィントン?」


「勿論ですとも、ルシンダさん。最大でも三ヶ月という許可ですが、今の仕事よりもこの冒険の方が面白そうなら、どうなるかは分かりませんよ」ルシンダは彼の手を取り、みんなが荷物や装備を二重チェックしている食堂へと案内した。


「必要なことは何でもするが、みんなそれよりも早い解決を望んでいると思うぞ」レザが言った。


「そして……タカをお持ちなのですね」ベイツは目を丸くして言った。「実に興味深い。お名前は?」


「彼女の名はヌール、俺はレザだ。いま皆は気が散っているから、自己紹介は出発してからにしたほうがいいかもしれん」


「勿論です」とベイツは言った。


アバナシーが寝室から出てきて、ベイツと固い握手を交わし、軽く抱きしめた。


「来てくれて本当にありがとう。本当に感謝しているよ」


「なに、面白いことになるとおっしゃっていたでしょう。実際、すでに面白いですよ。たった今、酷く違法なことをしでかしてきたばかりで、実に爽快でした。ここで隠さずにお話ししても?」ベイツは周囲を見回して尋ねた。


アバナシーは頷いた。「今ここにいる者は全員一緒に来る仲間だ。全員信頼している」


「素晴らしい。では、高価な酒の空瓶と、それを満たすための銀貨二〇枚分のそこそこのウイスキー――あ、銀貨二〇枚の貸しですからね――そして研究室でパパッと調合した小薬を使いましてね、議員の妻を拉致したのが仮に『ブラック・マスクス』だと仮定して、奴らが彼女を監禁している可能性が最も高い場所を吐かせてやりましたよ。まだ生きていればの話ですがね」


「一体どうやってそれを? 俺は銀貨二〇枚以上をバラ撒いたが、価値のある情報など得られなかったぞ」レザは目を細めて言った。


「ノロヴィア人の殺人犯を牢屋で毒殺しかけてやったのさ。知りたいことを話さなければ、苦しみ抜いて死ぬことになるぞと脅してね。ノロヴィアのウィスパーデール近くにある農家について、詳しい情報を吐きました。でっち上げた可能性もありますが、奴は恐怖で怯え切り、ひどい激痛にのたうち回っていましたから、私は信じていいと思いますよ」


「待って、トルガシュと話したの? たった今?」ルシンダは信じられない様子で尋ねた。


「牢獄から馬小屋へ自分の馬を引き取りに行き、荷物をまとめて一直線にここへ来ました」


「一体どうやって刑務所の内部に入り込めたんだ?」レザが尋ねた。


「ああ、私は市の職員ですからね。公式の公務中だという話をでっち上げたのです。なかなか面白い話なのですが、皆様の最後の準備の邪魔をしたくありませんからね。道中でお話ししましょう」


「自分で自分を褒めちぎって腕をへし折る前に聞きたいんだが、どうやってその情報が信頼できると分かるんだ?」レザが言った。


「トルガシュは死にたくないと切実に願っているようでしたよ。偽の場所を教えたり、俺たちを罠に嵌めようとしている可能性がゼロかと言われれば、勿論そんなことはありません。ですが、私の見立てでは奴は本当のことを話していました」


「つまり俺たちは、お前の『見立て』を頼りにノロヴィアへ乗り込むわけか」レザが言った。


クリヴィントンがノロヴィアの名を口にした時、アバナシーの顔からは血の気が引いていた。そして今、彼は小さな声の震えとともに口を開いた。「行けない……ノロヴィアは、俺たち全員にとって安全な場所じゃないんだ」


「私にとって安全でない場所など山ほどある」ゴルトゥクが言った。「目的地がどこであろうと、お前たちと一緒に行きたいという私の意思が変わることはない」


アバナシーは首を横に振った。「夢を見たんだ。少し前のことだが、その夢が俺を……いや、それはどうでもいい。だが夢の中で……ノロヴィアへ越境しようとした時、お前たちの身に恐ろしいことが起きたんだ」


ルシンダは彼の手を両手で包み込んだ。「もし患者が本当に重要なことをしなければならないのに、数ヶ月前に見た夢を理由に拒否したとしたら、先生はどんなアドバイスをなさいますか?」


アバナシーは溜息をついた。「分かっている、だが……あそこは君やゴルトゥクにとって危険すぎる場所なんだ。あの夢の光景を今でも思い出せる」


「時間がありません。私がお手伝いした方が、ノロヴィアの国境に到達できる確率が高くなることくらい、お分かりでしょう。誰が国境を越えるかについては、道中で話し合えばよいのです」とゴルトゥクが言った。


アバナシーはゆっくりと頷いた。「進むべき道が分かったのだからな。素晴らしい手際だったよ、クリヴィントン。厄介なことになっていなければいいのだが」


「戻った時に分かりますよ」彼はニッと笑って言った。アバナシーの表情を見て、彼は付け加えた。「ですが、間違いなく私は白ですよ。証拠もなく、被害者は信用できず、看守たちも口を閉ざす利害関係がありますからね。心配いりません。さあ真面目な話、準備を終わらせてください。皆様の準備が整うまで、私は邪魔にならないよう大人しくしていますから」彼は部屋の隅に座り込み、彼らが作業を進める間、静かに息を潜めていた。


レザは地図を広げ、ゴルトゥクとヘルギが彼とともにそれを覗き込み、最善のルートを計画しながら、その夜体を休めるのに適した場所を探した。彼らは、旅路が特別に険しかったり危険な地域を通ったりすることはないだろうと確信している様子だった。


「それで、これはどういう仕組みなの? 《ウォッチ》が来て私たちを連行するのを待つの?」とルシンダが尋ねた。


「キュリオンが言っていたが、こうした件を担当するのは市警備隊らしい。法律上はどの門から出ようがこちらの自由なのだが、態度の悪い警備兵に当たると、一番近い門から強制的に追い出されることもあるそうだ。だから、自分たちの手でできるだけ早く出発するのが一番だろう」アバナシーは言った。


レザは地図を折りたたんだ。「では、出発しよう。みんな、武器の点検だ」ゴルトゥクは巨大な棍棒を取り出し、一通り確認した。ヘルギは自分のショートボウの点検により多くの時間を費やし、弦の張りを確かめ、矢の羽を点検し、最後にショートソードを吟味した。ルシンダは黒く塗られた小さな金属製の盾と、見るからに悪質な波刃のスティレットを持っていた。スティレットが収められていた鞘は嵩張り、革で覆われた何らかの金属で作られているようだった。彼女はレザが自分の武器をじっと見つめているのに気づいた。


「錬金術師に仕えていた短期間の名残よ」彼女は言った。「大した知識はないけれど、毒を数種類調合する方法なら知っているの。この鞘には、大半の人型生物や一部の生物にとってもかなり有毒なものが入っているわ。この波刃は、確実に皮膚を切り裂いて毒を注入するためのものよ」


レザは感心したように頷いた。「戦いを素早く終わらせる素晴らしい方法だ。俺も時々、毒には少し手を手染めたことがある」


「ベースには何を使っているんだい?」ベイツが尋ねた。


「『イヌノハナ』と『未亡人のアザミ』の乳液の混合液よ」ルシンダは答えた。「そこにブレンドを少し加えているわ」


「賢いな! その手のは瓶の中ではサラサラしているが、一度空気に触れると徐々に固まってペースト状に変化することを忘れないようにな」


「あら、それは知らなかったわ。以前よく売っていたけれど、戦い使ったことはなくて。それなら出発したら、もっと良い調合のアイディアを教えてくれないかしら」とルシンダは言った。


「もちろんだとも」


「その会話には俺も混ざりたいな」とレザが言った。


レザ自身も小規模な武器の蓄えを取り出していた。ベルトには数本の投げナイフが固定されており、隠した場所からも数本が現れた。ズボンの隠しポケットからは絞殺用ワイヤーを取り出し、細い針金を素早く点検した。両腰の鞘からは、シミターを短くしたような、ダガーよりは長くショートソードほどではない、わずかに湾曲した刃を持つ武器を抜き放った。最後に、彼は肩の革製パーチからヌールを一時的にどかすと、革の下に手を伸ばし、何らかの黒い石から削り出されたドスを取り出した。


棍棒の簡単な点検をずいぶん前に終えていたゴルトゥクは、面白そうにレザを観察していた。鷹匠が点検を終えるのを見届けると、彼は言った。「それだけ持っていれば、私の棍棒と同じくらいのダメージは与えられそうだな」


重く膨らんだ財布の紐を叩き切ろうとしている強盗のように、レザはニヤリと笑った。「俺はダメージを与えるんじゃない。ただ息の根を止めるだけだ」


「俺は息の根を止めたりはしないな、立ち去るまで頭を軽く叩くだけさ。まあ、理論上はだがね」ベイツは自分の武器を素早く点検しながら言った。彼のローブを締め上げる紐の腰の両側には革の輪が引っ掛けられており、それぞれの輪に木製のトンファーが収められていた。トンファーは警棒のようなものだが、端の近くから九〇度の角度でグリップが突き出している。棒状の部分ではなくグリップを握ることで、トンファーは円弧を描いて振り回すことができ、より強力な回転力を生み出すことができる。基本姿勢では前腕を覆う形になるため、防具としても非常に優れていた。


アバナシーは黙り込み、見事なレイピアを手にして物思いにふけっていた。必要に迫られた時には、彼はそれで戦い、命を奪ってきたが、それは遠い過去のことであり、冒険者としての短いキャリアを捨てた後は、武器を取って戦う日々は終わったものだと思っていた。強い共感能力を磨き上げてきた数年間を経て、自分はまだ生きている者を殺すことができるのだろうか? オーガやトロル、ドラゴンでさえも複雑な存在であり、自分自身でも理解していないトラウマや脆さに突き動かされていることがあると、彼は身をもって知っていた。それをすべて知った上で、なお知性を持つ生物の心臓を突き刺すことができるだろうか?


レザが彼の方へ歩み寄ってきた。「それが話していたレイピアか? 聞いていた通り見事なものだな。昔はよくお前の役に立ったのだろう。だが、もっと良い守りが必要だ。お前のことを考えて手に入れたんだ」彼はアバナシーにもう一本のレイピアを手渡しながら言った。「これは貸しだ。将来自分でも楽しむつもりだからな。だが今は、お前の役に立つだろう。その名は『ムハフィズ』だ」


レイピアの切っ先は非常に細く、ほとんど目に見えないほどだった。奇妙な鉱石を使って鍛えられたかのように赤みがかった色合いを帯びていた。十字鍔には装飾的な曲線と唐草模様が施され、中央には暗い深紅の宝石が嵌め込まれていた。柄は上質な革で巻かれ、柄頭の端にも別の深紅の宝石があしらわれていた。

「なぜ名前がついているんだ?」ベイツが尋ねた。


「歴史があるからさ」レザは言った。「道中で話してやる」彼はアバナシーに視線を戻した。「もっと重要なのは、これには二つのエンチャントが施されているということだ。もし相手に圧倒されて打ち負かせそうにない時は、『踊れ』と唱えて手を放せ。レイピアがしばらくの間自律して戦い、逃げる機会を作るか、レイピアが敵の気を引いている隙に別の角度から攻撃することができる。また『光れ』と言えば、十字鍔の宝石が狭い範囲に絞られた非常に眩しい光を放ち、敵の目を目くらましする。踊るのは何度でも可能だが、閃光は一日一回しか使えない」


アバナシーはムハフィズを手に取った。自分のレイピアよりも素材が強固でありながら、より軽やかで扱いやすいのが感じ取れた。「試してみてもいいか?」と彼は尋ねた。


レザは首を横に振った。「その刃は稽古を望んではいない、殺すことを望んでいるんだ。そしてここにはお前が殺したい相手など誰もいない。後で何か考えつくかもしれないが、今はそんな時間はない」


「そうか……この素晴らしい武器を貸してくれてありがとう。抜き放つ必要がないことを祈るが、もし使うことになっても、これなら十分に身を守れる確信があるよ」


「気前がいいのね、レザ」とルシンダが言った。「さあ、みんなの武器の準備が終わったのなら、本当に移動を開始すべきよ」


彼らは家を出た。アバナシーが最後に残り、ドアの鍵を閉めてから巻物を取り出した。


「それは単純な封印の呪文で、大したものではないわ。診療所に本格的な封印を施してくれた魔法使いから譲り受けたのよ」アバナシーが巻物の言葉を読み上げると、ルシンダが説明した。正面のドアや近くの窓から光が放たれ、やがて消え去った。巻物は塵となって崩れ落ち、アバナシーは深い溜息をついた。彼はみんなの方を振り返った。


「準備はできた。出発しよう」





ここまでのご愛読、本当にありがとうございます! 実はこの章で、物語もついに折り返し地点(全体の半分)を迎えることになりました。

ここまで物語を無事にお届けできているのも、いつも読んでくださる皆様のおかげです。

少しだけ本音を言ってしまうと……毎回の翻訳作業はなかなか骨が折れる作業でもあります(笑)。ですが、皆様からの反応や応援が何よりの原動力になっています!

もし「この作品が好き!」「続きが気になる!」と思ってくださったら、ぜひ作品のレビューや評価、ブックマークを残していただけると大変励みになります。ほんの一言の感想でも、執筆・翻訳を続ける大きな力になります。

物語の後半戦では、アバナシーが住み慣れた街や診療所を離れて外界へと飛び出すことを余儀なくされ、ストーリーのテンポもこれまでとは一味違うものになっていきます。彼がそうした過酷な環境にどう立ち向かっていくのか、そして物語の本当の結末まで、ぜひ見守っていただけたら嬉しいです!

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします!

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