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追放まであと24時間、動き出す暗雲

「『バトル』というゲームは、知られているほぼすべての言語で実質的に同じ名前で呼ばれている。学者たちの間では、標準語がこのゲームに名前を与えたのか、それともこのゲームが彼らの『バトル(戦闘)』という言葉の由来となったのかについて、今なお議論が交わされている。コボルド語には『ト』音が存在しないため、同じ状況にある他の言語と同様に最も近い近似音が用いられ、コボルドたちはこれを『バックル』と呼んでいる。駒は戦場を表す盤上に配置される。多数の一般兵、階級の異なる少数の将校、専門的な工兵や攻城兵器ユニット、そして一人の将軍が存在する。各駒はそれぞれの様式で移動し、他の駒を撃破して盤上から取り除こうとする。ゲームの目的は、相手の将軍を撃破するか、あるいは他のすべての駒を撃破することである(命令する部下が誰もいない将軍に何の用途があるだろうか?)。『バトル』の名手であることを証明した者は、同輩たちから『グランドマーシャル(大元帥)』の称号をもって称えられた。エルフのグランドマーシャルは、概して最も優れていた。彼らにはプレイし、学び、観察し、技を洗練させるために何世紀もの時間があったからである。時折、彼らも人間のグランドマーシャルに打ち破られることがあった。人間は種族特有の創造的な閃きを用いて、理論を無視しながらも最終的には成功を収めるような手を考案したからである。驚くべきことに、ゴブリンのグランドマーシャルも数人存在し、彼らは『混沌流』と呼ばれるスタイルを実践していた。彼らは時折、完全にランダムに見える手を指し、次の4手を周到に計画していた相手を完璧に困惑させたのだった。歴史には、交戦中の両国が血と財産の途方もない代償を計算した末、指導者同士による『バトル』の一戦によって紛争を解決することに合意したケースが2件記録されている。最初のケースは伝説の時代に遡るものであり、偽書(アポクリファ)かもしれないが、確実に2番目のケースの着想となったものであり、そちらは歴史家によって詳細に記録されている」――『タイコロスの年代記』より


目を覚ましたとき、アバナシーは一瞬混乱した。自分は法廷にいたはずで、それから……法廷ではないどこかへ……そして今、靴こそ脱いでいるものの完全に服を着たまま、自分のベッドにいた。食堂から声が聞こえてきた。聞き覚えのある声だった。枕元に置かれていた一杯の水を、彼は慌ただしく飲み干した。彼は頭の中のヘイズ(霞)を振り払い、帰りの道中の断片をなんとか思い出した。レザが何らかのハーブの調合物を自分に与え、家に連れ帰ってくれたのだ。


彼は恐る恐るベッドから起き上がったが、平衡感覚に問題がないことに気づいて心地よい驚きを覚えた。彼が居間へ歩いていくと、キュリオン、レザ、そしてルシンダが座っていた。目の前のテーブルにはお茶の入ったやかん、安ワインのボトル、そしていくつかのマグカップが置かれていた。


「お起きになられて良かったです、ボス」とルシンダが言った。


「どれくらい眠っていたんだ?」と彼は尋ねた。


「長くなのさ。せいぜい1時間だ」とレザが言った。「お前がリラックスしていたならもっと長かったかもしれないが、お前の心が抱えていたストレスを考えれば、少しでも眠れただけ幸運だったな」


「法廷のことは覚えている。帰り道の部分は曖昧だが」


「それは数時間で消える。帰りの道中では何も起きなかったぞ」


「ともかく、無事に連れて帰ってくれてありがとう。自分がひどい状態だったのは覚えている」


「ああ、まったくその通りだった」とレザが言った。「だがお前は俺の面倒を見てくれる。だから俺もお前の面倒を見るのが嬉しいのさ」


「少し心を落ち着かせる時間が欲しいか? それともすぐに本題に入りたいか?」とルシンダが尋ねた。


「どういう意味かはっきり分からないが、意識ははっきりしている」


彼女は膝元に手を伸ばし、そこに置かれていた巻物を取り上げた。「あなたへの手紙です。もちろん、私たちは開けていません。上等そうな見た目ですよ」彼女はそれを彼に手渡した。


巻物は2つの封印で閉じられていた。1つ目は市議会の公式封印。2つ目は見覚えのない小さく個人向けな封印だったが、それが誰を示しているのか彼は容易に想像がついた。彼は注意深く封印を破り、書状を広げた。案の定、それはエデルマン議員からのメモだった。


『アバナシー医師:私個人はお前に対して何の悪意も抱いてはいない。本日法廷で見せた私の熱意は、お前がテペシュの忠実な友人であることを罰するためではなく、この件の真相を解明し、もし被害者が生きているのであれば救出したいと心から願っているからだ。お前がこの事件の推進において極めて重要な情報を持っていると私は固く信じている。明朝法廷に来て、テペシュとの対話について完全かつ真実の記録を提供せよ。お前に対するすべての制裁と処罰は取り消され、お前は良好な地位にある市民にとどまることができる。正直に言えば、私個人はお前の仕事内容を信じてはいないが、お前が市の利益となる形でいくつかの事態を解決する手助けをしたことは知っている。私としてもお前が追放されるのは見たくないが、サファイア・シティにとどまりたいのであれば、他のすべての市民と同じ法律に従わねばならない』


署名は彼の苗字だけだった。


アバナシーはそれを数秒間見つめた後、丸めてゴミ箱へと投げ捨てた。


「当ててみせよう」とキュリオンが言った。「エデルマン議員からのメモだな。立派な市民となり、市のために最善を尽くすよう促す内容だろ」


「ご当選!」 とアバナシーは言った。縁日の露店で客が景品を当てた時の呼び込みの真似だった。その言葉を発した瞬間、彼は陽気な気分を感じたが、同じくらい素早く、再び惨めな気分へと戻ってしまった。


「思慮深い反論の文面をしたためましょうか?」とレザが尋ねた。「ちょうど俺の尻の非常に風流なスケッチがあるんだが、それを奴に送ってやってもいいぞ」


「レザ!」とルシンダが叫んだが、こらえきれずにブタ鼻のような笑い声を漏らした。彼女は身なりを整えた。「どうして自分の尻のスケッチなんて持っているの?」


「どちらかといえば、作者が誰なのか気になるな」とキュリオンが素っ気なく言った。「自画像かね?」


「両方の質問への答えは、名門花嫁学校での私の短い執事時代の物語に含まれている。私は若者たちのクラスに鷹狩りを教えていたのだが、屋外のグラウンドは自然の風景を描く練習をしていた女性たちのクラスと同時に使われることがよくあってな。何度か、ヌールが彼女たちのモデルになったのだが……まあ、その先の物語は自ずと分かるだろう」


短い沈黙があった。「よく似ているの?」とルシンダが尋ねた。真面目な顔を保とうと最大の努力を払いながら。


「私自身で言うのは難しいがね。だが、恐ろしく似ているという確かな筋からの情報がある」


アバナシーはクスッと笑い始めたが、すぐにまたひどい気分になった。「レザ、法廷で僕に何を与えたんだ? 幸せな閃光を感じたかと思えば、また惨めで恐ろしい気分に戻ってしまう」


「ザルタというものだ。ごく短時間、何も感じなくさせて気分を平坦にしてくれる。人によっては音や匂いが強く感じられるようになるが、より心地よく感じられる。とても心を落ち着かせるので、身を委ねれば眠ってしまうほどだ。あいにく、副作用の一つとして、効き目が切れる時に急速な感情の動揺を経験する者がいる。だが、それは数時間以上は続かないはずだ。すぐに良くなるさ」


アバナシーはうずいた。「数時間だけで済むならいいが。感情がコントロールできなくなることには慣れていないし、こんなに早く変化するなんてなおさらだ。うまく抑え込むことができないんだ」


「さて」キュリオンは心ここにあらずといった様子で指先でテーブルをトントンと叩きながら言った。「申し訳ないが、そうして何時間も待っている余力はないと思う。すぐに行動計画を立てて、今すぐに始めなければならない。それから、検察官側が一種の目玉証人を立てていることも知っておくべきだ。もっとも、彼女が実際に何かを目撃したわけではない以上、その表現が適切かは怪しいがね。テペシュの妻の親友が証言を行い、アンドレアが何度か、テペシュが自分の浮気を疑っているのではないかと心配していたと語ったそうだ。彼女はテペシュを嫉妬深く、過剰に束縛する夫として描き出したのだよ」


アバナシーは首を振った。「コルベットが何らかの形で関与しているとは思っていたよ」


「私に言わせれば、それでもなお極めて弱い立証だ。だが今は、自分自身の状況に集中する必要がある」


ルシンダが言った。「オフィスを出る前に、今後2日間に予約のあった皆様へ飛脚を送り、緊急事態のため休診となる旨をお伝えしました。すべての患者様にご連絡したかったのですが、そのお知らせはアバナシー様がご自身で書かれたいだろうと思いまして。きっと、特定の言い回しが必要でしょうから」


「間違いなく自分で書くべきだね」とアバナシーは言った。「素晴らしい配慮だ、そしてここ数日の患者への対応もよくやってくれた」


キュリオンは咳払いをした。「より大きな局面を見れば、好むと好まざるとにかかわらず、ある意味で君の運命はテペシュの運命と結びついている。証拠と呼べるものがあるとしても、あまりにも希薄で、彼が有罪判決を受けたら私はショックを受けるだろう。本来ならこの予備聴聞会すら通過すべきではないのだが、エデルマンが裁判を強く要求しており、主席検察官もそれに従うことに満足しているようだ。仮に起訴が取り下げられたとしても、予備聴聞会が開かれたという事実だけで彼のキャリアを終わらせるのに十分なスキャンダルとなる。彼に有罪が立証された場合――可能性は低いがゼロではない――君は最悪の立場に立たされる。市議会における最大の後盾を失うことになり、裁判所による禁令を解除してもらう手立てはほぼなくなる。君の市民権聴聞会はきわめて惨憺たる結果になるだろう。仮に彼の無実が証明されたとしても、裁判は彼にダメージを与え、彼の妻の失踪が続いていることがそれを悪化させるばかりだ。エデルマンはテペシュを辞任に追い込むことまではできないかもしれないが、彼の権力基盤の多くを削ぎ落とすだろう。有罪判決のように君の市民権聴聞会にとって決定打(キラーブロー)とはならないにせよ、テペシュは君を助けられるような立場にはいなくなる」


「それなら、僕たちはテペシュの無実を証明するために動くべきですね。あるいは、ほら、彼がそのために雇った誰かに協力するとか。オフィスで患者を診ることはできませんが、ミーティングをしたり、活動を調整したりするための本部として使うことはできます……そういったことなら」とルシンダが言った。


「僕たちがテペシュの無実を証明するのにどれほど効果的かは分からないが」とアバナシーは答えた。「いずれにせよ、僕の家を使ってもらったほうがいい。市民権聴聞会までは追放されることになるから、家を使うことはないしね。患者の記録に誰も立ち入れないよう、魔法使いにオフィスを封印してもらうつもりだ。それから、ソファを誰にも盗まれたくない。あれを買い替えるのはとても大変だからね」


「キュリオン、アバナシーが聴聞会を受けるまでにどれくらいかかりそうなの?」とレザが尋ねた。


法廷弁護士はため息をついた。「読みにくいな。市民権聴聞会は重大な事案であり、上級裁判官しか審理を主宰することを許されていない。ここでの裁判所のスケジュール構成を考えると……そうだな、3週間未満で行われた例を見たことがないし、日程が組まれるまでに6週間かかったのを見たこともある」


「なあ、もう一つの選択肢があるぞ。遥かに危険だが、かなり良い結果が得られるものがな」とレザが言った。


まさにその時、表門を激しく叩く音が響いた。レザは腰から短剣を抜き、ドアに向き直った。ルシンダとアバナシーはキュリオンを見た。エルフは眉をひそめた。「追放までの24時間の猶予期間は法律で固く保障されている。それ以前に追い出されるようなことがあれば前代未聞だ。当局の人間がドアの前にいる可能性は低い」


レザは姿勢を緩めたが、ほんの少しだけだった。ヌールは明らかに彼の動揺を感じ取っていた。ハヤブサは何度も羽を動かし、体を膨らませた。「アバナシー、寝室へ行って隠れる場所を見つけろ。誰であれ、お前はここにいないと伝える。ルシンダ、お前がドアに出ろ。俺は潜んで待つ……念のためにな」


アバナシーは躊躇した。「行け」とレザが威嚇するようにささやいた。


鷹匠は表門の近く、建物に入ってきた誰からも身を隠せる位置についた。ルシンダはドアに近づいた。そこでは新たなノックの音が始まったばかりだった。


「どなたですか?」と彼女はドア越しに声をかけた。


「ゴルトゥクだ。そこにおわすのは……ルシンダか?」と返答があった。


ルシンダは安堵のため息をついた。「レザ、出てきて。お友達よ」彼女はドアを開けた。「こんにちは、ゴルトゥク。どうしたの?」


「お前からの手紙を受け取ってな」とミノタウロスは一片の羊皮紙を掲げて言った。「緊急事態だと書いてあったゆえ、医師が無事かどうか確かめたかったのだ」


「ああ、ええ、彼なら大丈夫ですよ。無事です。ただ……ちょっと大変なことが起きて……そう、皆様には明日改めて説明の手紙をお送りする予定だったんです」


「我は今ここにいる。ならば直接我に説明してもらえばよかろう。お前が『緊急事態』という言葉を軽々しく使わぬことくらい分かっている」ミノタウロスは真っ直ぐな視線をルシンダに向けた。


「彼は今ちょっと忙しくて、あー……休んでいるところで」ルシンダは弱々しく言った。ゴルトゥクの視線が、隠れ場所から現れ、短剣を鞘に収めたレザをとらえた。


「眠っているならば、見知らぬ男がなぜ彼の家にいるのだ?」とゴルトゥクは声に硬さを滲ませて尋ねた。


「ええと、それはアバナシーの……あー……もういいわ! アバナシーから直接説明してもらって、それから緊急事態に戻ってもらったほうが手っ取り早いです」とルシンダは言った。「彼を呼んできますので、どうぞ中に入っておくつろぎください。こちらがレザで、奥の部屋にいるエルフがキュリオンです」ルシンダが医師を呼びにいく間、レザとゴルトゥクはお互いの品定めをした。


「狩りをするのだな」とゴルトゥクは家に入り、後ろのドアを閉めながらハヤブサに頷いた。


「ああ」とレザは言った。「ヌールは実に筋がいい。俺自身も悪くはないが、彼女と一緒に組むほうがずっと楽しいのさ。俺たちはいいコンビだ」


「我はより大きな獲物を好む。我が棍棒は小動物などペーストに変えてしまうからな」とゴルトゥクはさりげなく言った。


「実に大きな棍棒をお持ちのようだな」とレザは挑発と受け取られるかどうかを窺いながら、平然としたトーンで言った。彼がそれを確かめる前に、アバナシーが急いで部屋に入ってきた。


「ゴルトゥク! 会えてとても嬉しいよ」


「相変わらずだな。五体満足で、健やかそうな姿を見られて安心したぞ」


「様子を見に来てくれて本当にありがたい。僕の緊急事態の性質について、ちゃんとお知らせできなくてすまなかったね」とアバナシーは言った。


ゴルトゥクは喉の奥で濁った音を立てた。「構わん。ここに来るくらい造作もないことだ。して、何が起きたのか話してもらおうか」


アバナシーは頷いた。「居間へ来てください、腰掛けましょう。かいつまんで説明します」言葉を慎重に選びながら、アバナシーは自分の患者に起きたことの短縮版を伝えた。彼はゴルトゥクの反応を伺うため、じっと見つめた。自分の意志に反したものであり、自分に落ち度がないとはいえ、一部の患者はこの突然の離別を自分たちを見捨てたことだと捉えるだろうと彼は知っていたのだった。


「このような扱いを受けるあなたを見るのは」ゴルトゥクはゆっくりと怒りを込めて言った。「腹が立つ。あなたはこれほど多くの人々を助けているのに、まるで犯罪者のように扱われている。そこに正義も公理もない。それどころか、あなたはこの街の英雄だというのに!」


「僕は堂々と裁判所に逆らったからね」アバナシーは穏やかに言った。「何らかの罰を受けなければならないことは分かっていたよ。ただ、これほど厳しいものになるとは予想していなかったが」言葉を発しながら、彼は胃のあたりにむかつきを覚えた。


「済んだことは仕方がない」とゴルトゥクは言った。彼は部屋を見回した。「察するに、この集まりは行方不明の女性の捜索について話し合うためだな?」


「実は」とレザが言った。「お前がドアに来た時、まさにその問題を提起しようとしていたところなんだ」


「ならば我が来たタイミングは完璧だったな。勿論、我も同行するぞ」とミノタウロスは言った。


「待ってくれ、何だって? 落ち着いてくれ。アンドレアがまだ生きているとしても、僕たちには彼女の居場所なんてさっぱり分からないんだぞ」とアバナシーは言った。


「彼女が死んでいるなら、お前はおしまいかもしれない。だが生きているなら、彼女を見つけることこそがお前の問題に対する最善の解決策だ」とレザは言った。「まず第一に、それで裁判の件は決着がつく。テペシュは非常に同情的な立場に置かれ、冤罪を着せられた者の正当な憤りと権力を手にすることになる。さらに重要なのは、市会議員の妻を救出した人物の市民権が取り消されるなんて事態を、世論が黙って許すはずがないということだ。あの殺人者たちを阻止したお前の役割を考えればなおさらだな。裁判所は引き下がらざるを得なくなり、営業ライセンスも復活させるはずだ」


「私もそれらの点には完全に同意する」とキュリオンは言った。「だが不運にも、その計画は我々を不快な疑問へと導くことになる。もし本当に行方不明の女性を見つけたとして、彼女が死んでいたらどうする? さらに最悪なのは、彼女が生きていて、自分を誘拐させたのはテペシュだと証言したらどうするのかね?」


レザは一瞬言葉を詰まらせた。「そうだな……もし死んでいるなら、アバナシーをそこから何リーグも遠ざけておかねばならん。もし生きていてテペシュを名指ししたなら……まあ、テペシュにとっては災難だが、アバナシーが市会議員の妻を救ったという事実には変わりない。テペシュは世論の同情を利用できないかもしれないが、彼の妻ならできる。助け出されたことへの感謝から、彼女は少なくとも医師の生活を元に戻すよう市に圧力をかけてくれるはずだ」


「彼が何らかの形で関与しているとはとても思えないがね」とアバナシーは言った。「だが、彼女を救出することにデメリットはないように思える。ただ……ほら、彼女がどこにいるのか、どこから探し始めればいいのかさえ僕には分からないし、すでに死んでいる可能性を示唆する血塗られたナイフがあるという事実を除けばだが」


「テペシュがこの件で疑われている理由の一つが、この失踪があまりにも異様だからだという点も指摘しておかねばなるまい」とキュリオンは言った。「もし彼が関与していない殺人だとしたら、遺体はどこに隠されたのか? 彼が仕組んだのではない誘拐だとしたら、身代金の要求はどこにある? 市会議員の妻の誘拐に伴うあらゆる厳しい追及を招きながら、利益を得ようとも、その他の要求を突きつけようともしない者がどこにいるというのだ? そして当然ながら、彼女の親友が嫉妬からテペシュが殺したのだと告発していることも状況を悪化させている」キュリオンは首を振った。「これが本当に外部の者による仕業だとしたら、彼らの正体どころか、動機さえ我々には分からないのだ」


「まあ、分かりやすい動機なら一つありますよ」とルシンダは少し唇を噛みながら言った。「誰かがまさにこの状況を作り出すためにアンドレア様を誘拐したか、殺害したのかもしれません。テペシュ様を法的追及に晒し、殺人犯として裁かれる可能性を突きつけ、恥をかかせ、再選に出馬できないことが確実になるようにです」


「彼には何人か敵がいた。言葉を少し大雑把に使っているが、彼をそれほどまでに憎み、そこまでやるような者がいるとなると、僕は――」アバナシーははっと口をつぐんだ。「ただ、それは実りある調査の道筋ではないと思う、とだけ言っておこう」


「だが、認めるがいい。それは実に素晴らしい復讐の形ではないか」とゴルトゥクが言った。


「確かに。だが一体何のための復讐だ?」アバナシーは答えた。「これほどの意趣返しを要求されるようなことを彼がしたとは思い当たらない。エデルマンはこの不幸に乗じるのを喜んでいると思うが、彼がこれを仕組んだとは思えないな」


「最近、物議を醸すような投票があったのでは? あるいはこれから控えている投票で、彼がすでに自分の立場を明らかにしていたようなものは?」とキュリオンが尋ねた。


レザは頷いた。「調べてみる価値はあるな。そうしたことはすべて公的記録にある。それにこれから控えている物議を醸しそうな投票については、彼の助書官が知っているはずだ」


「知っているだろうね」とアバナシーは言った。「そして彼はテペシュのスケジュールを管理しているから、僕がテペシュの腹心であることを知っている。僕が尋ねれば教えてくれるはずだ。僕の知らない敵についての情報も持っているかもしれない」


「彼はお前には打ち明けるかもしれないが、俺たちの誰かに打ち明ける可能性は遥かに低いな。お前にはこの街に残された時間があまりない。今夜中にその助手を見つける必要があるぞ。彼がどこに住んでいるか知っているか?」とレザが尋ねた。


アバナシーは首を振った。「だがテペシュの家に行けば、彼の家令が知っているはずだ。今頃は彼も今日法廷で何が起きたか耳にしているだろう。以前なら僕と話すのをためらったかもしれないが、今なら話してくれると思う」


ルシンダが立ち上がった。「では私とあなたで彼の家へ行き、助手がどこにいるか尋ねましょう。レザ、あなたは――」


「悪いが、俺には追うべき手がかりがある」とレザも立ち上がりながら言った。


「分かりました。キュリオン、数時間ほどこの家に残ってもらうことはできますか? アバナシー様を探してご友人や患者様が訪ねてくるかもしれませんし、皆様にパニックを起こしてほしくないのです。私たちが戻るまで、中で待っていただくのは歓迎ですから」


「私の時給を考えれば、留守番をさせたくはないだろうがね。だが、数時間業務を離れて手助けすることにしよう」と彼は小さな笑みを浮かべて言った。


「我が役に立てることはあるか?」とゴルトゥクが尋ねた。


「アバナシー様、外へ出て馬車を拾ってください」とルシンダが言った。「すぐ後ろに行きますから」彼が出ていくとすぐに、ルシンダはミノタウロスに向き直った。「街の北端の近くにある、ステップの馬上民のキャンプの場所を知っていますか?」


「ああ、一度か二度、取引をしたことがある」


「そこへ行って、ヘルギ・ピュアブラッドという女性を探してください。何が起きているのかを彼女に個人的に説明してほしいのです。必ず、私がアバナシー様に内緒であなたを遣わしたのだと伝えてください。それが重要なのです。もし彼女があなたについてここへ戻ってくると決めたなら、それで構いません。もし戻らないなら、それ以上追及せず、お一人で戻ってきてください」


「すぐに出発しよう」と彼は言い、巨体を持ち上げると椅子が感謝の悲鳴をあげた。


「留守をお願いしますね」とルシンダはドアへ向かいながらキュリオンに言った。彼は頷きで返し、革の鞄から本を取り出すと、読書をするために腰を落ち着けた。


アバナシーは運良く通りかかったばかりの馬車を見つけることができ、ルシンダが出てきた時にはすでに乗って待っていた。彼女は乗り込み、彼の隣の席に腰を下ろした。馬車はそれなりの音を立てていたが、彼女は彼の耳元でささやくほうが賢明だと考えた。


「あなたがご自身の患者様や治療院のことを考えているのは分かりますが、今は生き残ることを考える必要があります。資材、食料、装備、地図、そして野宿をしなくて済むようにこの地域の評判の良い宿屋のリストが必要です。コインも要りますし、それを隠すうまい方法も必要ですよ」


「冒険者時代のもので取ってある道具がいくつかあってね。緊急用のキットを用意してあるんだが、せいぜい数日分の要求を満たす程度のものだった。だから間違いなく、もっとしっかり調達をし直す必要があるな」と彼は言った。


「あなたのご自宅に戻ったら、自分の家を施錠して少し整えるために、一時間ほど抜ける必要があります」


「ルシンダ、君は僕と一緒には来られないよ。とても危険なことになるかもしれないんだ。自分がどこへ行くのかも、どんな状況に飛び込むのかさえ僕には分からないんだから」


「だからこそ、私が必要なのです。それに、私たちは今仕事中ではありませんから、包み隠さず言わせていただきますが、私を置いて行かせるなんて絶対にあり得ません。私について行きますし、あなたは止められませんよ」彼女の顔はこわばり、その瞳には強い決意が宿っていた。


アバナシーはため息をついた。「仕事と個人的な感情を混同しないようにしているんだが、君は僕の使用人であるだけでなく、親しく大切な友人だと思っていることは当然知っているだろう。もし君の身に何かがあったら、僕の心は砕け散ってしまうよ」


ルシンダの唇が微かに震え、彼女は視線を逸らした。「私もあなたに対して同じように思っています。あなたはこの世界で私が最も信頼し、大切に思っている人たちの一人です」彼女は目を拭いながら言った。「だからこそ、ご一緒しなければならないのです。私も、あなたの身に何か起きるのを放っておくわけにはいきません」


アバナシーは彼女の肩に優しく手を置いた。「それなら、お互いに見守り合わなければならないようだな」


彼女の尾が彼の手首に巻きつき、彼の手を自分の肩へとより強く押し当てた。「いつだってそうですわ」と彼女は言った。


道中の残りの時間は二人とも静かだった。テペシュの家に着くと、彼らは訪問の趣旨を説明した。門衛は二人を待たせ、鐘を二度鳴らした。ほどなくして、一人の男が正門にやってきた。彼は背が低くがっしりした体格で、明らかな太鼓腹であるにもかかわらず、手足にはしっかりと筋肉がついていた。肌は深い黒色で、頭は丸坊主だった。あごの下の無精ひげが一種のヤギひげを形成していた。彼はゆったりとした白いローブとサンダルを身につけていた。


「当家の家令、オロドンと申します。何のご用でしょう?」


「今日、法廷で何が起きたかはお聞きになっていると思います。僕はテペシュの友人であるアバナシーです」


オロドンは突如として微笑んだ。「我が主の真の友人とお見受けします。この暗い時期に、味方にお会いできるとは心強いです、アバナシー医師」


「僕もだよ、オロドン。こちらは僕の助手のルシンダだ」


オロドンは辞儀をした。「お目にかかれて光栄です。これほど偉大な主にお仕えできて幸運ですね」


ルシンダは微笑んだ。「耳にしている限りでは、私たち二人とも偉大な人物に仕えているようですわね」


オロドンは頷き、その笑みを消した。「左様です。だからこそ、近頃の出来事には胸を痛め、戸惑うばかりなのです」彼はアバナシーに向き直った。「勿論、今日起きたことは聞き及んでおります。深い同情を申し上げます。あなたの行動は、あなたが真の友人であり、疑いようのない高潔な人格の持ち主であることを証明しています」


「僕はただ自分の仕事をしただけですよ」とアバナシーは気まずそうにし、それを表情に出しながら言った。「誰しも自分の従うべき規範を持っています。あなたもテペシュとの信頼を破るようなことはしないはずだ」


「命に代えてもしません」とオロドンは言った。


ルシンダは咳払いをした。「アバナシー様がこの街を去らねばならない時まで、あまり時間がありません。私たちが何かに力を貸していただけないかと思いまして」


「何なりと」とオロドンは答えた。


「私たちは、誰がテペシュ様にこのようなことをしたのか、そしてその理由を突き止めようとしています。彼が最近、物議を醸すような投票を行っていないか、あるいは重要な投票が控えていないかを確認するのが賢明かと考えましたの」


「勿論、主のお仕事の詳細については幾らか知っておりますが、私の仕事は屋敷の管理であり、彼の立法上の不都合を扱うことではありませんからな」


「分かっています」とアバナシーは言った。「ですが、彼の助手がどこに住んでいるか教えていただけないかと思いまして。今すぐ彼に会いに行きたいのです」


「ソロブリオンですか? 住所をお書きしましょう」彼は筆記具と羊皮紙の切れ端を探してローブのポケットを探り始めた。


「テペシュ様に敵がいたかご存知ですか? 彼を傷つけようとしたり、信用を失墜させようとしたりするような人物は?」とルシンダが尋ねた。


オロドンは書きながら首を振った。「裏社会との繋がりも、腐敗も、疑わしい投資も、借金もありません。時折ここに届く贈り物も、他愛のないものばかりです――果物の籠や、奥様への花束といったものでしてね。宝石のついた指輪や金の像などではありませんよ。彼は時に……感情的になりすぎることはありますが、それが怒りとして表現されるのを見たことはありません。敵についてや、誰かとの特別なトラブルについて口にしたこともありませんでした。他の市会議員に対して苛立ちを見せることはありましたが、それは仕事の一部であると理解しております」


「この質問でお気を悪くされないでいただきたいのですが……奥様には敵がいらっしゃいましたか?」とルシンダが尋ねた。


「アンドレア様ですか?」とオロドンは疑わしそうな声をあげた。「公務員の給料が許す範囲で、市会議員の配偶者としての贅沢な生活を楽しんでいらっしゃったと言って、誤解なさらないでくださいよ。ですが彼女は陰謀に関与してもいませんし、この街の社交界の背刺し文化に参加することもありません。ワインを飲みすぎた時以外は穏やかな性格で、それもめったにないことです。テペシュ様を支えておられましたが、評議会の仕事にはほとんど関心がありませんでした。彼女を傷つける理由があるとすれば彼に到達するためだけであり、誰がそんなことを望むのか私には分かりません」


アバナシーは頷いた。「僕も、誰がこんなことをしたのかさっぱり分からない。ソロブリオンが何か情報を持っていればいいのだが。ルシンダが言ったように時間がありませんので、残念ですが失礼しなければなりません」


「最後にもう一つだけ」とルシンダが言った。「あまりにも当然で、不躾かもしれない質問をするのは心苦しいのですが……どなたか死霊術師(ネクロマンサー)を通じて……アンドレア様にコンタクトを試みた方はいますか?」


オロドンの表情が陰った。「私が試みましたが、成果はありませんでした。亡くなったばかりの者は、自身の状況の変化にまだ慣れていないため、連絡を取るのが非常に難しいと聞いております。そのような手段で新しい霊に連絡が取れるようになるまで、数週間かかることもあるそうです。あるいは、彼女がまだ生きているという可能性もありますが」


彼はアバナシーに手を差し出し、アバナシーがそれ握ると、背の低い方の男は彼を引き寄せて力強く抱きしめた。「私の声が神々に届くほどの重みがあるかは分かりませんが、神々があなたを見守り、無事でいさせてくださるよう祈っております」


「ありがとう。僕たちのために、何か答えが見つかることを願っているよ」


オロドンは彼を解放し、小さな羊皮紙の切れ端を彼の手に押しつけた。「こちらが住所です。急いで、そしてご幸運を」


別れの言葉がもう一巡始まる前に、ルシンダはアバナシーの肩に手を置き、彼を門の方へと優しく押した。通りに戻ると、空の馬車が通りかかるまで10分ほど待たねばならなかった。二人は乗り込み、アバナシーは御者に住所を見せた。御者は鼻を鳴らし、紙を返すと手綱を払い、馬を進ませた。


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