005 その身に秘めたる力
…従魔たちの能力がどのようなものなのか、召喚した者たちの中には召喚時にある程度分かっている者もいる。
だがしかし、実際に見るのと行うことでは違うものもあり、どれほどのモノなのか改めて確認する必要があるだろう。
ゆえに、この学科での最初の内容は、従魔たちによる模擬戦。
実戦では彼らの主が騎乗している状態で戦うことになるのだが、今回に限っては従魔自身に考えさせ、自ら戦ってもらうのである。
指示が無い状態で、単純な実力だけでどれだけのものがあるのか、分かりやすいものではあるが…だが、シンプルな方法だからこそ、その光景はより異様に見えるのだ。
「うぉいうぉい、嘘だろ、マジか」
「ま、負けるなゴリランドゥ!!お前の怪力ならちょっと掴むだけで勝てるはずだ!!」
【ウッホウホィイイイ!!】
ドラミングをしながら力を高める、巨大な剛腕を持つグレートコングのゴリランドゥ。
この従魔たちが集う中では、1、2位を争うパワーファイターな従魔に見えなくもなかったが…その優位性は今、瓦解していた。
【ウゴホホホホホホホ!!】
【…なるほど、結構強い力ですね。ですが…】
【ウホォウッツ!?】
真正面からの拳に対して、より小さな手で抑え込んでいるのはハクロの姿。
蜘蛛の部分ならまだしも、人型の華奢なその細腕で、誰があの剛腕を受け止められると想像できただろうか。
【このぐらい、私の姉たちの方がもっと物理的に重かったので問題ないです】
ブォォンッツ!!
【ウホボウォンッツ!?】
ドッゴォォォォォォォンッツ!!
「ゴリランドゥーーーーーーーー!?」
「うっそだろマジか、正面から投げ飛ばしたんだけど!!」
「柔よく剛を制すとかそういうのじゃなくて、ガチでかよ!?」
まさかの見た目のパワーファイター以上の、内に秘めたる強靭さに周囲の生徒たちの目は丸くなる。
「わぉ…ハクロ、マジで強かったんだ」
【ええ、そうですよ主様!!私、こう見えてもパワーとスピードだけは、姉さんたちと同じぐらいありましたからね。流石にタフさなどは負けましたが…】
ぐっと力こぶは見えないけど、こぶしを握り締めて自信満々にそう告げるハクロ。
先ほどからの模擬戦で、他の従魔たちとは並外れた力を見せつけていたので、その言葉に嘘偽りがなかったことがよくわかるだろう。
「本当にすさまじいな、君の従魔は」
「あ、グラビディウス先生。…やはり、そうですか?」
「間違いないだろう。従魔騎兵団学科に、見た目だけは向いていなさそうに見えて、その実中身が適性有り過ぎだな…」
【グォォンッツ…】
先ほどから他の人の従魔も相手取って、連勝を重ねるハクロの姿を見て、グラビディウス教師はそう告げる。
「本当になんというか…」
(…いや、本当に予想以上の強さだな)
長年、この学園の従魔騎兵団学科で講師を務めているグラビディウスは、心の中でハクロの強さを見て畏怖すら抱いていた。
様々な従魔たちの中で、人にかなり近い容姿をした異質な従魔。
魔物に対抗するための、異界から呼び出される存在だからこそ、時には人の常識の範囲外からくるものがいてもおかしくはないとはいえ、彼女の実力が並の従魔と比較して桁外れに大きすぎるのである。
(一線を画すほどの力を持つ従魔となると、本来は竜種が該当するが…あの下半身からわかるように、アラクネもとい蜘蛛は本来虫の従魔…それならば普通は、糸でのからめ手などの戦闘ができるとはいえ、決して戦闘向きではないはずだ)
従魔には様々な種類があるが、これまで見てきた経験上では、ハクロのような見た目をした従魔は、隠密性などの生存に向いたものが多いはず。
だがしかし、そんな経験を見事にあざ笑うかのように、彼女の持つ力は何もかも叩き潰すほどのモノだ。
【ふふふ、どうですか主様。私も竜種に負けないほど、力がありましたよ】
「比較するのはさておき…確かにあったな」
(いや、あり過ぎるだろう!!)
ほめてほめと言わんばかりに、主であるルドラのもとへ駆け寄り、にこやかに笑いながら報告するハクロの姿に対して、内心ほぼ同じことをその場にいる皆がツッコミを入れていることが感じ取れるだろう。
そのありようは人懐っこい大型犬のように見えるが、見られる内側の力は竜と言っても過言ではない。
「いったい、何者なのだ、彼女は…」
教師生活をして長いとはいえ、これほどのモノを見たことが無い。
グラビディウスは思わずそうつぶやくも、その答えは今すぐに出ないのであった…
ちょっとした力を見せた、ハクロ
とはいえ、なんと言うか徐々に、彼女本来の部分が出てきたようにも見えなくはない
まぁ、その力は良いものも呼べるが…次回に続く!!




