004 押しの子
「さて、召喚の儀式から一夜明け、各自学科も申請済…その中で、当学科である従魔騎兵団学科を選択してくれたことを心から歓迎したいと思う!!」
学園内の一角…大きく開かれたグランド内で、そう声を上げるのはこの学科の主任であるグラビディウス教師。
彼の従魔フレイムライオンに騎乗しながら、その場にそろった生徒たちを見渡す。
「魔物相手に戦うのが、従魔騎兵団!!召喚された従魔で魔物と戦うのならば、騎乗せずともいいのではと思う者もいるが、そうはいかぬ!!」
魔物相手に対抗できる手段が従魔だが、彼らだけを戦わせても意味がない。
そもそも、人間自身が攻撃できるのならば、強力な武器を扱うなりして討伐すればいいという声もあるだろう。
だがしかし、世の中そんなに甘くはない。
魔物には、確かに人間の作った武器が通用しないわけでもない。
だがしかし、剣や槍、その他様々な武器で傷をつけたとて、魔物は再生能力が優れているらしく、簡単に治ってしまう。
致命傷を与える決定打にはならず、どうしてそうなるかに関しては、魔物自身が身に纏う瘴気が何らかの作用を与えているのではないかと言う研究もある。
そこに、決定打を与えるのは…従魔たち…もとい、異界から呼び寄せた、この世界の理とは異なる魔のモノだ。
魔物と同じように見えて、何かが根底から異なっているらしく、そのおかげで彼らの攻撃であれば、魔物たちへの有効な攻撃手段になるのだ。
「けれども、従魔だけでは効率的にはできず、魔物の中には獣の知恵以上のものを有する者もいる。そこでだ、我々が、従魔たちを呼び出した召喚者たちが、足りない部分を補う。騎乗し、常にそばにいて指示をすることによって、より一層的確に戦うことができるだろう」
ゆえに、従魔騎兵団と言うものが存在しており…彼らが一番、魔物たちへの対抗手段となりえるからこそ、最も求められる立場になる。
まぁ、中には戦闘向けではないからこそ、騎兵団ではない別の学科に向かう者もいるが、それもまた従魔を持つものとしての道の一つだ。
召喚した従魔といかにして付き合うのか…呼び出したからこその責務も、その人自身に付きまとうのである。
何にせよ、そういう理由もあってかこの従魔騎兵団学科にそろう従魔たちもまた、強そうなものも多い。
一般的な騎兵に見えなくもないが、あふれ出る筋力の熱量がすさまじく常に周囲が揺らぎを見せるグレートホース。
激しいドラミングで誇示しながら、鋼の拳で粉砕しまくるメタルゴリィラ。
大空を行くのならば何のその、そのペラペラな布地でからめとり、上から叩き落とすフライトペーパー。
その他様々な従魔の姿もあるが…なんといっても、本来ならばさらに上の、竜の従魔がいればより一層華やかだったに違いない。
だがしかし、そんな質実剛健の強靭粉砕大喝采と言えるような見た目をした従魔たちの中で…彼女の姿だけは浮いていた。
【ふむ…皆さん、中々強そうですね】
【グギャァァァス!】
【ほうほう、貴方たちも自分も強いと…負けていられませんね】
「…なぁ、思いっきり場違いと言うか、あの集団の中で美女がにこやかに、他の従魔と通じ合っている光景は何だろうな」
「美女と魔獣とかいう本を昔読んだが、その魔獣大量版の光景に見えるな」
「良いのかアレ。と言うかまず、戦闘に向くのかあの人」
ゴリゴリの肉体派の塊のような従魔たちと和気あいあいとにこやかに会話に花を咲かせている、ハクロの姿。
彼女の様子に対して、周囲の声が思いっきり聞こえるが…これは仕方がない事だったのである。
「おい、ルドラだったか。お前の従魔、見た目的に、お世辞にも戦闘向きとは言えないが…本当にこの学科で良いのか?」
「いじめとかじゃなくて、本気でお前のためを思って言っているんだが」
「…いやまぁ、俺だって最初はダメじゃないかなと思って、止めようとしたのだ」
竜の従魔を得る道が閉ざされたことには変わりはなく、ハクロのことも考え、実はルドラは自身の選ぼうとしていた学科を変更しようとはしていたのだ。
だがしかし、そこに待ったをかけたのが…まさかのハクロである。
【召喚された従魔は、召喚された瞬間に主の望みとかも自動で分かるようでして…ええ、主様は、竜騎兵になることを夢見ておられたことを、存じております。私自身が竜では無いことに対して悲しまれてしまったようですが…ならばこそ、竜の代わりの従魔として、役に立ってみせましょう!!】
「いや、かなり無茶じゃない?ハクロ、無理しなくても良いんだぞ?」
【大丈夫ですよ、主様。こう見えても私、かなり強いです。主様の敵だろうと、相手が魔物だろうと何だろうとも、全てを薙ぎ払ってみせましょう!!】
「…って、感じで本人のやる気が凄くて、どうしようもなかった」
「既に尻に敷かれている感じがしないか?」
「あの人、押しが強そうだしな…」
話を聞いた同級生たちの、同情の視線が痛い。
本当にどうしようもなかったのだと言いたい。あの純粋な瞳で真っすぐに、押し切られない者はいないだろう。
「本当はあのおっぱいに迫られて、折れたんじゃないのか?」
「それは無い。アレは、死ぬ」
「…何で物凄く真顔で、一片の曇りもない恐怖の目をして言うんだ」
…その理由は聞くな。
あの死の恐怖を味わえば、何とも言えなくなるだろう
だが、口にするとそれはそれであれなので…
次回に続く!!
…職場のエアコン、熱い時いいけど、体壊す




