003 人は肉体的に弱いんだよ
…召喚したのは、竜じゃなくて蜘蛛の美女でした。
いや、そんなこと、何を言っているのか理解できるのか。
【どうかされましたか、主様?】
「んー…本当に君が、俺の従魔なのが不思議だなって思ってな」
召喚の儀式も終わり、各生徒は従魔を見ながら希望する学科を申請した後、一旦従魔と今後の生活を行う寮室に戻っていた。
この学園内では、従魔との絆も深め合うことも推奨されており、各々の従魔のサイズにもよるが、用意された部屋で共同生活ができるようになっている。
小型から大型まで対応可能らしく…この部屋もハクロの大きさに合わせて、それなりの広さになっているのだ。
まぁ、単純にそこまで大型の従魔がホイホイ出ないらしく、部屋に余裕があったからこそともいえるが…そんな事よりも、こうやって改めて見ると、彼女は従魔としては不思議な感じがした。
「アラクネ…召喚時に流し込まれる情報だと、蜘蛛の下半身に人型の上半身の姿っていうけれども、見た目として蜘蛛に腰かけた人に話している雰囲気なんだよなぁ」
【そうですか?こちらも私の身体ですよ?ほら、主様見てください、しっかりと私の身体が付いてますでしょう】
「うわっつ!?」
堂々と、ルドラの目の前でハクロが自身のスカートをまくり、下部分を見せる。
思わぬ行為に驚愕させられつつ、とっさにルドラは目を背けた。
「や、止めろよハクロ!!いきなり人前で、そんなことするな!!」
【…主様になら見られても平気ですが?というか…もしかして、かなり初心ですかね?】
「うぐっ…」
きょとんと首を傾げつつ、そう口にするハクロにルドラは反論できない。
相手が従魔だとしても、ハクロ自身の見た目がかなりの美女であるために、純粋な青少年であるルドラにはかなり刺激が強かったのである。
【ふ~ん、主様が初心…ふふっ】
「ちょっとまて、なんだその悪だくみをするような、にやにやした顔は」
【いいえ~別に、何も悪だくみしてませんよ。ちょっと面白いなって…それっ】
ぎゅむぅっつ!!
「んんん-----!?」
突然、ルドラの自由と視界が奪われた。
違う、これは…
【へへへ、私こうやって、誰かを抱きしめるのって好きなんですよ。私の元居た場所だと、お姉ちゃんたちが山みたいに大きすぎてできなかったんですけれども、主様はちょうどいいサイズです~】
「んぐぐぐぐぐ!!」
…ハクロに、抱きしめられていた。
嬉しそうな声を上げて、ぎゅうっとその双丘に沈めるようにルドラを抱きしめるハクロ。
柔らかい肉の壁がぎゅむぎゅむとルドラの視界を覆い、暖かく不思議な感覚もありつつ、聞こえてくる話に彼女の血縁者が出てくるが、ルドラにとってはそれどころではない。
「やめっんっぐっつ!!やめろ馬鹿!!主を窒息死させる気かぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
人によっては羨ましい状況なのかもしれないが、窒息死もとい乳息死はシャレにならない。
この従魔、人型とはいえやはり人ではないからこそ、常識が少し欠けているというべきか。
【え?…私と違って主様、お腹での呼吸ができないんですか!?】
「できてたまるかあっ!!」
なお、アラクネの場合は蜘蛛の下半身があるが、下腹部に呼吸するための気門があるらしい。
上の人型部分での呼吸は日常生活用で、蜘蛛部分のお腹からの呼吸はより活発に動くときに使うそうだ。
何にせよ、今後の生活が前途多難な気がしてならないのであった…
「まったく…本当に気を付けろよ、ハクロ。従魔と違って、人間は結構弱いんだからな。乳息死なんて死因で死んだ人の三例目になってたまるか」
【…え?過去にも、あるんですか?】
「従魔に関しての勉強は、誰よりもしてきたと自負するからだけど…ハクロみたいな人型相手じゃなかったはずだ。確か一例目はギガントビートル…二例目はポイズンスライムだったかな」
【前者はまだ無理もなさそうですけれども、後者は何故?】
「…それは…なんとも」
…人の業って深いらしい。
その言葉でしか言い表せないようだが…うん、純粋そうな目で見てくるハクロに対して、ルドラは言い淀み、告げることをやめるのであった。
ある意味恒例行事
その前例はさておき、ようやく物語が少しづつ進む予定
さて、どうなるのか…
次回に続く!!
…モンスターの種族名から、わかるかな、どういう事が起きたか…




