002 彼にだけ影響が留まることはなく
「---今年の従魔獲得者数は、全体の80%か」
「今回は結構、多く出たようだが…まぁ、トラブルが出るのは当然のことだろう」
「いくら防止していても、異界のものを呼び出す以上、想定外のことは起きるからな…」
…国立アルバニア学園の、職員室内。
本日の従魔召喚の儀式による結果を見て、職員たちが話し合う。
国にとっても利益になりうる、様々な生徒たちが呼び出した数多くの従魔の召喚。
大抵は騎士学科の方に出願し、国の戦力が増加し、そうでなかったとしても様々なことで貢献できる未来が待っているのは間違いない。
だがしかし、中にはとんでもないトラブルが起きる可能性もあり、ある程度の防止策も採っているために大事に至らないのは幸いなのだが、それでも予想外のことが起きてもおかしくはない。
そして今回は、その予想外のことが起きてしまったのだ。
「生徒番号89番…ルドラ。彼の召喚した従魔が…アラクネことハクロという者か」
「89番の出した従魔がハクロなのはどういう縁か…いや、相性というべきか」
数多くの召喚の中で、生徒たちが呼び出す従魔。
その中で今年度呼びだされた召喚獣…種族名がアラクネ、持ち名はハクロに関して、一つの問題が起きていた。
「どのような従魔であれ、基本的に召喚者と共に過ごしてもらうが…」
「「「「モラル的な面がなぁ…」」」」
召喚された従魔は、その姿形は様々な物があるが、当面の住処としては召喚者と同室で過ごすようになっている。
様々な種族がそろうがゆえに最適な環境はバラバラではあるが、それでもその召喚者と相性が良いものが呼ばれるのが基本的なために、目立った問題は起きないはずだった。
そう、例えば犬や猫、クマにゴリラといったような振れ幅が大きい獣の姿をしていたり、過去の事例ではスライムや大ミミズ、煙に竜…そういったものであってもまだ、ましな方である。
「だが、今回呼び出されたのは人型…蜘蛛の部分も目立つとはいえ…」
「めっちゃ美女やん…うら若き青春の少年やと、お年頃の悶々とした男の子心のせいでバッキバキに癖が破壊されるやつやん」
「ゾンブリア先生、口調がおかしいのですが」
「言われれば確かにそうなるが、かといって大型の従魔に対応できる従魔舎のほうに割り当てるのも」
「その場合は、今度は絵面が…あと防犯的な意味とかでも…」
いかんせん、その能力がどのようなものなのかは未知数ではあるが少なくとも現状問題になるのは、ハクロの容姿である。
フワフワとした白蜘蛛に腰かけているような、きらめく白銀の美女の姿であるということは情報としても彼らの目でも確認しているのである。
そんな今をときめく人のような、例え従魔であったとしても獣が溢れるような場所に置くのは絵面的に大問題でしかないのだ。
「かつて、従魔の知恵を授けた賢者様の言葉に、『前門のライオン、後門のマンイーター』というのもあったな…」
「いや、それは時代と共に変わって本当は別の何かがあったらしいが」
「とにもかくにも、まともに同室にしていいのかと言う話になるな」
うーんっと頭を悩ませ、うなり、抱え込む姿を見せる職員たちだが、いかんせんまともな手段がない。
幸いなのは、ハクロ自身がどうも他の従魔たちと比較してもかなりコミュニケーションを取りやすい部類であり、話せばわかってくれそうな部分もあることだろうか。
「何にせよ、今は様子見…しかないな。うん、我々は青少年を健全に導くしかできぬ、弱い立場だというしかあるまい」
「過激なものもいるかもしれぬが…一応は、人ではなく、従魔。下手に手を出せばどうなるかもわからぬから、注意だけでもしておくか」
自分たちにやれる手段は少なく、無力感もあるだろう。
だがしかしこれしかないのだと、自分たちに言い聞かせて納得するしかないのであった…
「しかし、記録写真も得たが…いや本当に、美しいなこの従魔。人ならざる身ゆえに持つ美貌かもしれぬが、それでも…うらやましいぃっ」
「心の底からの声が伝わってきますな」
「だって自分の従魔は…ゴリキング…!!」
「「「ああ…いや、そっくりだから逆に愛着湧きやすくない?」」」
「ナンデヤァ!?」
苦労は周りもしっかりかかるもよう
生徒のためにと思う面もありつつ、羨ましさも垣間見えて…
次回に続く!!
…なお、新作までの間に没った中に巨大ロボものもあって、このゴリラそれの名残だったりします




