表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/30

001 それはよく晴れた空の下で

ーーージリチリリリリ!!


「…ん、懐かしい夢を見たな」


 ふぁぁわっと欠伸をしながら、目を擦り、目覚ましを止めるルドラ。


 


 まだ幼き時の、憧れていた景色が夢に出てきたようであり、今は亡き父の姿も見えたので、悪い夢ではなかっただろう。


 そして、この夢を見てしまうということは…



「ああ、そっか。今日だったな」













―――この世界には、魔物がいる。


 様々な生物の特徴を持ちながらも、どの生物にも当てはまらず、人を害する凶悪な存在。


 その力は強大であり、そのままでは人類は魔物たちの手によって滅ぼされたかもしれない。




 だがしかし、奇跡が起きたのか、そうはならなかった。


 いや、違う、奇跡ではない。




『目には目を、歯に歯を』…かつて、この世界にとある賢者が訪れ、告げたとされる言葉。


『ならば、魔物には魔物を、ぶつければ良いだろう』


 その言葉の通りに、魔物には魔物で対抗すればいいと人々は考え、様々な手段が構築されていく中で、生み出されたのは…『従魔』と言う存在。


 


 魔物に対抗するために、同じ世界のモノでは人が襲われる可能性も多いため、こことは違う世界から、可能であれば人は襲うことがない強力な魔物を召喚して戦わせるのである。


 

 ただし、より強力な分、反旗を翻されては本末転倒。


 人を襲わないものを狙っても、完全ではなく… 過去の事例では、制御不能な化け物が出現し、国一つが消し飛んだという話も有る。




 そのため、より改良が進められてできあがったのが『従魔召喚の儀式』。


 原初の方法よりもさらに適切に召喚陣が召喚者と相性が良くて裏切らなさそうな相手を、どこかの世界から見つけ出し、呼び寄せるのだ。





『----だがしかし、相性次第になったがゆえに、呼び出す相手がいなくなるものもおる。ゆえに、本日この場で従魔を手に入れられない運命もまた待ち受けるだろうが…それでも諸君らには、ぜひとも成功し、未来永劫共に戦うための友を、相棒を、人生の相手をつかんでほしい!!』


「まぁ、そういうことにはなるわなぁ」

「でも絶対に呼び出してぇ…かっこいい従魔とか連れられたら、めっちゃいいやん」

「そのまま従魔に騎乗して、従魔騎兵団とかに入隊出来たらいいんだがな」


「…その中でも特に、竜の従魔を従えた竜騎兵になりたいな」


 集まっているのは、今回の儀式に挑むことが許された少年少女たち。


 このアルバニア王国、国立アルバニア学園の1年生になったものであり、ここで呼び出せる従魔によって将来への道が決まる者たちでもある。



 従魔を呼び出せなければ普通の生徒、呼び出せたらその従魔に応じた各学科への配属。


 その中でも、ルドラが狙っているのは…幼き時に見た、あの竜の姿。


 大空を行く、従魔の中でも最も格上とされる存在、竜種…その系統に属する従魔を願うのだ。




「それでは23番!!結果は…」

「よっしゃあ、出たかぁぁ!!って、亀ぇ!?」


「37番!!それは…」

「うごぉ、す、スライムかぁぁぁ!!」


「39番!!反応なし!!」

「ちっくしょあぉおおあっぁぁぁぁぁあ!!」


 悲喜交々、波乱ばかりの召喚状況。


 各々の望む者とは違う者、適合する者、得られないもの…その光景はどれ一つとして同じものではなく、皆のドラマが垣間見える。


 そうしている間にも、ようやくルドラの番が訪れた。



「それでは、89番!!」

「はい!」


 ようやく訪れた、自分の番が呼ばれ、ルドラは元気よく返事した。


 これで出ようが出まいが、泣いても笑っても何もかも決まる。




 召喚方法自体は至ってシンプルで、用意された召喚陣が書かれた紙に、血印を押すだけ。


 これで反応があれば輝き、無ければ何も起きないが…さて、これはどうなるのか。




 ドキドキしながら、軽く親指に針を刺して、ちょっとだけ血を出す。


 それをぐりっと召喚陣に押し当てれば…




ーーーーバチバチバチィイイイイ!!

「おっと、反応が!!」


 ここまでは良い、召喚陣が反応を起こせば、従魔が出るのはほぼ確定。


 しかし、何が出るのかまでは不明であり、最後まで油断ができない。



(さて、竜が…あるいはその系統が出るか!!)


 心の中でしっかりと構えて目を離さないようにする中、召喚陣がついに従魔を呼び出す。


 紙が燃え、煙が上がり、それが形を成して別世界への扉を開いて…出てくるのは。






ドズンッツ!!

「っ!!」


 盛大に音を立てて、地面に降り立つ一匹の姿。


 その姿を見て、ルドラは目を見開く。



「…竜じゃない…と言うか、人!?」


 いや、違う。


 よく見れば、彼女(・・)は人ならざる存在であることが一目で見てわかるだろう。


 召喚者にはどうやら呼び出した従魔の種族に関して流れ込むという話があったが、その中身がすぐにルドラの頭の中に染みわたり、彼女が何者なのか理解させてしまった。


「アラクネ…?」


 空に浮かぶ雲のような白い綿毛に身を包む蜘蛛に腰を掛けているかのような、美しい美女の姿。



 その白さに負けず、玉真珠のようなきらめく肌色に、豊穣の双丘を包み隠す絹のような衣服を身に纏い、風にたなびく白銀の髪に、目は紅の宝石のようであり、その美貌は人ならざるものゆえに持つものか、それとも彼女生来のモノなのか不明なものだが‥‥それでも、誰もが美しいと認める姿をしていた。


 

 そして、その目はルドラの方に向けられる。



【ああ、貴方が私の、(あるじ)ですか?】


 召喚されてから、直ぐに状況を把握したかのように、口を開き、はっきりと声を出すアラクネ。


 



 従魔は、誰が主なのか召喚されて早々に理解しているらしい。


 ゆえに、彼女はルドラを見据えており、わかっていながらも確かめるような言葉を発した。





 竜では無い。


 だが、それでも彼女を呼び出した主だからこそ、はっきりとルドラは応える。


「ああ、そうだ。俺がお前の主だ」



 その目を見て、答えを返す。


 嘘も偽りもなく、まっすぐに彼女の目を見て…そして、ゆっくりとその事実が飲み込まれる。


【---ふふふ、そうですか、良かったです!!私、ハクロと言います!!これからよろしくお願いしますね!!私の主様(あるじさま)!!】

「っ…ああ、よろしくな」


 間違っていなかった、それが心の底から嬉しいように名乗りながら笑みを向けてくる彼女の姿に、ドキンっとルドラの胸が一瞬高鳴ったような気がした。





 望んでいたものとは違う結果。

 

 ルドラの夢が一つ潰えてしまったが…その代わりに、別の夢が生まれたようであった…



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ