閑話 聖女様の思うことにや
…元凶はおそらく、無事ではない。
確実にそれを理解してしまうのは、聖女としての力か、あるいは…
「…圧倒的過ぎましたね」
「はい、従魔の暴走を引き起こしてくる可能性はあったとはいえ…多少は、聖女様の聖光でどうにかできると思っていたところもありました。しかしながら…」
「「「アレは無理だろ‥‥」」」
アルバニア王国の従魔騎兵団学科と別れ、聖女一行は再び別の道へ向かった。
しかしながら、その気分は皆、沈んでいる。
原因は明らかと言うか…別れる前にあった従魔暴走未遂事件。
それを鎮めたたった三体の従魔に対して、強烈な畏怖を抱かされたのだ。
「大魔王…そう聞こえたのでしたか」
「ええ、間違いなく。…従魔の中でもトップクラス過ぎるとは思いましたけれども…くっ、物理的にも大きいなんて…!!」
「聖女様、ツッコミどころ多分、そこじゃございません」
「だって山のように、大きかったんですよ!!私よりも何もかも、胸も何もかも!!」
「いやだから、違うところに注目しておりませんか」
どこを悔しがっているのだと思うところもあるが、間違っていないわけでもない。
ただ、強大な力をもつものだということは理解できる。
「おそらくあの大司教…完全に終わったでしょう。話を聞く限り、大魔王3体分の力で」
「確実にそれをやったとは証拠はないですが、あの力ならば不可能はなさそうです」
暴れだしかけた、多くの従魔。
それらを、咆哮のみで静め切った…いや、全員無差別に身動きできなくさせるだけの実力。
もしも、彼女たちの方向だけではなく、その他の力を使っていたらどうなっていたのか。
容易く全てを殲滅させられた可能性はあるだろう。
「…いや本当に、何故、あれだけの従魔がただの一人に従うのかが分からないな」
「契約もあるだろうが、人の身には余り過ぎるだろうが…それだけ、彼女たちが信頼しているからか」
他の者たちが口々に言う中で、聖女は一人考え込む。
あれだけの力を有した従魔を従えていて、彼が本当に無事なのかということを。
「何にせよ…彼と、縁が出来たのは喜ばしい事でしょう。少なくとも今は、聖公国アヴァロニストに対しての不信感を持たず、むしろ聖女とのつながりを得て、関わる機会が出来たのは幸いですね」
万が一、敵対するリスクが生じたとしても、従魔たちはともかく、あの優しそうな主までが直ぐに敵対するかといえばそうならないはず。
いや、むしろここでより深くつながりを持っておいたほうが、国のためにも民のためにもなるはず。
「それに…ふふふ…私としても、これで終わりにするつもりはありません」
しっかりと、別れ際に彼と一つ、話をしてきた。
それは、文通をしてほしいという小さな願い。
ほんのわずかな交流を進めていくことで…千切れないように、ゆっくりと縁を育てていきたい。
(…あとは、ゆくゆくは聖女の立場も後任へ譲って…その前に、物理的にも大きすぎる壁があるのは前途多難ですけれども、諦める気はないですね)
心の中でぼそりとつぶやく、助けられた時から抱いてしまった、淡い思い。
隠しているように見せるが、周囲の護衛達も誰も彼もが、すぐに気が付く経験不足ゆえのわかりやすさ。
心の中から応援はしたいと思いつつも、大きな壁にどうする気なんだろうと思わざるを得ないのであった…
想いはあれども、直ぐには動けず
けれども、長期戦を見通しつつ…さて、いよいよ海
そこで何があるのかは、次回に続く!!
…残暑がまだ残る中で、ようやく来たよぉ…




