040 外道のやることにや
「…ぬわぁにぃ?失敗しただと?」
「はい、報告によれば偶然にも、聖女御一行の道中に、アルバニア王国の従魔騎兵団学科の林間合宿経路と鉢合わせて、せっかくの魔物の大群が全滅したとのことです」
「いかがいたしましょうか、ゲスモンド大司教様」
…通信のためのマジックアイテムを用いたことで、迅速な情報を得ることはできた。
しかし、得られたその内容が都合の悪すぎる内容だったことを、この聖公国アヴァロニストの大司教でもあるゲスモンドは、顔をしかめて受け止めた。
「むぐぐぐ…少しでも、粛清騎士団共の動きを鈍らせるために、非業な聖女の死を利用しようとしたのだが…まさか、悪運が強いとはな。聖女なのに、悪運とは笑えるが、事態は笑い事ではないか」
キングオブ外道などの陰口を言われるほど、そのやり口は非常に悍ましく汚いモノ。
だがしかし、これでも伊達に大司教の座に上り詰めたわけではなく、無能過ぎないからこそ厄介なものだという評価を持つほど、知能はマシな方ではある。
「経路はどうなっている?」
「それが、ほぼ同じ…道中の安全を約束するように、そのまま護衛につく様子です」
「騎兵団そのものではなく、学科…まだ、見習いのようなものか。熟練の騎士たちではないのは幸いだが、アルバニア王国…まて、確か、かなりヤバい従魔の情報もあったな」
そこでふと、ゲスモンドの脳裏に浮かび上がったのは、先日情報収集の中で得た、アルバニア王国でのとある情報。
一部の情報が王国側でも不味いことを理解しているのか、得られていないものもあるとはいえ…
「ええ、強力な従魔をもつ生徒がいると。帝国側の皇帝暗殺プロジェクト中の工作員からも、帝国の方で手に入れている情報をわずかに手に入れつつ…整合性は取れているようです」
「あのなぜか暗殺を企んでも、何かとろくでもないものになってかわすあの皇帝がいるところのだとしても…ふむ、あちらも警戒するレベルなら…利用できるか」
普通のモノであれば、ここですぐに手を引いたほうが良い。
けれども、このままにしておけば、自身の首が物理的に飛びかねないものへ変わることを予想しているゲスモンドは、退路を持つ選択肢はない。
「…下手をすると、アルバニア王国と聖公国アヴァロニストの間に、火種をもたらすかもしれんが…いや、むしろ戦火を起こすのであれば、派手に燃えれば身を隠すのに都合が良いな」
「と、言いますと?」
「確か、予定しているルート先に、見られては不味い密輸品を隠していた倉庫があったはずだ。そこに命じて、アレを…『凶煙』を風上から使え」
「っ!?まさかあの、道具を!?い、いけません、大司教様!!そんなものを用いれば、確実にあなた様の首が飛ぶどころか、大破門が…!!」
「かまわん。どうせ、明日の日の目も見るのも難しい身の上であれば、今更罪を重ねても問題はあるまい。そもそも、聖女の命を狙う段階でな…覚悟は、できているものだよ」
にやぁっと笑みを浮かべる大司教に、ごくりと周囲の仲間たちはつばを飲み込む。
外道には外道なりの、失うものが無い無敵の覚悟が備わっているもの。
それを、彼らが測り損ねていただけなのだ。
「わ、わかり、わかりました!!今すぐにでも手配を行います!!」
大司教の覚悟を持った、外道の心。
そのおぞましさに怯えつつも、彼の仲間である以上は連座は確実であり、ならば自分たちも身をもって尽くしていくしかない。
そのため、彼らは迅速に大司教の指示を受けて、動き出すのであった…
「だが、本来ならば聖女の暗殺より先に、帝国の混乱を得られたはずだが…本当に、一番の暗殺部隊を仕向けたはずだよな?」
「それは間違いないです。しかしながら、昨日の報告では、毒を盛ったはずが、食中毒で寝込んだだけとの報告が…」
「効いていないってわけでもなさそうだが、またしぶといのか…本当に何故だ?」
やらかしはすぐそこに
けれども、それと同時に悪意もやってくる
こういうのが、魔物よりも厄介なもので…次回に続く!!
外道のやることは、覚悟もいるが…




