038 聖公国アヴァロニスト
「…以上が我々、アルバニア王国の従魔騎兵団学科となります。しかし、聖公国の聖女御一行がまさか、このルートにいるとは」
「いえ、我々も他国に通告しているとはいえ、今回のことはそこまで大々的なものではないため、さほど気にも留めていなかったとはいえ…」
【なぁ、我が君、聖公国ってなんだ】
「ん?ああ、国の一つだよ。と言っても、授業で習った内容だけど…」
――林間合宿へ向かう道中に打ち上げられていた救急信号。
その場所へ急行し、従魔学科の全員で救助及び魔物の討伐を行い、今は引率の教員が向こう側の相手…今回の救助対象となった聖女御一行の中の指揮官と話し合いを行っていた。
時間がかかりそうだなと思う中、話を聞いていたギランがふと、そうつぶやいたので、ルドラは習った範囲で彼女たちに説明を行う。
「…従魔で魔物に対抗するのはこの世界においての常識的な部分もあるけど、その従魔の手段を用いないで、聖なる力…聖光ってのを使って、対抗している国があるらしい。それは、聖公国アヴァロニストだったかな」
かつての賢者の言葉を借りるのならば、従魔を使って魔物に対抗する手段は「毒を以て毒を制す」。
それに対して、聖公国の用いる聖光の手段は、「毒を劇薬で制す」と言ったところだろうか。
従魔を用いないからこそ、暴走や居住などにかかるコストなどが、一切無いというメリットもあるが…それと同時に、デメリットも存在する。
「聖女と呼ばれるような一部のモノしか使えなかったり、何かと制限があったり…使い勝手の方が悪いってのはあるらしい」
数多くの魔物が命を奪いにくる中で、一部にしか扱えない力というのは、臨機応変に対応しづらいのもあるだろう。
聖光は相当強力ではあるが、様々なデメリットがある以上、それを主軸にするかどうかは微妙である。
ゆえに、大半の国々は従魔での魔物への対抗を選択しているが、聖公国はデメリットがあっても数を増やせばと言うことで、聖女を色々と御大層に扱うようにしているのだという。
「ただ、確実に言えるのは大事にしていることぐらいかな」
【そういうのって、おごり高ぶった人たちがやらかしそうなイメージはありますわよ?】
「それがそうもいかないというか、歴史から学ぶ教訓と言うか…」
過去に聖女の扱いで色々とやらかした記録も、抱え込んでいるからこそ大量に得られるという物。
大勢の前で偽物扱いしたり、贅沢を許しまくったり、その他諸々積み重なった歴史と言うものが、扱い方を間違えたらどうなるのかと言う重みを、従魔に対する扱い同様に人へ理解させているのだとか。
「有名なのだと、賢者様と聖女様によるボルバンジョ一家鯖折り事件とか…」
「その話は、有名ですわね。聖女として、嗜む話の一つになりますよ」
と、ルドラが有名な話をしようとしたところ、ふと声をかけられたので振り返ってみれば…そこには、先ほど助けた聖女様本人がいた。
聖女の決まりとしてなのか、素顔が見えない薄いベールをかけつつ、清楚で質素な白い服装を着ており、いつの間にか近くに来ていたようだ。
「あ、聖女様」
「ええ、どうもこのたびは助けていただき、ありがとうございましたわ。直接お礼を言いたくて、来ましたの」
責任者同士の話の中で、聖女はじっと護衛達に守られていたのだが、どうやらお礼を言いたかった様子。
そのため、後ろの方の護衛達の視線を感じながらも、お礼を受け取っておく。
「いえ、こちらとしては緊急時と言うことで、すぐに助けに来ただけで…」
「それでも、本当にありがたかったですからね。…他の従魔を連れた生徒たちもお名前を教えていただきましたが、その中でも特に、一番目立ったのが…貴方ですからね、ルドラさん。アラクネ、オーガ、スキュラと言う珍しくも強い三体もの従魔を従えているといいますし…不思議な縁に、今感謝も致しましょう」
誰がどの従魔を従えているのかという情報も得ていたようで、その中でルドラに関しても詳しく聞いていたようだ。
まぁ、面子的に目立つのは言うまでもないのだが…
【…ちょっと、距離が近くないですかね】
【うぉっ、ハクロ、ちょっと漏れている漏れている、大魔王の何かが出ていますわ】
…別の視線の強さも、何か感じてしまうルドラであった。
嫉妬の蜘蛛
まぁ、聖女との相性が悪いわけではない…かもしれない?
次回に続く!!
…歴代ハクロの中でも、嫉妬深さは強いかも




