037 セイジョサマ
―――『目には目を、歯に歯を』
『ならば、魔物には魔物を、ぶつければ良いだろう』
と、かつての賢者が伝えた言葉で、魔物への対抗手段に従魔が存在している。
だがしかし、それでもやはり「魔」の付くものに対して忌避感を覚え、別の方法で魔物に対しての有効打になりえるものを模索する道もなかったわけではない。
研鑽が、武器が、魔道具が…ありとあらゆるものが試され、繰り返され、そして多くの犠牲を生みだしつつも…その国は、一つの手を確保した。
「魔を払う、神々の祝福よ…『聖光』よ」
ぼうっと輝く彼女の手が剣に触れれば、その剣に光が宿る。
人為的な対処手段…人の攻撃力を桁違いに倍増させる、聖光技術。
強化魔法だとか支援魔法だとか、そういうものも無いわけではないが、それとは決定的に違うのは…
ザシュゥウッツ!!
【ブゲェェーーーー‥‥】
「灰になってしまえ、そのまま一撃で…!!」
「だが、それでもきついです、聖女様!!」
聖なる光を宿した剣をもって、護衛騎士たちが襲撃してきた魔物たち…鋼以上の硬い外骨格を持つはずのアダマンアントの大群を、豆腐でも切り裂くようにすんなりと切り捨てていく。
相手がいかなるものとはいえ、この攻撃は防御不可とされるもの。
一撃で、魔に連なるものを屠れる強力なものではあるが…いかんせん、その光を宿した武器を扱う担い手の技量や心に左右されやすく、安定しないのだ。
そのうえ、今この場に襲撃をかけてきているアダマンアントの大群は、蟻のような見た目をしている魔物ゆえなのか、その数も膨大。
炎のブレスを出せる従魔でもいればもう少しましだが…この中にはいない。
「はぁっ、はぁっ、『聖光』よ、もっと…」
「駄目です、聖女様!!これ以上の乱発は、体力が持ちません!!」
効果が長くはなく、直ぐに輝きを失った剣に再び手をかざす彼女に対して、護衛達は叫ぶ。
守るべき相手が、倒れては意味が無い。
「くそっつ!!何でこんな時に限って、こんなに数が多い相手なんだよ!!」
「神よ、この場を救いたまぎやああああああ!!」
「ズラスベルーーー!!そんな祈っている暇があったら、さっさと切れよ!!」
「どうしてこんなに…いや、それでも…!!」
必死に抗い剣を振るい、魔物たちを切り捨てる。
今あるものを守りきるために、命を燃やす勢いで、心を激しく動かす。
だが、それでも現実という名の氷河は、その熱に溶かされることは無い。
【アンアントォオオオオオオッヅ!!】
「きゃあああああああああああああああっつ!!」
「し、しまったぁぁ!!お逃げください、聖女様ぁぁぁぁああああああ!!」
ついに守りの一部が突破され、ギラギラとした目つきでアダマンアントが彼女へ迫る。
このままあっけなく、その華奢な体が引き裂かれるかと誰もが絶望の未来しか見えていなかった…その時だった。
ガギィインッツ!!
「ーーーえ」
目の前に今まさに、牙を突き立てようとしていたアダマンアント。
だが、その牙が彼女に届くことは無く…剣を構えた少年が受け止めていた。
「…な、投げられてびびったけど、間に合った…!!ハクロ!!リリス!!ギラン!!」
【了解です!!】
【やりますわよ!!】
【ぶっ飛ばしてやるぜぇ!!】
斬撃が、火弾が、撲殺の一撃が、一気に周囲を吹き飛ばす。
「な、なぁ、なんだぁ?」
「救援の手…なのか?」
先ほどまで蹂躙されていたはずが、今度は逆に蹂躙し返している。
圧倒的な物量に対して、圧倒的な質が、押し返す。
その光景に護衛騎士たちが唖然とする中、倒されていく蟻たちの姿。
そして同時に、聖女と呼ばれた彼女は、いつの間にか美しい蜘蛛の美女の背に乗って指示を飛ばす彼へ目を向け続けていたのであった…
間に合いそうになかったので、とっさに投げました
ギリギリセーフだったけど、スリル溢れていたとか‥‥次回に続く!!
…聖拳抜刀、とか考えたけど、流石に自重




