034 ゆったりとしつつも前に進め
―――騒動がそれなりにあったとはいえ、時間はいつの間にか過ぎていくもの。
ほんのりとしていた温かさが徐々に熱を増していき、ギラギラと太陽が照り付けてくる今日のこの頃。
従魔騎兵団学科の生徒たちにとっても、一つの試練の時が近づいてきていた。
「ーーーーそれが、『実戦』だ。もう間もなく、諸君はこれまでの模擬戦形式からついに、いよいよ魔物たちの戦いの場へ、向かうことになるだろう」
「おお、ついにか」
「以前あった、襲撃事件の時もちょっとは戦闘があったらしいが…アレは事故のようなもので、今回からガチなのか」
「戦いの場へ向かう覚悟はできているとはいえ、ドキドキするな」
本日の授業の中で、教師から告げられたその言葉に、にわかに騒がしくなる生徒たち。
以前あった、街中での突然の魔物たちの襲撃はノーカウント…正確に言えば、ほぼ避難に徹したためにまともな戦闘が起きたとはいいがたいのだが、それを除けばついに、いよいよ本格的に魔物たちと戦う時が来たのだ。
とはいえ、模擬戦形式で経験を積み重ねていったとはいえ、それでもまだまだ経験不足。
いきなり魔物との戦いの場に放り込んでは、あっという間に命を散らしかねない。
「そこで今回、季節的にもうれしいことに…合宿を行う!!海の魔物狩りも兼ねての戦闘訓練、海岸での体力づくり…そう、林間合宿だ!!」
「「「おおおおおーーーーーー!!」」」
戦いの場は何も、常に陸地にあるわけではない。
魔物たちの出る場所は多種多様ではあるが、海の方は人の手がすぐに入りにくい場所なのもあってか、陸よりも魔物の遭遇率が高いらしい。
そんなものが海をうろつけば、魚や海藻などが壊滅的なダメージを受ける心配もあったが…世の中不思議なもので、海の方の魔物は陸地のものよりも弱かったり、あるいは魔物以上の強者になるキンニクムキムキウオなどの魔物以上に魔物してそうなのに魔物ではない不思議生物がいたりする。
…と言うのは建前で、この暑さの中で、楽しめる場所が欲しくなるのだろう。
海と言うのはまさに、戦いの場にも、経験を積む場所にも、そして遊ぶための場所としてもこの時期ならば最適なのかもしれない。
「かつて、従魔の手段をもたらした賢者は、海でも言葉を残した。『真夏の太陽こそ、青春、成長、水着美女まっ盛りで、やる気も何もかも上がる』と」
「賢者なのにだいぶ俗物に染まってないですかね、その言葉」
「ついでに言えば、『上げ過ぎたらそれはそれで、後方から包丁を持った者たちに追いかけられるから、
節度は保て』とも」
「絶対に何かあったよな、それ」
とにもかくにも、賢者の血濡れ海辺騒動なんて記録はさておき、戦闘に慣れるためにはまずは海からというのもありと言うことで、林間合宿は恒例行事になっているようだ。
「そんなこんなで、数日後に林間合宿が決まったけど…海だけど、皆泳げたっけ?」
【泳げ…はするはずです、多分】
【オレたちのいた世界、海も中々ヤバかったからなぁ…】
【わたくしは泳げますわよ。海辺は、物凄く有利な場所ですもの】
ふと思ったが、水中戦闘とかあっても大丈夫なのか。
そんな疑問もあって、ルドラはハクロ達に問いかけたが、ちょっぴり微妙な様子。
まぁ、リリスはスキュラ…元々が水に関連する従魔なので良いとして、他二人は完全に陸地のモノ。
元居た世界が滅亡に瀕するほどならば、泳ぐ機会もそこまでないのかもしれない。
【何にせよ、海に行くのならば水着が必要ですね。ふふふ、しっかりと新しいのを、買いましょうか】
にこやかに、そして楽しそうにそう口にするハクロに、皆でうなずくのであった。
【そもそもの話だが、オレたちが着られるような水着があるのか‥?】
【あ、大丈夫ですよ。私、作れますからね。ええ、ギランならいっそ、スリリングショットはどうでしょうか】
【おおっと?知らないけど絶対にロクデモナイモノだと分かるのは何故だ?むしろお前が着ればいいじゃないか】
「…やっぱりちょっと、仲悪いなこの二人」
【んー、性格的に衝突しやすいのですわ。かたやのほほんに見えて腹黒で、かたや粗暴に見えて冷静で…寒暖の差がはっきりしやすいもの同士だからかしら?】
【誰が腹黒ですか!!】
【誰が粗暴だ!!】
【【この傍観者気取りの泥棒猫蛸!!】】
「仲が悪いほど、なんとやらだっけか?」
…大丈夫かな、林間合宿。
海の大怪獣決戦なんてことにならない…よね?
海へ向かう面子としては、楽しもしくはあるはず
でも、海のモノは海のモノで脅威はあるかも
そんなことも考えつつ、次回に続く!!
…珍しく、現実(執筆時点8月)に合う話になった




