030 頭の痛くなる話だが
「ーーーふぅ、疲れが出たのかな?済まない、ドクターヴィガル。もう一度、報告してくれ」
「それがその…ゼストリア殿下。今の報告は、アルバニア王国の密偵たちからの物でして、こちらに記録水晶もバッチリと移しておりまして…大魔王に属する者が増えました」
「…お”う”っふっ…」
…しっかりと、日々の情報収集の中で、得てしまった悲劇的な情報。
ガルバンゾル帝国の王城内にて、ゼストリアはその内容を再度聞き、思わず間抜けな声を漏らしてしまった。
「あの王国の、大魔王…アラクナー、もといアラクネのハクロ。彼女に関しての動向も探っておいて、ある程度は敵対しない道を選べないかと思っていたが…何だ、その人類にとって絶望しかねない話は」
「正確に言えば、彼女の属していた世界から、新たに召喚が…いえ、どうもそのうちの一体が魔法に長けた種族らしく、召喚陣を利用して自らやってきたようです。表向きには、研究所の事故で、本来呼ばれるはずのないものが出ただけの、異例の複数従魔持ちになっただけとなっておりますが…」
日々の生活の中で、情報戦は非常に大事な物。
それを理解しているからこそ、集めていたものであったが…それは時として、自身の首を盛大にへし折るものでもあったようだ。
「…その従魔、一体何が来たんだ?」
「大魔王の姿は無いですが、ほぼ確定かと。2体おり、種族は今のところはオーガ及びスキュラと聞いております」
「ふむ。スキュラの方は聞いたことが無いが、オーガの類なら過去記録であるはずだろ?たしか、巨大な赤鬼だったとか…」
「それが例に漏れず…こちらの映像をご覧ください」
そう言いながらドクターは、手元に持っていた記録水晶を操作し、映像を映し出す。
「ほぉ…なるほど、これまたハクロとは違った美しさを持つ従魔か。片角の鬼に、海洋の魔女と言うべきか…彼女の元の世界は、美しいものでなければ魔性のモノにでもならぬのだろうか」
新たに入ってきた従魔の、オーガのギランに、スキュラのリリス。
彼女たちのそれぞれの記録された姿が、しっかりと壁に映し出されていた。
「なお、見た目以上に能力は凄まじいもので…リリスと言うスキュラは魔法に長けており様々な属性の魔法を操れるようでございます。こちら、その能力確認のための模擬戦映像です」
魔法を次々と繰り出し、模擬戦場で操る魔女の姿。
下半身のタコ足で陸上も素早く移動し、攻撃を回避しながら様々な魔法を繰り出し、見事に操っていく。
「おおぅ…これまたすごいな。帝国の魔導部隊もおそらくは、真正面から相手したくないだろうなぁ…」
魔法を操れなくはない者や、使える従魔も存在しているとはいえ、これほどまでに強力で美しいものなのかと、思わず感嘆の息が出るほどだろう。
確実に正面から相手したくないほどの技量でもあり、むしろ教えを請おうと抜け出す者がいないかも不安になるレベルだ。
そしてもう一方の従魔であるギランの方も、負けず劣らず実力の持ち主のようだ。
「おおぅ、あの大量の魔法を、金棒一つでさばききっているのだが…あれ、普通の金棒か?」
「情報によれば、彼女自身が鍛冶で作ったものだということです」
「鍛冶?」
「どうやら、単純に力が強すぎてまともな武器を扱えないようで…ならば、扱えるようなものを作ればいいという発想で、鍛冶師としての技術も身に付けているとのことです」
「どんな脳筋の発想だ、それは」
持てないのならば、持てるものを作ってしまえとの発想で…どうやらその才能も非常に高く、見事に開花させてしまったようである。
「そのせいで、鎧なども手掛けた結果…全体的な防御力が底上げされたようです」
「うわぁ…わぁ…」
どこかのちいさくてかわいい生き物のような、そんな恐ろしい感想しか出てこない。
単純な力だけのモノならばともかく、様々な能力が無駄に高すぎるせいで、結果的に全体の底力を引き上げてしまっている姿は無茶苦茶だと言いたくなる。
「アルバニア王国は、世界最強国家でも目指す気か…?いや、違うな、あの従魔たちを持っている主が世界征服でも目指す気かと言いたい」
「幸いなことに、野心は持っていないのはわかっております。どうも、幼い時からドラグナー…竜を従魔にした従魔騎士の方になりたかったようで…あれだけの莫大な力を持つ従魔たちをもっても、力に溺れることはなさそうです」
「むしろ、力があり過ぎるからこそ、その危険性を理解してそうでもあるな」
その力の矛先が敵として向けられたらどれほどの脅威になったかは想像したくもないが、現状は向けられることは無さそうではある。
人は力を得ればその欲望に抗いがたい物なのだが…いかんせん、その力が圧倒的に強すぎた場合は、他へ向けられないように制御することもできるようだ。
「とはいえ、警戒は続けて監視の目は着けておくか。こちらに向くことが無いように、馬鹿どもの抑制もさらに強めねばいけないしな…」
触れてはいけない、禁忌の代物があるのは誰だってわかるもの。
だがしかし、「自分ならば大丈夫だ」という何の根拠もない馬鹿な自信をもって、盛大に地雷原の上でタップダンスを踊り狂うような愚者も存在している。
しかも単純に自滅するだけならばまだしも、周囲にも多大な損害を与えて散ることが多く…どれほど愚かで恐ろしい事なのか、様々な歴史が証明していることだろう。
「ああ、これで醜き化け物共ならばいざ知らず、見た目も麗しい美女の従魔と来たものだ…彼は相当な幸運に見えて、実は相当な不運の持ち主ではないかと思い始めたよ」
彼自身に例えその気がなくとも、周囲が放置しきらずに、むしろ引き寄せられてやって来る者たちもいるだろう。
それがもたらす結果はさておき…確実に言えることとすれば、平穏の文字が最も遠い場所にいることぐらいか。
とにもかくにも、将来を見越して今は、下手な敵対が無いように動くのであった……
「しかし、従魔と言えば美女がこれほどそろうとは、眼福さだけならば幸運か」
「手を出しづらさを考えると、男としては不運か」
「「…天は二物を与えず、天才には天災を与えるとは、賢者もよく言ったものだな」」
大魔王の悩みは、他国に影響を与える
幸か不幸か、それはわからない
一番の巻き添えは、王国だろうが…次回に続く
…そういや設定で、Ai補助的利用ってあるけど、
文章の誤字脱字発見だけに利用。
減っているとは思いたいけど・・・誤字脱字ありましたら、ご報告いただければ幸いです




