028 アシキカコノモノタチ
―――様々な世界に人間は存在しているだろうが、その世界のモノは飛び切り悪意に満ちていた。
人の成果を奪い、欲しいものがあれば力づくでものにして、何もかも強欲に、貪欲に、様々な欲望を煮詰め切った最悪の存在であった。
そのうえ、より一層邪悪なことに、単純に弱ければまだマシだったが…様々なものを奪いつくしていくようなものたちの力もまた、奪った力でより強化され、災害のように全てを滅ぼし尽くしていく。
長寿を得られるのであれば不死鳥の生き血を吸いつくし、神通力を持つ鬼がいればその源となる角をへし折り杖と変え、深淵の知識を持つ異界の神であれば知識を引き剥がし書物と変え…ありとあらゆるものを様々なものに変えて、自分たちのモノであったかのように奪いつくしていく。
…そしてその中には、一族の目が全て、魔眼と呼ばれるものを宿している蜘蛛の姫もいた。
「…それが、ハクロか」
【そうよ。…あの子はあの子で、蜘蛛の一族…皆、様々な不思議な力を持った魔眼と呼ばれるものを宿す者たちばかりだったけれども、私欲に狂うことなく、穏やかで優しい者ばかりだった】
破壊の力を持つ魔眼は周囲の環境を整えるために、石に変える魔眼は崩れ落ちそうな巣を一時保護するために、魅了の魔眼は争いを止めさせて話し合いの時間を作るために…扱い方によっては世界すらも手中に収めかねないほどの力を宿していても、決して力に溺れることはなく、むしろその世界では滅多に見られないほどの心優しい者たちしかいなかった。
だが、その平穏は奪われた。
包丁が、使いようによっては調理のための道具にも、凶器にもなるように、魔眼もまた同じように扱うものによっては結果を変えていく。
その結果を悪しき方向に使うためだけに、その世界の人間は彼女たちに手を出した。
まともな相手であれば、危害を加える前に潰されて終わった。
だがしかし、最悪なことにその世界の人間たちがまともではない。
数多くの者たちを滅ぼし、奪いつくしてきた者たちだからこそ…例外なく、一族は滅ぼされた。
「滅ぼされ…って…」
【…何もかも、例外もなくよ】
―――奪いつくされた者たちの末路は、悲惨なものだ。
その世界の人間たちの強欲の餌食になり、求められた部分だけ奪いつくされたら、後は遺棄されるだけ。
ただし、絶命はしきっておらず…わずかに命が残った者たちが、特定の場所へ集められる。
強欲な者たちでも、廃棄場所はこだわり切らなかったのだろうか。
その場所には、奪われ尽くした者たちが命の灯を残り僅かにして、終わりを待つだけ。
そこに追加されていく、奪われた他の者たち。
己の力を、家族を、命を、様々なものを人間たちに奪いつくされ、集っていく怨念。
恨みつらみ、その世界に集う人間たちへ向けての思いが、奇跡を起こす。
【…なんか、呼べちゃったんですよね、悪魔。それで、まだ息がある者たちの命をつなぎ合わせた結果、その場にわたくしたちが…大魔王が爆誕したのよね】
「後半説明雑ぅ!?」
何にしても、息を吹き返して…その場に生れ落ちた大魔王たちを前に、その世界の人間たちは為す術もなかった。
奪われたのであれば、奪い返される覚悟があっても良かったが…あろうことか、最後まで何もかも使い潰したようだ。
そのせいで、倒したとしても奪われたものは全て戻らず…もう、捨てるしかないものになっていた。
…復讐できたのは良い。
だがしかし、その後に何も、残されたものが無いという後味が悪い結末しかないのであった…




