027 話を聞かない彼女の話
―――あっさり攫われたが、待遇自体は悪くはない。
「むしろ今、ハクロがここを探すために無茶をやっていないかが不安になる…」
【自分の身の心配よりも、そっち?】
どこかの洞窟内のようで、周囲に魔法のようなもので光の玉を発生させ、ひとまず話し合いの場を作るスキュラもとい、リリスが考え込みながらそうつぶやく。
ルドラが攫われた場所は、彼自身直ぐに見当を付けづらかったが、相当離れた場所ではないことを祈りたい。
というか、下手すればこれまでの所業を考えると、ハクロがやらかしかねない不安が、自身の安否以上に湧き出ていた。
「だって本当のことだしな。…ハクロと同郷のモノなら、わからないのか?」
【…んー…あの子が人間を心配する…がちょっと、想像しにくくもあるのよねぇ】
ルドラの言葉に対して、リリスが首をかしげながらつぶやく。
【だってハクロちゃん…あの子は人間が、死ぬほど嫌いなはずだもの】
「はぁ?」
リリスの言葉に対して、思わず間抜けな声を漏らすルドラ。
これまで彼女と生活してきた中で、そのようなそぶりを見せたことが無いからだ。
「え?人間嫌い?嘘だろ、だってハクロはこれまで、そんなそぶりを見せなかったじゃん。いや、前に羞恥心づけの一環で、女子生徒たちからの目が怖くなったとか言っていたことがあったが…」
【何をしたのよ、それ。確かに、羞恥心に関しては…ええ、まぁ、人間が滅びたあの世界だと、異性の目がなかなかないからってのはわかるけれども…ねぇ、本当に心当たりはないのかしら?】
「と言われても…」
リリスの言葉に動揺するも、いや、待てよと、ルドラは思う。
リリスに問われる中で、ふと思い出すのは、つい最近の子供たちとの触れ合い。
慣れないので単純に疲弊しただけだと思っていたが、いつもと反応がどこか違った気がするのだ。
それに、召喚陣で召喚してすぐの時の反応も…声をかけ、交わした瞬間から人懐っこさはあったように見えたが、その前の短い時間の間が、違ったように見えたのを思い出す。
「ちょっとだけなら、あるか」
【ええ、その認識があるなら良いわね。…あの子は、人間に全てを奪われたのだから憎んでいるはずだもの】
この世界に来てわずかながらも、どれだけの差がこの世界の人間とあるのかリリスは理解しつつも、ルドラへ目を向ける。
【だからこそ、気になって貴方を攫ったのよねぇ。あの子が敵意を持たずに、むしろ守ろうとする心が見える人間がいるのに、驚かされたもの】
偽りのない、本当の言葉。
彼女のことを知っている身であるからこそ、正直言って人と仲良くしているこの状況が心底驚いたのだ。
【ええ、せっかくだしちょっとだけわたくしが話してあげましょうか。あの子の過去に関して】
「いや、別に良い。そういう話は、本人から聞いたほうが良いし、彼女が話す気が無いなら、それはそれでと思っているからな」
【ずいぶんバッサリ断るわね】
「普段のハクロを知っているからこそ、人嫌いだというなら…絶対にロクデモナイ話の可能性があるからな」
優しいハクロ、彼女が人嫌いだというのならば、どれほどのことがあったのか想像したくはない。
【ふふふ、あの子のことをよくわかって、想って言っているのね。…気に入ったわ。でも、なら良く知ってもらうほうが良いし、見てもらうわね】
「え”?」
だがしかし、そんなルドラの言葉に対して、思いっきり気にせずにリリスは彼に足を巻き付け手繰り寄せる。
【大丈夫、ほんの一瞬の間に、ある話を見せるわ。魔法ってこういう時に、話を略すのに便利ね】
「まず人の話を聞けよ!?」
聞かない意思を見せたにもかかわらず、話を聞かない滅茶苦茶な相手。
思わずツッコミを入れたルドラだったが、容赦なくとある話を、魔法で流し込まれるのであった。
―――人間によって、大切なものを奪われた大魔王たちの話を。
…シリアスをちょっと投げ込んでいく予定で、次回に続く




