025 そんな気軽に
―――従魔を召喚した後の、召喚陣は基本的に破棄される。
血印を利用した様式のために、そのまま使用しても既に使用済みの状態で意味を成さないからだ。
ただ、時として異例の召喚が起きてしまった時には、研究目的で保管に回されることがある。
そう言った召喚陣はしっかりと、万が一に備えて封じられた状態で保管され…このアルバニア王国内では、従魔の研究を行う研究所内の奥深くに封印されるのである。
同種の従魔を狙って、その召喚陣を用いての召喚を試みる輩もいるために、非常事態に備えてではあるが…時として、予想外のことも起こりうる。
そう、今まさにそれが…
―――ドッゴォォォォォォン!!
「「「な、な、な、なんだぁあああああああああ!?」」」
突然建物全体に響き渡った、強烈な破壊音。
「何が起きた、今の音は何だ!?」
「敵襲か!?はたまた研究成果を狙う悪党か!?」
「実験の失敗の爆発か!?ズラデスラ博士の最悪のアフロ事件の二の舞にでもなったか!?」
職員たちがあわただしく蠢く中、次第に情報が集まってくる。
どうやらこの施設内の召喚陣を保管している場所で、爆発が起きたようだ。
「保管場所!?あそこに爆発物なんてないぞ!!」
「なら賊の方か!!」
様々な可能性を考慮して、衛兵やらなんやら呼び出しつつ、現場へ急行する。
ものによっては貴重品が数多くある場所のために、ある程度の防犯はしてあるが…
「んなっ…こ、これは…」
全員がたどり着いた時にはもう、惨状しかなかった。
非常事態に備えて鋼鉄の扉が設置されていたにも関わらず、見るも無残に破壊され尽くしていた。
しかも、破損の状態から見るに、室内の方から出てきたのは間違いないだろう。
「何者かが、中から出てきた…?いや、そんなわけあるか。今、誰も使っていないはずだぞ」
「あるとしたら、保管されている召喚陣ぐらいだが…何かが、召喚されたのか?」
「だが、呼ぶ者は誰だ?召喚陣は、単体で発動するわけがない!!」
形跡から察するに、室内から何かが飛び出したのは間違いない。
しかし、人が入った様子はなく、ならば何者かが召喚陣を利用して中から破壊した可能性もあるが、それでも人がいるはずであり、見当たらないのならばありえない。
「何者かが、召喚されたにせよその痕跡が…お、おい、召喚陣保管場所が、滅茶苦茶だぞ!!」
「おっげぇ!?もしかして、これのどれかから出たのか!?誰のかわからない従魔、いや、召喚者が分からない以上は異界の何か別の怪物が出た可能性もあるぞぉぉぉぉ!!」
「急いで調べろぉおおおおおお!!」
かなりの大騒ぎになるが、彼らはすぐに気が付けない。
保管されていた召喚陣のうち一枚が…ルドラの血印が付けられたものが無いということを。
いや、そんな事よりも、別のことに気が付くことはない。
騒ぎの中でゆらりと、透明な何かが揺れ動き、職員たちの中に紛れて出て行ったものがいるということを。
【…出るのは良かったけど、どこから外に出られるかわからなかったからよかったわね】
【壁ならぶち壊していけばいいが、地下とかの可能性もあったからな…まぁ、出られたから良いか】
ぼそりとつぶやくその声を拾う者は無く、そして拾われる気もなく、姿なき者たちはその場を後にするのであった…
騒ぎの中で抜け出す者に気が付けない
そしてその騒ぎは外へ飛び火していき…次回に続く
…アフロ事件は後で閑話に書きたいな




