021 ふと思った、その質問
―――人々を襲った、突然の街中の魔物襲撃事件。
しかし、それでもなお人々の抵抗によって無事に収束し、犠牲者は抑えられた。
0にできなかったのはそれこそ初動の方でどうしても対応できない者や、仕掛けるために駒にされたものもいるため、そこは納得するしかあるまい。
まぁ、人為的なものだったという情報自体は箝口令が敷かれて、ある程度の混乱も防ぐ処置がされたが、それでもどうしても全てが出回らないわけではない。
かつて賢者が人の口には戸が立てられない、喋る九官鳥と言う鳥には口輪が付けられないと言っていたらしいが、そのとおりであり、完全に噂が消えることはない。
「どこかの国が仕掛けた陰謀だの、巨大生物を見かけたのだの、様々な話が出ているけど…」
【余計な混乱が無いように、いっそ大きな話題と言うことで、従魔学科の全員が、初動の避難対応で無事に動いたことの軽い表彰が行われるようですね】
目には目を、歯には歯を、噂にはより塗りつぶしやすい話題を。
その目論見が垣間見えなくもないが、それでも悪い話ではない。
まだまだ従魔を出したばかりのひよっこたちであるにもかかわらず、避難誘導で活躍した生徒が多かったようで、まとめて表彰が行われることが決定したのである。
【特に、私たちが一番魔物を討伐したのもあって、一番良いのを貰えるみたいですしね】
「まぁ、一応は戦闘はなるべく避けるようにという命令が出ていたにもかかわらず、ガンガンやっちゃったのはあるが…不可抗力として判定されたのは良かったか」
やったことは良い事でも、規律違反。
とはいえ、様々な功績も加わって、おとがめは今回は無し。
良い方向に転んで良かったが…あの騒動でわかってしまったこともある。
「と言うか、あの大きな大魔王のサイズが本来の姿なら、そっちで過ごしたほうが楽なんじゃ?」
【主様、日常生活において巨体と言うのは、何かと不便なんですよ…】
はぁぁっとため息を吐く、ハクロ。
その姿はいつものアラクネのものだが…大魔王としての姿ではない。
まぁ、そもそも彼女の言うとおり、あの巨大な姿で過ごすのは日常生活において不便しかないだろう。
人間サイズ…いや、一応は従魔のサイズを考慮して問題なく過ごせる場所もあるとはいえ、大魔王としてのあのサイズは流石に想定されていない。
「だから、種族偽装…アラクネとしての、ある程度小さくなったサイズになっているんだな」
【ふふふ…主様も巨人みたいになれば、あのサイズの不便さがよ~~~~~くわかりますよ】
「かなり重みのある言葉だな…大魔王なのに、日常生活に支障しかないって…どんな魔王だよ」
【そういわれても困りますよ。あの世界において、なりたくてなるわけじゃなくて…本当に持っている力で決まりますからね。ああ、でも私が主様の下にいる限りは、不在になりますので別の誰かが付いているかもしれないですが…別に良いですね。むしろ、押し付けられればラッキーですよ】
「ラッキー扱いされるほどの、押し付けされる大魔王の座かぁ…」
ハクロ曰く、元居た世界では持っている力でその格が決まるらしい。
その中で彼女は三大魔王…「大魔王」ならば三大「大」魔王と呼びそうなものなのだが、語感が悪かったのかその総称で呼ばれるほどのモノだったらしい。
【他二人は、大魔王の座で満足してましたけれどね。あの鬼畜に魔法馬鹿は、自身の力をより高めるために、むしろその座を狙ってくるような有象無象の輩と戦うことを楽しんでましたし…】
「三大なら、確かにあと二人はいるんだな…と言うか、呼び方酷くない?仮にも、同じ大魔王の同僚というべきものだったんだろ?」
【粉砕玉砕大喝采しそうな人と、魔法の深淵を探求するために長文詠唱と思えるような話をしてくるような人と、私が話が合うと思いますか?】
ああ、うん、なんかわかった。
優しいハクロがそこまで言うのならば、確実に性格の不一致と言うべきか、仲が良くない相手だったのだろう。
「そんな人たちとよく一緒の大魔王の座にいたよね、ハクロ」
【仕方がなかったというか…んー、主様が聞いても、面白くはない話ですよ。一応、ある程度の目的の一致でやったこともありますが…ええ、もしも彼女たちがこの世界に来たら、世界が滅ぶかも、と思ってもいいですけれどね】
「かなりシャレにならないことになるのかよ…そうだとしても、そんな都合よくやってくることが無いとは思うが」
従魔召喚に関して、同じ世界の従魔が呼び出される確率と言うのは、そこまで高くはないらしい。
様々な世界の従魔がいるからこそ、多種多様な魔物に対応しやすいそうだが、だからこそ同郷の従魔と言うのは中々出なかったりするそうだ。
たまに同郷の者同士だと、その世界で敵対関係だったりすれば…目も当てられないこともあるようなので、そこは要注意でもあると聞く。
【ふふふ、そうですね、あの脳筋鬼に魔法蛸が、主を求めてやってくるなんてことは…無いですね‥‥‥ムコサガシナラトモカク】
「さらっと毒を吐くけど、そこまで言うのか。あと、何かぼそっと言った?」
【いいえ、何も】
―――ええ、確かにそうです、主様。
でも、彼女たちとは協力していることもあるので、完全に嫌い合っているということは無いです。
何故ならば、あの世界において共に人間を滅ぼしたこともありますから。
欲深く、愚かで、奪いつくしてきた、許しがたい者たち。
私たちそれぞれが、彼らによって奪われ、失ったものがあるからこそ、大魔王になるだけの力を得たのです。
けれどもその話は…主様には聞かせるべきではないもの。
心の奥底で、ルドラに内緒にするように、そうつぶやくハクロ。
大事な主が知らなくても良い、血なまぐさい話。
あれはあの世界だけで十分なことであり、ここで思い出す意味もない。
それでもふと、ハクロは自身の今は何もない額を撫で、奪われ、潰したものを少し思い出してしまうのであった…
思うことはあれども、過去は聞かせづらい
そのことを全て話せる日はあるのか
とにもかくにも、次回に続く
…えっぐい場合ってGつける必要あるのかな…回避したいかなぁ‥




