020 後片付けは大人たちの頭痛の種
…結論から言って、急に襲ってきた魔物たちは、鎮圧された。
従魔騎兵団の手や、迅速な避難、そもそも魔物たちをこの地に呼び寄せていたという危険なマジックアイテムの破壊なども積み重なって、建物の倒壊等の被害があれどもそこまで大きくはない。
しいて問題を言うのであれば…
「え~、では本日は魔物襲撃事件の報告に関して…出てきてしまった二つの問題を議論したいと思います。皆さま、心の準備はできてますでしょうか」
「胃の準備が出来ておりません」
「胃薬の支給を要求します」
…出てきた内容に関して、国の主要人物たち全員の胃が爆破されたかのように、色々とツッコミどころ満載の激重案件になっていたというぐらいか。
犠牲になったのは民でも物でも無く、政治を担う者たちの胃であった。
何しろ、今回の騒動に関しては調べれば調べるだけ、頭の痛い問題しかない。
「マジックアイテムによる、魔物の強制召喚か…戦略的に恐ろしいな」
「従魔と言う対抗手段があるとはいえ、街中で使われては、場合によっては国一つが落ちかねんぞ」
騒動の中で発見された、とあるマジックアイテム。
それが今回の騒動の原因だということが判明したが、それならばどこが仕掛けたのかという話にもなる。
「考えられるのは、近隣の軍事行動が活発になっている帝国か、あるいは従魔を嫌悪してまるごと消そうとしているとある宗教国家か、はたまたどこかの組織…」
「どれだとしても、このようなマジックアイテムが開発されている、と言う事実は変わらんな」
「あってはいけないような、禁忌の代物ともいえるもの…それが作れている以上、今後に注意しなければいけないか」
マジックアイテムでホイホイっと気軽に人々を襲う魔物たちを、街中に解き放たれてはたまったものではない。
普通の魔物の襲撃ならばいざ知らず、不意打ちのような発生はやめてほしい。
「そのうえで、更に出てきたのが…あの従魔、ハクロと言ったか。彼女の力に関しても、さらなる追加が出たと」
「わぁお…」
しっかりと、このアルバニア王国の街中でも防犯目的のために、記録水晶は用意されており、何が起きたのかばっちり記録されている。
そのなかで、映し出されていたのは…大魔王となっているハクロの姿であった。
「力が強すぎたが、まさかそれでもまだ上があったとは」
「これだけの強さ…いざと言う時には心強くもあるが、同時に敵に回ったら恐ろしいな…」
いまでこそ、ハクロはルドラの従魔であるからこそ、彼の制御下で力を振るえる。
しかし、そのルドラの所属が変わった場合…他国になったうえに、敵対国に行ってしまった場合、その強すぎる従魔の牙が、この国に向きかねない。
「最終手段、従魔の主を屠ることで、従魔もこの世界から消すという手もあることはあるが…」
「その前に、全力で滅ぼされたらたまったものではないな」
くしくもその判断は、とある国の皇子と同じもの。
うかつに敵に回るようなことがあれば、それこそ滅亡の未来しかないだろう。
「…一応は、我が国の国民であり、将来的な従魔騎兵団の一員でもある。裏切るようなことはないと思いたい」
「しかし、わからんぞ?他国にスカウトされ、そのまま出ることもある」
「扱いによっては、普通に敵対国家へ向かう事例が無いわけでもないからな…」
従魔を操るとはいえ、その主の身は人。
人ゆえに常に同じと言うわけでもなく、いつその心が変わってもおかしくはない。
「幸いなことに、彼には悪意あることが無い事だろう…」
「「「確かに…」」」
これが力に溺れて己のためだけの、とんでもない悪事を働くような悪人であれば、もっと悲惨な未来があったに違いない。
とにもかくにも、それならば今は、彼が悪意に染まることが無いように、敵意を向けられないように様々な策を張り巡らすことにするのであった…
「…だが、間違いなく秘密にはできぬか」
「ええ、そうかと。他国でも情報を入手すれば手に入れるために動く可能性は大いにあると」
「強さ以外にも美しさとかあるからな…」
「はっくしょん!!」
【ぴくしょんっ…!!】
「…なんかくしゃみ出たけど、何でだろう」
【誰か、私たちを噂しているのでしょうか?】




