015 悪意の嵐
【----ウゴォォォォォォウ!!】
【オォォォォォォォォウ!!】
「…ふむ、ある程度の転送指定も可能っと。良いデータが取れるな」
…水晶から壁に投影されている映像を見ながら、魔物の襲撃に遭っている街中から遠く離れた場所にて、その男はそうつぶやく。
軍事転用が出来そうな代物とはいえ、ある程度の制御が出来なければ話にはならない。
捨て駒は必要経費だと割り切りつつも、その後の方で扱えなければならず、色々と試している真っ最中だが、今回のテストはうまくいったようだ。
「ついでに、あの従魔…ハクロとかいったか。美しい従魔を穢すようなのは心から惜しくは思うが、君がどのようなものなのか調べるためにも、この状況を乗り切ってほしいところだ」
映し出されている魔物たちの襲撃…それに対して、囲まれているのは一人の主に一匹の従魔。
男にとっての関心は彼女の背中に騎乗している主よりも、彼女自身…アラクネの、ハクロと言う名の従魔である。
過去の歴史を見る中でも珍しく、それでいてその戦闘能力も高い。
学園での模擬戦でもかなりの好成績を残しているが、だからこそその全容を知りたくなるのは当たり前のことだろう。
「おっと、グレートバイソンを真正面からつかんで、投げ飛ばすか…あの細腕での怪力もすさまじい。ふむ、ゲイザーたちの光線も、目の動きを見て回避…いや、対応力がすさまじ過ぎるだろ」
彼女に関してしっかりと調べるために、魔物たちの転送範囲をその周囲に限定して大量に差し向けたとはいえ、この戦いぶりは目を見張るものがあるだろう。
一撃で家も山も何もかも吹き飛ばす突進力のある牛のような生物と正面からぶつかり合い、回避不能な凶悪な光線を放つ目玉の化け物にはさらに速度で上回って命中させない。
岩を投げ飛ばす猿の攻撃もまとめて網で受け止めて投げ返し、空から襲い掛かる翼には糸で作り上げた鎌を振るって切断し、毒を撒く者には回転して全てを吹き飛ばす。
一介の従魔にしては桁違いの、それこそ魔物以上の力を振るう彼女に対して、その様子を観察していた男ですら感嘆してしまう。
「いや、まさに魔王の所業とでもいうべきか?あんな、まともな従魔とは思えないほどの強さを持った従魔とは、本当に何が出るのかわからないねぇ」
彼女の情報を知れば知るだけ、どれほどのモノなのか理解し、同時にその危険性すらも目に見えてくる。
今回利用した、魔物たちをあちこちから呼び寄せるマジックアイテム以上の脅威と言っても差し支えないほどだ。
―――それゆえに、それ以上もっと知りたいという探究心はあれども、これ以上放置するわけにはいかない。
今確実に、ここで消さなければ、今後の活動に大きな支障をきたす存在になると断定できる。
「転送範囲、縮小。ターゲットはアラクネ、およびその主…いや、ここは主をピンポイントで狙えるほうが良いか」
従魔の存在は脅威だが、一つ大きな弱点がある。
それは、主の生命が失われたとき、この世界に存在できなくなるという事。
召喚によって呼び出された存在だからこそ、召喚した主を起点にしてこの世界につなぎとめられる。
つまり、もしも主が失われればその場で消え失せるのだ。
…一応、例外が無いわけではないが、それでも強大な従魔を持つ相手であれば、その主を狙うのは理にかなっている。
魔物相手ならばいざ知らず、その力が人に向けられた時の危険性は、人が一番よく理解しているからこそ、どうすればいいのか様々な策が練られているのだ。
「ゲイザーの光線も、あの目の位置で把握しているからこそ…少し離れた場所から狙うものを作ればいい」
死角からの強襲で、まとめて葬り去る。
それが恐らくは最適解であり、同時にこの手段が通用しなければ、まさに手に負えない相手と断定もできる。
そうなる最悪の未来を避けるためにも、多少の雑魚は出して最後までバレないようにさせつつ、最後のデータ収集になるかもと思い、全力で色々とデータを取っていくのであった…
こういう対処法は既に編み出されている
それゆえに、魔物の次に人間同士の争いになった時に対応しやすい様子
でも、これはどうなるか…次回に続く!!
…さて、もうちょっとでハクロに関して大きなもの出せるかな




