014 増えよ増えるな
―――どこかに、この大量の魔物を発生させている場所があるかもしれない。
(…ええ、主様のその考えは当たっていますね)
糸を使って高い建物に飛び移りつつ、周囲を見渡しながらハクロは心の中でそうつぶやく。
自身の主であるルドラも周囲を見渡して探しているようだが、人間の視力の限界もあるため、見つけにくいだろう。
だが、ハクロは違う。
蜘蛛部分はともかく、美しい女性の部分が人型とはいえ、その性能が人の形に収まっているわけではない。
周囲はまだ薄暗く、月明かりや星々の光、魔物たちの襲撃によって起きた火災があっても、発見しづらいだろう。
その状態でも、ハクロの目は関係なく見渡せる。
蜘蛛の従魔として、獲物を探す目で徹底的に注意深く確認していけば…
【…見つけました!!あのあたり、いなかったはずの魔物が急に出現したのを確認!!他にも出てきている様子ですし、あそこが発生源です!!】
「わかった!!ハクロ、今の位置をしっかり地図に記載!!すぐに学園へ戻り、先生たちへ報告して上に対応してもらおう!!」
【了解で…あれ?ここに直接私たちが、出向かなくていいんですか?】
「流石に無理だ」
ルドラとて、ハクロの強さを知らないわけではない。
あの模擬戦で、どれだけの従魔を倒してみせたかわかりやすいものがあった。
けれども、ここは模擬戦ではなく実戦の場所であり、混沌とした魔物たちの襲撃場所。
どこからともなく大量に出てこられる場所へ、単身突撃したとて最悪の結果になる可能性が大きいのは分かるのだ。
「だからこそ、僕らじゃなくて、本当に大人たちに頼る。極力戦闘を避けて避難を誘導するのがそもそものこの場所での指示だし、やばい事態になったら全力で逃げるしかないからね」
【なるほど…わかりました】
…ルドラの言うことが理解できないわけではないし、最適解ともいえるだろう。
まだまだ自分たちが未熟だというのを理解しているからこそ、間違っていないはず。
(…ですが、悪意はそれでも襲ってきますか)
ルドラの判断に従い、すぐに地図に魔物の発生源の可能性が高い場所を記載して学園へ戻ろうとしたときに、ハクロは気が付いていた。
自分たちを見る、何者かの視線を感じていたことを。
人影はない、モノはない。でも、間違いなく…この視線は、自分がいた世界で感じたことがあるものだ。
(悪意ある…滅ぼした人間たちのモノ。…どこの世界でもこういうのはあってほしくないのですが…)
【…不味いですね、主様、戦闘許可を】
「え?」
【どうやら今、襲われます】
感じていたその視線の動きに変化があった。
それは間違いなく、今からこちらを襲うものになっている。
そう判断し、ハクロが素早く跳躍して糸で武器を作った次の瞬間…
【【ギャゴゲエエエエエエエ!!】】
ガァァアンッツ!!
「うわあっつ!?こ、これは…」
【どうやら、既に狙われて囲まれていたようです】
どうやらこの騒動を引き起こしたものは、ある程度の魔物たちの呼び出す場所を調整できるらしい。
気が付けば、ハクロとルドラの周囲には、多くの魔物たちが目を向け、攻撃を仕掛けるために動き始めていたのであった…
戦闘を避けたかったが、囲まれてしまったようだ
この窮地に対して、どう動くか
次回に続く




