010 嵐の前
「え?告白されたの?」
【はい】
…授業も終わり、ゆったりとした時間が流れる放課後。
今日はハクロの手入れをしてあげようと、彼女の蜘蛛部分のブラッシングをルドラが行っていると、ふと思い出したかのようにハクロがそう報告してきた。
「しかし、従魔に告白ねぇ…ハクロは確かに美人だけど、まさか堂々と正面から来るとは」
【私も驚きましたよ。従魔を持っておられない方のようでしたので、主様からの鞍替えでも目論んでいるのかもと思いましたけどそうでもないですし…悪意が無かったです】
従魔召喚の儀式で、従魔を呼び出せなかった生徒なのだろうか。
一応、従魔を呼び出せなかった人であっても、場合によっては従魔がいるものから様々な事情や手続きを経て譲り渡される事例も無いわけではないが…悪意が無いのであれば奪うとかそっち方面ではなく、純粋な告白だったのだろうか。
【まぁ、興味が無いのでお断りいたしましたが。私は主様の従魔ですし…あとは単純に、興味が無いので】
「わぁ、ばっさりと」
人によっては、告白は一世一代の大勝負なのだが…うん、振られた人は哀れむしかできない。
と言うかそもそもの話、従魔相手に告白か…
「…そういえば、そういう事例が無いわけでも…どうだったっけか」
【主様にしては、妙にはっきりしませんね?】
「人の業の深さが何とも言えなくてな…」
…そう、従魔に対して恋をする前例が、0ではない。
ただし、基本的に従魔の姿形が獣が多いために実るわけでもなく、中には刀傷沙汰になったものだってあるのだ。
「誰が何を好きになろうが、人の勝手。とはいえ、恋愛が簡単ではないお貴族様とかだと、婚約者が嫉妬で、従魔を刺殺したとかいうからな」
【ひぇ…物騒ですよ、それ】
「恋は人を墜とす可能性も秘めているらしいからね。よく話題に上がる、過去の功績が讃えられている賢者だって、恋の前には敗れ果てたという話があるし…」
それだけ、恋は盲目と言うべきか、恐ろしいものなのかもしれない。
でも、そう考えてもハクロに対してだと…無理はないのかもとルドラは思う。
従魔であり、下半身に蜘蛛の身体があるとはいえ、見た目は美女。
性格も悪くもなく、人懐っこく可愛らしい面もあり、一緒に過ごしていて楽しいのだ。
そう思いながら、ルドラはハクロの方に目を向ける。
「…ハクロを彼女にできたら、確かに良いのかもな。従魔だし、玉砕する未来しか見えないけど」
【当たって砕けるのは勝手ですよ。…ええ、お望みでしたら、主様の告白も受け付けますよ。その場合は、バッチリOK即婚姻もウェルカモンです】
「言葉、おかしくない?どこで覚えたの、それ」
【告白後に、人間ってどういう風に嫁いだりするのか気になりましたので、いくつかめぼしい本を探して読んで、そこから得た知識です】
絶対に何か、色々なものがごちゃまぜになって間違って覚えられている気がしなくもない。
とはいえ、訂正したとしても意味がないだろうし、ルドラはハクロに対して特に何も言わず、そのままにしておくのであった…
【---ええ、本当に面白いですよね。人間って。主様の告白なら受けたいですし…ああ、どうしてそれで私の世界では…】
…ぼそりと、ハクロがつぶやいた言葉には、気が付かないのであった。
色々と思うが、彼女への印象が良いのには変わらない
そして彼女側の方でも、色々と…
…そしてそろそろ、騒動の予感がしつつ次回に続く




