表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

迫る影


 サラはきょろきょろと辺りを見回した。待っていてと言われたものの、特に何かをするでもない。店のものには極力触れないようにしながら、店の中を少しだけ歩く。


 店内はパンを並べる棚やショーケースの枠、カウンターに至るまで、赤みのあるチェリー材で統一されている。その色はこの店の女主人であるロゼッタの髪色によく似ていて、温もりに溢れていた。


 初めて来る場所なのに、この空間は何故か安心出来る。サラはそれが不思議だった。


 暫く店内を眺めていると、パッ、と外の通りが突然明るくなった。サラが振り返ると点灯夫が、町のガス灯に明かりを付けて回っている。


 革命前はただの飾りに成り果てていたガス灯も、今では役目を取り戻して夜のラヴァンド・ド・メールを優しく照らしているのだ。


 首都でも見慣れた光景ではあるが、その明かりは無機質に感じられる首都のものより、何処か温かみがある。


 それもサラは不思議だった。


 今度はショーウインド越しに点灯夫の仕事をじっと見ていたサラだが、ふとガス灯の下に佇む一つの影を見付けた。それを見たサラの瞳はみるみる内に暗く沈み、呼吸は浅く、辿々しいものへと変わっていく。


『帰ろうね』


 カミーユの言葉を、サラは思い返していた。そして静かに下を向く。


「私の、帰る場所は……」


 カランカラン、とドアベルの音が鳴った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ