表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/18

ゴミ溜めと青空


 妹が生まれた日のことを、今でも鮮明に覚えてる。天気は晴れ。クソみたいな国の、クソみたいな町で妹は生まれた。だけどその日は今までのどんな日よりも、晴れやかで気持ちの良い日だった。


 ふかふかのほっぺ、抱き締めると何故か甘い匂いがして、いつもは泣きじゃくる癖に、俺が抱っこすると機嫌が良くなるのが可愛くて、可愛くて。


 妹は絶対に俺が守る。そう誓った。


 妹が七才になる頃、両親が流行り病で次々に亡くなった。自分達の生活が苦しい中、誰かを助ける余裕なんて誰にもなくて。その上流行り病に罹った両親と暮らしていた俺達は、町では腫れ物扱いだった。


 両親を亡くし、住む家も失くし、俺は幼い妹とゴミ溜めのような場所で日々を過ごした。


 パンを盗んだ。


 金を盗んだ。


 盗みもスリも数え切れないくらいやった。


 罪悪感なんてものを感じる余裕もなく、只々必死に、毎日を生きていた。夏は暑さで死にかけて、冬は寒さで死にかけて。いっそ死んで楽になりたいと、何度思ったか分からない。それでも踏み止まれたのは、妹の存在があったからだ。


 妹は絶対に俺が守る。そう誓ったからだ。


 でも痩せ細った腕じゃ金やパンは盗れても、簡単に力で捻じ伏せられる。人攫いに妹を連れて行かれそうになったときも、必死にしがみついて、叫ぶことしか俺には出来なかった。


 泣いて助けを求める幼い妹に俺は叫んだ。


「大丈夫だ!絶対に助けてやる!絶対に兄ちゃんが守ってやる!絶対に!絶対に……!」


 殴られて鼻から血がドバドバと溢れて、蹴られた腹がズキズキと痛んだ。それでも必死にしがみつく。


 可愛い可愛い俺の妹。


 生まれた日のことを、今でも鮮明に覚えてる。


 天気は晴れ。


 クソみたいな国の、クソみたいな町で生まれた。


 だけどその日は今までのどんな日よりも、晴れやかで気持ちの良い日だった。


 目が眩むほどの快晴、澄み切った青空。


 皮肉にも今日と同じ空の色。


 視界が歪む。頭を殴らせたせいか。鼻血を出し過ぎたせいか。それとも、涙のせいか。


「返して、ください……」


 ふかふかのほっぺが大好きだった。


「返してください……!」


 抱き締めると何故か甘い匂いがする。


「返して……ください!!」


 俺が抱っこすると機嫌が良くなるのが可愛くて、嬉しくて、たまらなく……愛しくて。


「返して……」


 お前さえ居てくれたら、どんな地獄でも、俺は。



 必死にしがみついていた腕の力が抜けていく。


 ____あぁ、神様。


 父と母を亡くしたあの日から、信じることをやめた神様に気付けば俺は縋っていた。


 どうか、どうか、どうか___



 次の瞬間、目の前に現れたのは神様じゃなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ