7話 元魔王は家族の温かさに感動するようです
「……で、これはいったいどういう状況なんですか?」
困惑しながらもテーブルの席に着くリーシャ。テーブルの上には豪華な食べ物。飲み物にノーヴァ家が集まっていた。
リーシャの隣に座るのはノーヴァ家の第二王子にして勇者……そして元魔王のレイ。
その隣にはレイの兄であり第一王子のベル。
向かい側に座るのはノーヴァ家の当主でありリアベル国の国王であるロドフ。その隣に座るのはレイとベルの母親、アリサだ。
「なんか……俺が魔王討伐に行くと言ったら今日ぐらいは一緒にご飯を食べようって話になったんですよ」
「そ……そうですか、って……レイ様、魔王討伐を了承したのですか!?」
「レイならそうすると思ってたよ」
驚愕するリーシャに、レイの選択をわかっていたかのように優しい笑顔で言うベル。
リーシャは「そうですか……」とかなりシュンとさせながらも並べられていたご飯を口に運ぶ。
「それで、何で使用人のわたくしまで一緒に食べているのですか?」
「いつもご苦労様っていう意味も込めて……今日は他の使用人も休んでもらってるんですよ」
「そうだったのですか……それはありがとうございます。アリサ様」
「いいのよ。遠慮なく食べて!」
家族そろって食べるご飯は生まれて初めてということもあり、かなりテンションが上がっていたベルとレイ。
普段は仕事で帰ってこない両親、魔術に打ち込む次男。剣術に打ち込む長男だったのでそれぞれの直属メイドがそれぞれのご飯を用意して食べさせていた。
それが今回、こんな豪華な食事会ともとれる行事になっている。
理由はやはり……魔王討伐、そして勇者だと自覚したレイの存在が大きい。
(っていうか……勇者の力っていうのはいったい何なんだろう?勇者にしか使えない剣術を使用した以外にもあると思うんだけど……)
そう考えるレイだが、今目の前にはそれを聞ける人間がたくさんいる。
レイは向かいに座っているロドフに聞いた。
「父上……具体的に勇者の力って言うのは何なのでしょうか?」
「ん?そうだな。言ってなかったか」
口の中のものを呑み込み、布巾で口を軽くふく。
「勇者の力というのは、目に見える力と目に見えない力……その両方の事をさす。」
「どういうことですか?」
「簡単に言えば、目に見える力はレイが以前ベルに使ったとされる剣技。あれは勇者にしか使用できない。他にもさまざまな国で伝説があるが諸説もある。そして目に見えない力というのは、人を引き付ける力、死んでも諦めないという心だ」
「……?」
小首をかしげるレイにロドフは声をあげて笑う。
「ハッハッハ……目に見えない力っていうのは勇者によって違う。お前が勇者の力を持っていると確信したのはベルとの戦闘。だが、お前が生まれた瞬間から神々しい光を纏っていた。歴代の勇者の赤ん坊の時も同じ光を纏っていたとされている。」
「なるほど……要するに生まれた時から勇者だと分かっていたけど、勇者になれるのは本人次第という事ですか?」
「そう!勇者の素質を持って生まれてくる子供もいるが環境によって勇者になれない人間もいる。もちろん誰もがなれるというわけでもないからここが難しい所なんだよな」
ロドフの説明を聞いて、なんとなく理解が出来たレイ。
素質を持って生まれてきても自分でその才能を潰して勇者になりきれない人間もいるってことか。
確かにそうだ。数は多くないにしろ勇者パーティをつくることだって可能なはず。
それじゃあ魔王時代に戦ったあの勇者は……完成形だったという事なのだろうか?
(でもこの俺を倒したって事はそう言うことだよなぁ……俺があいつみたいな完成された勇者になれるかはわからないし……)
才能というのはどこでつぶれるかわからない。
ただただ魔術を極めようとしている今は、剣術をも学んでいるが果たしてそれが正解なのかもわからない。要するに賭けって事にもなるわけだ。
「ですが……俺が勇者になりきれない可能性もあるんじゃないんですか?」
レイはそう思いロドフやベルに問う。
しかし、この場にいるものは顔を軽く左右に振ってその問いを否定していた。
「「それはない」」
「……そんな一緒に言わなくても……」
「レイがなれなかったら今後勇者なんて現れないだろうね」
「そうだな。十歳で勇者の剣技を使うのは今までで聞いたことがないな」
「……そうですか」
あれはあんなにもすごかったのかと思い返すレイ。
思えば殺された瞬間の勇者の剣技を不完全だが使った……ってのは確かに異常だったのかもしれない。
並べられていたご飯をほとんど食べ終え、リーシャが家族全員分の飲み物を注ぐ。
「ごちそうさまでした!すごく美味しかった!」
「だね!家族全員でご飯を食べるってこんなにも楽しい事だったんだ!」
((うちの子が可愛すぎる!!!!!!))
両親は息子二人の会話を聞いて涙を流し、抑えていた感情があふれ出そうになる。
というかあふれ出ていた。
ロドフは切り替え、咳ばらいをしてレイを見ながら言った。
「レイ……出発はお前に任せる。連れていく人間もお前が決めろ」
「わかりました……色々と考えてみます」
「なんかあったらすぐに言ってね。お母さんにできることがあれば力になるから」
「ありがとうございます!母上!」
そう言って、両親はその部屋から離れていった。
その場に残ったリーシャとベルとレイ。
三人は顔を合わせて少し気まずそうにする。
「そっかぁ……魔王討伐に弟がこの国を出るのかぁ。やっぱ寂しいなぁ」
「わたくしも連れて行ってくださいますよね?」
「やめてくださいよ兄さん。まだいつ行くかは決まってませんから!」
「わたくしを無視……」
「連れていくかはまだわかりませんね」
レイは苦笑しながら言い、二人は少しだけシュンとする。
「一旦俺達も部屋に戻りますか」
「そうですね」
「それでは、おやすみなさい」
三人はそう言うと、各々自分の部屋に戻り……今日という濃い一日が終了した。
そしてレイは家族の温かさ……というのを実感し、感謝をして眠りました。
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