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最強の魔王が転生したら勇者だったので現代の魔王を討伐することにしました  作者: Mini


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3話 元魔王は勇者の素質を持っているようです

 レイ・ノーヴァが生まれてからすぐの事……


「どうする……あの子は魔術の才能が凄まじいぞ」

「剣術も学ばせたらいいじゃないですか」

「そういう問題じゃない……我々の家系はあの勇者の残した家系の生き残り。魔界と人間界が合わさったからといって許されることじゃない」

「やめてくださいよ!そんな言い方。私の可愛い息子をものみたいに扱わないで!」


 父親のロドフとその周りの人間が会議を開いている中……母親であるアリサが扉を勢いよく開けて乱入する。


「アリサ……!?」

「あなたが勇者の力を宿す子が欲しいというのも、剣術を学ばせたいという気持ちは分かります。ですが……それをまだ小さな子供に押し付けるのは違いますよ」

「……だが……」


 ロドフは視線を落とし、何も言えなくなっていた。

 妻であるアリサの意見がごもっともだと思ったからだ。

 しかし……ロドフは国の王様でもある。感情では動けないというのが事実。


「お前も知っているだろう。この国……そしてこの家系は勇者の末裔。それはもう民たちも知っているんだ。」

「……わかりました」


 ロドフの意見にアリサは目を瞑り、静かな怒りを見せながら口にする。


「もし、ベルのようにレイも剣術を学びたいというのなら何も言いません。あの子の才能を潰すようなことは私が許しませんよ」

「……」


 数秒の沈黙が続く。ロドフは頭の中で思考を張り巡らせ……小さく頷いた。


「わかった。これ以上は何も言わない……が、もしベルやレイに勇者の力が宿っていると分かれば————」


 ロドフの言葉に、アリサは何も言うことなく部屋を飛び出した。

 そしてその扉の横で……息をひそめるようにしてベルは話を聞いていた。



 そこから約十年。ベルは十五歳になり、レイは十歳になった。


(俺はもう勇者の素質がない……でも、お前は今年で十歳……可能性があるならお前なんだ)


 ベルはレイに向かって走りながら竹刀を振りかざす。


「……っぶな」


 レイは振りかざされた攻撃を避けるが、ベルはその動きを最初から読んでおりそこから素早く二連撃を打ち込む。

 ぎりぎりで受け止めたレイではあったが力の差で地面をこすりながら飛ばされてしまう。


「やるな……剣術の才能もあるよ。レイは」

「そんなことないですよ」


(これで初めて剣を握っただと?笑わせるなよ)


 ベルはぎゅっと竹刀を強く握り、構えを取り走り出す。


(よかった~……勇者と戦ってなかったら今のでやられてたな)


 十五歳にしてはものすごい剣術で攻撃を仕掛ける兄に対しレイは尊敬しながらも、次に来る攻撃に備え警戒する。

 互いの竹刀がぶつかり、ベルは煽るようにしていった。


「どうした!守るばかりじゃお兄ちゃんは倒せないぞ!」

「……っく」


 ものすごい猛攻……力の下限を失敗したら竹刀が折れそうだ。

 その点やはりベルはすごかった。一発でも当たれば致命傷になりかねない攻撃をずっと繰り出してくる。


(どうする……このままじゃ負けてしまう。弟としては負けるのがいいのかもしれないが、やはり勝負ごとになると熱くなってしまうな)


 かつて勝負に全振りした魔王……その血が騒ごうとして……冷静になり勇者の動きを見よう見まねで真似てみることにした。


(できるかはわからないけど……やらないよりはましだな)


「……ッ!?」


 その構えに、ベルは目を見開いて驚いていた。

 レイがとっていたその構えは……ベルですら習得できていない剣技だったからだ。

 

「お前……マジかよ」


(いや、あり得ない……剣を握ったことがない奴がその技を使えるわけがない!)


 そう思考するが、ベルはワクワクしていた。

 嫉妬心や悔しいという気持ち……様々なものが込みあがってきていたが一番は『俺の弟まじですげぇ!』だった。

 剣術の才能が優れているベルでも習得できていない剣術……その技をレイは発動しようとしていたのだ。


 レイが構えを取ったのと同時に、その竹刀は微量だが光る。

 そして……その瞬間……瞬きをする暇なくベルの背後にレイが立っていた。


「……嘘、出来ちゃった」

「……がはっ」


 その場でベルは跪き、レイが勝利した。

 レイはすぐに駈け寄りベルに手を差し伸べる。


「大丈夫ですか!ベル兄さん……」

「ああ、大丈夫だ。さすがだな……レイ」

「……その」


 視線を落とし心配そうにするレイを見てベルは差し伸べられている手を取り、立ち上がる。

 そして笑顔を向けて言った。


「完敗だよ!それにしても本当にすげぇな!俺でも習得できなかった技、どうやってやったんだ!?」

「えっと……その……」


(こんなところで見様見真似って言ったらすげぇ嫌われるんだろうな……どうやって説明しよう)


 正直、レイは成功すると思っていなかった。

 魔王と勇者が戦った時、勇者が最後に使った技……あれをまねてやったのだが何故か成功してしまった。

 竹刀も僅かしか光っていなかったし、一概に成功したとは言えないのかもしれないが。


「うん……やっぱり間違いないな」

「……?」

 

 空を見上げながら呟くベル。レイは不思議そうに小首をかしげる。

 それを見たベルは肩を竦めながら答えた。


「あの技はな、勇者が使ってた最終奥義なんだよ。勇者にしか扱えない伝説の技ともいわれている。お前は不完全ではあったがその技を使った。この意味が分かるか?」

「どういうことですか?」


 そりゃ、勇者が使っていた技を見様見真似で使ったのだからそうだろう。

 何かおかしなことでもあるのだろうか。

 ベルの言っていることがますますわからなくなり、レイは手を口に当て考える動作をする。


「お前はずっと魔術にうちっきりで話にも聞いたことないかもしれないが、うちは勇者の末裔……らしい」

「……はい?」

「ハッハッハ……そりゃそうだよな。そんで、お前は勇者の素質を持って生まれた王子って事だ。」

「……????????」


 ベルの言っていることが理解できないわけじゃない。いきなりのこんな数の情報量が頭の中に入り込めばこんな反応にもなってしまう。



 はい?今なんて言った?

 この家が……勇者の家系?

 なんでそれを今まで言わなかった?なんで俺は知らなかった?

 は?いや……待てよ。ちょっと待てよ。

 ってことは俺……元魔王で、現勇者ってことになるのか?は?ベル兄さんの方が勇者っぽいだろ。

 俺とは違って金髪で容姿端麗、才色兼備!って感じなのに、俺なの?


「俺達の母親は知ってると思うけど、自由に生きてほしいってタイプだ。俺は剣術を自ら学びお前は魔術を学んだ。きっとそれが大きく影響したんだろう」

「変に勇者の家系だって言ったら……混乱を招くと思ったから?」


 レイの言葉にベルは頷く。

 確かに母親は優しく好きに生きろって感じの人だ。それでも、教えないなんてことあるのか?

 そんなことを考えながらも、ベルは腰に手を当て空を眺める。


「勇者になるって息巻いていたけど……あんな技見せられたら認めるしかないな~。胸を張れ、レイ。お兄ちゃんはずっと応援しているからな」


すがすがしい表情で、兄はそう言うのだが、弟であるレイはきょとんとした表情をしながら……


「……ベル兄さん?何を言っているのですか?俺は勇者になんか興味ないですよ?」

「……はい?」


 レイがそう言うと、ベルは目をパチパチとさせ困惑していた。



 勇者だからなんだというのだ。

 正直俺はあの時最高魔術を使って負けた。その方がむかつく。



 魔術を高めれるなら今のうちに高めておきたい。それがレイの答えだった。

 ベルは軽く溜息を吐き、頭を振ってこの場を後にした。

 レイはこの時、あんなことになるなんて予想だにしていなかった。

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