2話 魔王が王子に転生したようです
英雄暦1053年……リアベル国第二王子誕生。
ノーヴァ家に生まれた王子……その子供は明らかに様子が変だった。
神々しく光に包まれながら生まれ、リアベル国の住む人間たち全員にすぐ知れ渡り……勇者の生まれ変わりなのでは?と噂された。
目を覚ますと、ベッドの周りには色々なメイド……使用人たちがその様子を見ていた。
「目を覚ますわよ!」
「うわぁ……なんて綺麗なお目目なの!」
「ライトブルーの綺麗な瞳……髪の毛はベル王子とは違い黒髪ですね」
「……あぅ……あ、あー」
「「「喋ったーーーーー!!!!!!」」」
「「「かわいいいいいいいいいいい!!!!!」」」
(ん?なんだ?これ……喋れない?)
自分の手を見ると、小さくてぷにぷにしている……
周りにいる人間たちの顔……手……全てがでかい。
(巨人族か?)
そんなことを思考するが……すぐに理解することが出来た。
俺は、赤ん坊になんだ……と。
こんなことがあるのか?……これは、転生ってやつじゃないのか?
話には聞いたことがあったが本当にあるなんて……それに、俺は元魔王なのに、こんないかにも王族っぽい家に転生していいものなのか?
そう……俺は魔王だ。というより、魔王だったものだ。勇者に敗れ、次に目が覚めたらこんなことになっていた。
正直に言おう……まっじでどうなってるのかわからない。
あれからどれだけの時間が経ったのか、どうなったのかさえ分からない。
わかるのは自分が赤ん坊として転生してしまったという事だけだ。
「全然泣きませんね……お利口な赤ちゃん」
(……赤ん坊は泣くのか?)
太古昔の記憶なので赤ん坊が泣くかなんてわからない……が、一応適当に泣いておくとしよう。
「え~ん!え~ん!」
「あ、泣いた!」
「そりゃ泣きますよ……赤ちゃんなんですから」
「ベル王子は今どこにいるんです?もうそろそろ来るといっていましたが」
「さぁ?さっきまでここにいたんですけど……」
メイドたちが困惑した様子でベル王子を探す。
すると、赤ん坊の横にあった枕が浮き……ベッドにひょこっと顔を出してきた人物がいた。
「ほ~れ!お兄ちゃんが来たからもう大丈夫だぞ!」
「ベル様!ここにいらしたんですね」
「弟が泣いたときは兄である俺の仕事だからな!」
(枕が浮いた……ってことは、この世界は俺が元々いた魔界なのか?)
「大丈夫だからなレイ!お兄ちゃんがついてるから!」
微かに周りにいるメイドたちに魔力を感じる。そしてこの中でも兄?のこいつが一番魔力が多い。
そこで、元魔王の俺は確信する。
(ここは……魔界だ)
そう確信した俺は、記憶をもとにその場で魔術を使おうと力む。
もうものすごく力んだ。
また一から魔術を研鑽して第二の人生を歩むことが出来るんだ……そう思い力いっぱい力むが、何かを悟る俺。
(あ、こりゃ魔術の前に……)
「(っぷ~)」
「「「ッ!?」」」
「……レイ……」
盛大にうんこした。
きっと魔術を使うことは出来た……と思う。
だが、赤ん坊の体は正直だ。げっぷによだれ、そして排泄物。
我慢というものを知らないのだ。
これはもう仕方がない。生理現象なのだから……。
しかし、この時……レイの兄、ベルは何かに気づいた様子でレイを見つめていた。
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そこから約十年の月日が流れ……城の誰も使われていない庭にレイは足を運んでいた。
「ま、こんなもんかな」
木魔術で何本か木を生やし、炎魔術で燃やす。
魔力量、質量ともに十歳にしてはかなり多い。魔王の時の記憶もあるので魔術に関しては何の問題もなかった。
むしろこの年齢でここまでの魔術をほいほい出しているというのに城の人間は驚いていたが当の本人は何も気づいていない。
「得意魔術が変わらず火っていうのは結構ありがたかったな」
自分の手を握ったり広げたりしながら呟く。
属性魔術は並み程度にできるようになっており、そこでの応用……例えば光魔術の光度をあげ雷に変えたり……というのも可能になっていた。
その中でも炎魔術が常識離れだった。
常時青い炎……青炎を発動出来、炎魔術に関しては詠唱をなしに発動可能まで成長していた。
(他の魔術もそのうち詠唱なしにできるんだろうけど、こんなにも簡単にできちゃうとこの先どうなるんだろうな)
そんなことを考えていると、後方から声が聞こえ……振り返る。
「お前はほんとすげーな……レイ」
「ベル兄さん……いつの間にいたんですか?」
「いたよ?ずっとね……お前は魔術になると周りが見えないから心配になるぜ」
「……ハハハ」
レイは頭を掻きながら苦笑し、ベルは軽く溜息を吐きながらも優しい笑顔で話していた。
「お前にはものすごい才能がある……俺なんかよりな」
「……ベル兄さん……」
ベルは自分の剣を持ちながら言い、レイは剣に視線を向ける。
兄は魔術の才がないものの、剣術の才能はものすごいものだった。
弟であるレイは魔術の才能が当たり前だがすごかったので剣を握ったことがない。
それでもレイは兄を尊敬している。
この世界に生まれて十年。いろいろなことが分かった。
ここは英雄暦1053年で、魔界と人間界が合わさった世界。
おそらくは魔王である俺が殺されてからの年月をさしているのだろう。
要するにここは……俺が死んで1053年後の世界という事だ。
ここリアベル国という国は人間も魔界の人間……つまりは魔術を扱えるものがどちらも住んでいるらしい。
しかし、残念なことに俺の家系は『剣術』を代々受け継いでいたという事もあり、俺は少し異質な存在として知られていた。
が、今は積極的にコミュニケーションを取っていたおかげというのもありそういうのもなくなった。
ベルは視線を逸らしながら、後ろに隠していた二本の竹刀を見せて言った。
「レイ……お前、剣は握ったことがなかったよな?」
「そうですね……一度もないです」
「俺と手合わせしてくれ」
「それは……どうしてですか?」
「俺はお前が剣術もできるんじゃないかって思ってるだけだ。安心しろ……手加減はしてやる」
そう言われ、少し困惑しながらもその竹刀を受け取るレイ。
(いったい……何を考えているんだ?)
距離を取り、構えを取る兄を見て小首をかしげるレイ。
(もし……父上と母上が言っていたことが本当なのだとしたら……すまないレイ。こんなお兄ちゃんを許してくれ)
心の中で謝罪し、ベルは声を上げる。
「いつでもいいぞ。レイ」
「わかりました。では……行かせていただきます」
そう言って、レイは竹刀をぎゅっと持ち……ベルに向かって走り出す。
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