23話 勇者はまだ子供のようです
ロスカ国を出て、海底迷宮に向かうレイとビーネ。
ここから海底迷宮はさほど遠くない。しかし迷宮と呼ばれるのもあり行き方はかなり複雑だ。
が、しかし……レイは元魔王なので行き方全てを把握している。
「迷いなく進むけど、大丈夫なのか?」
「こういう魔術が絡んだことなら得意なので」
「そうか……まぁならいいけど」
(別に疑うわけではないが、海底迷宮と伝えて行き方を聞くわけでもなくすらすらと道を進むんだもん。そりゃ心配するよ)
肩を竦めながら歩いているレイの横顔を見るビーネ。
今歩いている場所は何の変哲もないただの道。
海底迷宮は向かう途中で一歩でも間違えてしまえば最初から道をたどらないといけない。
それらを何日、何週とかけていくのだが……この調子だと二日もあればついてしまう。下手したらもっと早いのではと考えてしまう。
「一応言っておくが、道を間違えてもどこで間違えたかは教えてくれないから下手したら一生つかない可能性だってあることを忘れるなよ」
「わかっていますよ。安心してついてきてください」
レイの言葉にビーネは軽く溜息を吐く。
これでは自分がついてきた意味がないじゃないかと。なんのためにいるんだと思考してしまう。
(目に魔力を込めることで海底迷宮に繋がっている微量な魔力をたどるだけでいい)
そう。レイは人間離れしたやり方で目的地へと向かっていた。
自分の根城にしていた場所で迷うことなんてないのだが、もしかしたら新しい魔王が行き方を変えている可能性も考えている。
幸い今のところは何の変化もない。どうして微量の魔力が流れているのかというと答えはシンプル。
魔王の魔力は隠していても隠しきれない。ある程度の距離に入ってしまえば魔王の魔力をたどることは容易だ。
(まぁそれを最初に思いつかなかった俺もまだまだだな)
レイは目を細めながら自分の愚かさに固い表情になる。
「そろそろ日も暮れてきた頃ですしこの辺に寝床を用意しましょうか」
「そうだな」
ビーネはファジアから預かっていた紙を広げて魔力を流し込んだ。
初めて見るそれにレイは驚きながら興味津々の目を向ける。
「なんですかそれ!」
「これか?魔紙といって魔術が書かれた紙だよ。ここに魔力を流し込むだけで発動する仕組みだ。魔術バカの勇者も初めて見たか?」
「はい……確かにそういうやり方もありますね」
(魔紙……特別な材質の者なのには違いないだろうが……高等魔術の類も行けるのだろうか)
「あの、何か良からぬことを考えてないか?」
「そんなことないですヨ!」
「語尾がおかしいぞ語尾が」
ジト目を向けながらもビーネが魔力を込めるとその紙は物体に変化し、なんとも素晴らしい寝床が出現した。
「寝床……というより宿じゃないですか」
「とても便利で助かるよ。魔術というものは」
ここ千年でかなり魔術は進化した。というより、簡略化に近い。しかし攻撃系統の魔術は進化どころか退化して言っている。
だから今の時代、剣士が多いのかもしれない。
簡易宿の中に足を運び、綺麗なベッドに腰を掛けるレイ。
すると、ビーネが突然……服を脱ぎ始めた。
「……ッ!?ビ、美美美ビーネさん!?何を!?」
「ん?何をって、着替えだけど?」
「言ってくれたら自分、外で待ってますよ!?」
「別に、子供に見られるくらいなら平気だが?」
「そういう問題ではなくて!」
「……?」
鎧を置き、服を脱ぐビーネ。
もう美ー音さんでした。
美しく大きなものが実っており、そこに目をやらないように必死で逸らしました。
確かにはたから見れば十歳の子供……なのには変わりないのかもしれませんが、この人は元魔王。
しかも、そういう状況には慣れていなかったのです。
それがビーネ視点では子供ならではの反応に見えて……
にやりと笑みを浮かべながらからかい始めるビーネさん。
「君もまだ可愛い子供じゃないか」
「うるさいです!」
(十歳っていうのはこういう事なんだよ……今までがおかしかっただけ)
うんうんと頷きながらお構いなしに服を脱ぎ、ラフな格好になっていくビーネさん。
レイは見ないように顔を違う方向に向け、目を閉じていた。
「もう大丈夫だよ」
「ほんとですか?」
「ほんとほんと」
その言葉を信用して目を開けるレイ。みんなの憧れのビーネさんは、黒の短いズボンに白いタンクトップの……憧れとは程遠い姿をしていました。
そんなとてもエッッッッな格好にレイは呆れ半分、興味半分の難しい表情をしつつ思わず質問してしまう。
「その恰好、もしかして城でもしているんですか?」
「当然だろ?プライベートでは自由にさせてくれよ。」
いつも完璧であり続けないといけない聖騎士長……確かにいろいろと重たいものを背負っているのでこういう時くらい許してほしいというのは理解はできる。
レイは少し気まずくなりながらもベッドに潜った。
この時、まだ俺は子供なんだなと思った。
◇
翌日、レイが目を覚ますとビーネの姿がなかった。
水魔術で顔を洗い、レイはすぐ外に出た。すると……ビーネは木剣を持ちながら素振りをしていた。
「お、起きたか……おはよう。いい朝だな」
「おはようございます。ビーネさんって、もしかして毎日その素振りをしているのですか?」
「そうだ。君でいう所の私は剣バカってやつなのかもしれないな」
Sランク冒険者が何かあるのはないとはわかりつつも何事もなかったことに胸をなでおろした。
そこから小一時間くらいレイも素振りに参加した。
「時間もいい頃だし、向かおうか」
「ですね……ッ?」
身支度をすまし、出発をしようとしていた二人。レイは足を止め目を見開いた。
「どうした?」
「魔力が……途絶えてる!?」
「……!?」
レイが声を上げると……ビーネも目を見開き驚いていた。
(寝ていても意識はしっかりと地面に向けていた。微かな魔力を俺は見逃さなかった……今になって、道が消えた!?)
一瞬、道を間違えてしまったと思うレイなのだが……勘が言っていた。
そんなはずはあり得ない。これは誰かが何かをした……阻んでいると気が付いた。
すると、その予感は見事に的中し……ビーネは剣を持ち振り返る。
「レイ……どうやら私達にお客さんの用だ」
「ええ……そのようですね」
後方から歩いてくる……黒いスーツに黒のハットを被っている人物を見て、二人は不気味な殺気を感じ取った。
「「……ッ!?」」
(こいつ……強いッ)
「最近、十歳のガキがSランク冒険者になったっていう噂があったんだが……お前だな?後をつけてみれば、魔王討伐する所……同じSランク冒険者の聖騎士長ビーネと一緒ってことは、勇者だな?」
直後……一瞬にして距離を詰め魔術を発動していた。
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