19話 元魔王は勇者と認められるようです
「ん……う……」
真っ暗だった視界が、はっきりと映る。
そこは先程までとは違い、青い空だった。
私はすぐに理解することが出来た。ダンジョンボスとの戦いは終わったのだと。
隣に視線をやると、目閉じながら座っているレイの姿があった。
きっと、疲れて眠ってしまったのだろう。起こさないようにゆっくりと起き上がるのだが……
「あ、起きましたか」
「こわ……起こさないようにしようと思ったのに」
「お気遣いどうも……ですが自分は大丈夫です。それより、ひどい傷だったので全て治しておきました。どこか変な所があったら言ってください」
「ああ、ありがとう」
そう言いながらビーネは体を捻ったりほぐすように動かす。
特に異常はなく、なんなら体の調子がいいくらいには回復していた。
やはり十歳とは思えない末恐ろしい子だなと考えつつ、ピカピカになっている鎧に目が行った。
「一応、鎧ももとに戻しておきました。余計なお世話でしたか?」
「いや、助かるよ。全く……君には頭があがらないな。私がいなくてもダンジョンの攻略出来たんじゃないのかって思えてしまうよ」
ビーネは肩を竦めながら言った。
自分は誰よりも強いと思っていた。それなのに……助けてもらうどころか頼りっぱなしで、鎧まで直してもらった。
兵士の前では完璧でないといけない。それがビーネ聖騎士長。兵士たちは一度もボロボロになった鎧を見たことがない。だからこそ、レイが直してくれた鎧は非常にありがたい事なのだ。
(本当に……我ながら情けないな)
軽く溜息を吐きながらその辺にあった岩の上に座る。
ビーネは足を組みながらレイに聞いた。
「それで、君はこれからどうする?」
「そうですねぇ……俺はこのまま色々な国に行って情報収集ですかね」
「そうか……まぁこれ以上は余計なお世話かもしれないな」
「……?」
レイは小首を傾げながら不思議そうにビーネを見ると、ビーネは微笑し空を見上げながら言った。
「今回の事で国のお偉いさん方も君に注目するだろう。私達の国……ロスカ国は勇者と交流が深かったんだ。私の言いたい事、もうわかるかな?」
「もしかして、勧誘されてます?」
「ハッハッハ……君は本当に面白いな。そうだよ。でも君が断るのなら話は別だ。これ以上何も言うまい」
出会ってから今までで一番いい笑顔を見せるビーネ。最難関のダンジョン攻略に成功したからなのか、それともこれが素なのか……気が抜けている聖騎士長。なんか変な感じはするが悪くはなかった。
レイは口元に手を当てながら考える動作を取る。
(前の勇者がこの国と交流が深かった……それだけで興味はあるな)
正直、勧誘の件に関しては先程説明した通り入る気はない。いろいろな国に行って魔王の情報を探るつもりだ。
だが、勇者との交流があった国だ。何もないはずもない。
「その……勧誘の件は一旦保留するとして、国に一緒に行くことはいいのでしょうか?」
レイがそう聞くと、ビーネは即答した。
「もちろん。大歓迎だ。危機が去ったというのもあり宴をするだろう。ぜひ君にも参加していただきたい」
「そうですか……わかりました」
それくらいなら問題ないだろうと思い、レイはビーネと兵士たちについていきロスカ国に足を運んだ。
◇
ロスカ国の門をくぐると、待っていたかのように民たちが声を上げながら兵士たちを歓迎していた。
「おい!ビーネ聖騎士長が帰ってきたぞ!」
「あのダンジョンが攻略されたんだ!」
「これでこの国に危害が及ぶことはないな!」
「安心だ!」
「きゃー!ビーネ聖騎士長よ!こっちむいた!」
といっても……主にビーネ聖騎士長だが。
レイはフードを被り、目立たないようにビーネ聖騎士長の横を歩いていた。
兵士たちが歩く場所以外びっしりと民たちで埋まっており、レイはその光景を見て驚愕していた。
(人がすごい多いな……俺の国の人口の何倍かはいるんだろうな)
レイの故郷、そして勇者の国……リアベル国は人口が少ないわけじゃない。むしろ多い方だ。
そこと比べてもかなり多いと感じてしまう。
そうこうしているうちに城の前までつき、ビーネが声を上げる。
「ロスカ騎士団……ただいま戻りました」
数秒が経ち、自動で扉が開く。
すると次はメイドや執事がずらりと並んでいた。
そしてその奥から、一人の男……この国の国王らしき人物が歩いてきていた。
「ご苦労……此度の件は手紙にて拝見した。そちらが……新しく登録されたSランク冒険者ですな?」
フードを外し、レイは軽く頭を下げる。
「よいよい。是非頭をお上げください。ロスカ国を代表し、感謝申し上げます。」
「い、いえ……ビーネ聖騎士長や兵士さんの助力があってこその勝利です。」
「そうですか……立ち話もなんですので客室に案内させていただきます。」
一人のメイドが声を上げて、レイを客室に案内しようとする。
「それではまた後でな。着替えたら私もすぐにそちらへ向かう」
「わかりました。それでは」
ビーネと言葉を交わし、レイは案内された客室へと向かった。
「ビーネ聖騎士長とファジア様がお見えになるまでしばしお待ちください」
ゆっくりと頭を下げ、部屋から出て行くメイド。レイは会釈だけ返し、部屋で一人取り残される。
少し気まずさを感じながら部屋を見渡す。
客室とは思えないものすごく豪華な部屋だ。
白と金がベースでつくられており、今座っているこのソファもふかふかで気持ちがいい。
レイはソファの柔らかさに堪能していると客室の扉が開く。
「遅くなってすまない。」
「大したものはないのですが、どうぞお寛ぎなさってください」
ビーネとロスカ国の国王……ファジアが二人同時に来ていた。
レイはすぐに立ち上がり、挨拶をした。
「いえ、大丈夫です。お招きいただき本当にありがとうございます」
「国を救った英雄……お招きするのは当然ですよ。ああ……本当に会えるとは……」
扉が閉まり、執事やメイドがいない三人だけの部屋。
ファジアは声を震わせながら口にし、レイは小首をかしげる。
「すみません。自己紹介がまだでしたね。私はこの国の国王……ファジア・フォレストと申すものです」
「そして私が、ロスカ騎士団団長……Sランク冒険者のビーネ・フォーチューンです」
「ちょ……な、なにを!?」
二人は挨拶をしながら片膝を地面につけレイに向かって頭を下げる。
当然レイは慌てながら頭を上げるように言うが、二人は聞いてくれなかった。
そして、ファジアが口にする言葉に……レイは再度驚愕した。
「この日を待っていました。勇者様……」
「……勇者……様……」
レイはその場で固まるようにそう口にした。
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