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最強の魔王が転生したら勇者だったので現代の魔王を討伐することにしました  作者: Mini


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15話 聖騎士長は本気を出すようです

 どうして敵が襲ってこなかったのか。今になって理解できた。

 二人をこの場所に来させるため……他の場所よりやけに広く、今までは前後からしか攻撃を仕掛けられないのに対し、これは囲うように襲うことが出来る。


(まずったな……モンスターにこんな知能があるなんて信じられない。さすが突発的ダンジョンというべきか)

(どうする……Sランク冒険者とはいえレイはまだ子供————)


 刹那、ビーネは今までの癖が出てしまう。


(違うだろ……何のためにSランク冒険者を連れてこのダンジョンに来たんだ)


 使えない兵士……守らないといけない兵士じゃない。

 同じSランク冒険者で、頼れる人間のはずだ。

 だったら……出し惜しみをしている暇なんてないじゃないか。

 ビーネはすぐに戦闘態勢を取るように、姿勢を低くしながら懐の剣に手を翳す。


「レイ……私が合図を出したら何でもいい、魔術を全体にまき散らしてくれ。モンスターの視界を奪うように……」

「わかりました」


 ビーネの意図をすぐにくみ取り、レイは頷く。

 鬼のような形をしたモンスターたちは勢いよくこちらに接近しており、数体の攻撃が当たろうとした瞬間————


「今だ!」


 ビーネの合図に、レイはすぐ応える。

 発動したのは雷魔術。迫りくる鬼の足元を雷で麻痺させ動きを封じこむ。

 それと同時にモンスターたちは自分の足元を見る。

 

(視界を奪うだけでよかったのに……さすがだな)


 ビーネも思わず称賛。そして、不敵の笑みを浮かべながら一瞬麻痺で動けなくなったモンスターたちの首をはねる。

 その間……わずか一秒にも満たない速さ。

 しかし、今までとは数が違う。弱い敵が群れで動いているのではなく強い敵が群れで動いている。


「ビーネさん!まだ来ます!」


 レイは声を上げながら右手から魔力で練り上げた鞭のようなものを出し、そこから青い炎が放出する。

 それを振りまわし、迫りくるモンスターたちを燃やし尽くした。

 

(もう少し威力を上げたいが……ここは邪魔をするわけにはいかないか)


 この戦闘においてビーネの近接戦闘は必要不可欠だ。

 レイはダメージを出しつつサポートに徹すると決めた……のだが。


「レイ!私に構うな!私もお前に構わない!ここは最速で潰すぞ!」

「……!?わかりました!」


 ビーネがそう言うと、先程よりも深く……構えを取る。

 そして息を吸い……吐く。



 瞬間……辺り一帯のモンスターの首が同時にはねる。



「……風斬神空撃」


 鞘に手を翳したまま、唱える最高剣術の一つ。

 その場から動いていない。目で斬る面をとらえる術。

 人間離れした剣術を目の当たりにし、レイは思わず目を見開いてしまう。


(これが……Sランク冒険者、剣士の実力……)


「さすがだ……」


 レイはそう言葉をこぼしてしまう。

 やはり、この人の剣術は見惚れてしまう。

 勇者が使っていた技と似ているようで似ていない……そんな感じがする。

 が、しかし全員の首をはねたわけじゃない。残っているのはレイ側の敵。

 ビーネがわざと残したようにも見える敵数にレイは苦笑しながらも魔術を発動した。


「……乗ってやるよ」


 ボソッと呟き……今まで抑えていた魔力を勇者になって生まれて初めて解放した。

 静かだった魔力が、咆哮を上げるように上に上り立つ。

 邪悪ともいえる魔力がダンジョン全体を包んだ。


「ここまでとは……ッ」


 十歳のSランク冒険者が強いことは知っていた。

 勇者だから……Sランクだから……と、ビーネはそう思っていた。

 だが、今目の前にいるこの少年を勇者だと思えなかった。

 禍々しい魔力を肌で感じ取り、同じSランク冒険者のはずなのに魔力だけで圧倒させられるこの威圧感。

 ビーネは敗北感と同時に、高揚した気持ちが沸き上がっていた。


 

 レイは右人差し指を立て、魔術を唱えることなく炎魔術の最高火力を放つ。

 それは炎魔術の最高術……紫炎。

 レイから前の壁、床……そして天井がえぐれ、モンスターたちは当然跡形もなく消え去った。

 人間離れした魔力。そして十歳が放ってはいけないその威力。ビーネは言葉を失っていた。

 レイ自身気持ちが高鳴っていたというのもあり、戦闘が終わり我に返ると「さすがにやりすぎたな」と声を上げてしまう。


「君の魔術には恐れ入ったよ。これでもまだ本気じゃないんだろ?」

「……どうでしょう。ビーネさんの攻撃も本気のようには見えなかったですけどね」

「私の攻撃は本気だったよ。ただ君を挑発するように敵を残したのも事実だ」

「そうだったんですね」


 わかってはいたが知らないふりをして話すレイ。ビーネはあたりを見渡しながら話す。


「どうして君は、杖(・)を(・)使(・)わ(・)ず(・)し(・)て(・)並外れた威力を出せるんだ?普通魔術師は杖を使うだろう?剣士が剣を使わないのはあり得ないからね」


 至極当然の言葉に、レイは視線を上に向けながら言った。


「自分の指を杖代わりにしているんですよ」

「……はい?」


 頭の中が一気に真っ白になるビーネ。

 当然だろう。何を言っているのかさっぱりなのだから。

 レイは十本の指を見せながら言った。


「人差し指は炎、中指は水。風なら中指。逆の手の人差し指は雷。みたいな感じで指を杖代わりにしているんですよ」

「……なるほどわからん」


 わかるよ?説明は分かる。でもそれが出来ないから皆杖を使う。

 十歳の子供が出来ていい芸当ではないのだ。

 それでも、ビーネは疑うことなくSランク冒険者ならできるかと納得してしまう。


(まぁ、確かに杖があった方が楽だ。詠唱も端折れるし、何より威力が桁違い。でもなぁ……)


 レイはたった一つの理由だけで使わなかったのだ。


(ダサくね?普通に手から出した方がかっけぇじゃん)


 と、心の中で独り言つ。


「それじゃあ、指を重ねると魔術を同時に発動できるのか?」

「できますよ。というより、魔術の同時発動はそう難しくありません。詳しくは戦ってるときに見せた方が早いでしょう」

「そ……それもそうか」


(これで剣術も使えるって……本当に末恐ろしい子だ)


 ビーネは少し恐怖しながらも、ここの階のクリアに安堵した。

 二人は更にその先に進み……階段を下りる。

 先程とは違い、一本の通路。

 敵の姿、気配は感じられなかった。


「……この先にダンジョンボスがいる」

「ですね」


 二人はすぐ気づいた。

 そして、常設のダンジョンとは違い、突発的ダンジョンの敵は数倍強い。このダンジョンのモブ敵は普通の常設ダンジョンのボス級の強さ。

 この突発的ダンジョンのボスは計り知れないほどの強さをしているだろう。

 嫌な気が二人の肌に触れる。

 しばらく歩くと大きな扉にたどり着く。


「……準備はいいか?」

「はい。いつでも」


 二人は視線を合わせ、同時に頷く。

 そしてビーネがその扉を開けた。

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