14話 元魔王は強すぎるようです
レイが走り出したすぐ……それに反応するように敵の無数の目が一気に開く。
直後、体が硬直するように固まってしまう。
「なるほど……金縛りか」
魔力を目に込め、何をされたのかを確認する。
おそらくは魔力に反応する何か……と考えるのが妥当だろう。
レイは不敵な笑みを浮かべながら言った。
「こんなもんで俺を抑え込んだつもりか?」
現状は動けない。ただそれだけだ。
敵は接近してほしくないのだろう。でも……ただそれだけなんだ。
「お前、どうせ俺の魔術の出し方をその目で見ていたんだろう?だが残念なことに俺は手を使わなくても魔術が発動出来んだよ」
レイがそう言うと……俯瞰していた敵の様子が一変。何かを察したのか動きが固まっているレイの所へと走り出した。
直後————
敵の頭上からバリバリと雷の音がなりながら、降りかかる。
それをもろにくらった敵はレイにかけていた金縛りが解かれ……レイは一気に走り出す。
雷で痙攣していて動けないのを利用し、レイは敵の頭上に飛び真上から狼に使用した威力の数段上の炎を展開する。
一瞬……青い炎が紫色の炎に変わるが、敵はすぐに塵となり消えた。
ビーネは恐怖心すら覚えていた。
「……これが、Sランク魔術師の力……いや、もっとしたらそれ以上の可能性だって……」
「そちらももう終わりましたか?さすがですねビーネさん!」
「……え、えぇ……」
(何この子……本当に怖いんだけど)
敵を倒し、子供のように無邪気な笑顔をするレイを見てゾッとするビーネ。
(今、一瞬炎の色が変わったけど……触れていいのかしら?)
と、心の中で独り言ちながらも軽く顔を振る。
「先に進みましょうか」
「そうね」
この階には敵がおらず。階段を下る形で先に進めるらしい。
二人はその階段を下り、次の階に進んだ。
◇
先に進んだはいいものの、モンスターたちが襲ってくる気配がない。
二人を警戒しているからなのか……それとも何かの合図を待っているのか……
「妙ですね」
「そうだな……まぁ目的はこのダンジョンのボスを倒す事だからな。先に進めるならいいさ。ところで、一つ聞いていいかな?」
「……?」
ビーネの問いにレイは傾げながらも頷く。
「どうして剣を使わないんだ?君は勇者の生まれ変わりなんだろう?」
「生まれ変わり?」
「違うのか?」
「どうでしょう……勇者の力をもって生まれてきたらしいのですが、生まれ変わりかどうかは分かりません。というより、ご存じだったんですね。」
「国の聖騎士長を舐めない方がいいぞ。情報収集も仕事の内だからね。君の事を知ってる人は多くないとはいえ、少なからず知れ渡っているのも確かだ」
「そうだったんですか……」
「けどそうか。てっきり生まれ変わりかと思ったが違うのだな」
「どうしてそう思ったのですか?」
レイはビーネにそう聞くが、ビーネはジト目を向け苦笑しながら答える。
「君、強すぎるんだよ。さっきの戦闘を見て確信した。今まで数多くの冒険者を見てきた。それこそ自分を勇者だとかいう人間にもね。でも本当の勇者は自分の事を勇者だなんて言わない。力を暴力や権力の為に使うのではなく、誰かの為に……顧みず使う。」
「……そうなんですね。ビーネさんにとって勇者とはなんですか?」
その問いに、ビーネは今までになく優しい顔で言った。
「この世界を……国を救った英雄だよ。」
きっと、魔王時代に戦った勇者だろう。
今は自分が勇者だとはいえ、今まで自分が世界の脅威だったのには変わりはない。
この時……少しだけ胸がもやっとした。
「君の答えを聞いてなかったね。なんで剣を使わないんだ?」
ビーネはレイの腰にかかっている剣を見ながら言った。
レイはその剣に手を翳しながら、視線を逸らしながら答える。
「兄からの贈り物なんです。使おうとは思ってるんですけどもったいなくて……それに、俺は剣術より魔術の方が性に合ってるようなので」
「そうか。まぁそういう理由なら仕方ないと思うが、君は魔力と魂が混ざり合っているような感じがしている。私からしてみれば剣術も魔術と同じように扱えると思うが……」
(というより、それを十歳の子供がやっているというのが末恐ろしいのだが……)
レイは頭を掻きながら誤魔化すように言う。
「どうでしょう……毎日鍛錬はしていますが、そうだといいですね」
十歳の子供なのに謙虚で、自分の力を隠しているレイに少し納得のいかない様子のビーネ。
次にレイが質問を投げかける。
「どうしてビーネさんはSランク冒険者なのに一国の聖騎士長をしているのですか?」
「話せば長くなるが……一言でいうなら、そうだな。魔王を殺すためかな」
「……ッ」
レイは何故か、この時ものすごく身構えてしまった。
自分はもう魔王ではないはずなのに、その敵意を確かに感じ取った。
ビーネは少し不思議そうにレイを見るのだが、話を続ける。
「最初はダンジョンを探しながらってことをしていたけど、国と関わればそういう話題は出てくる。あとはSランク冒険者という権力を見せれば簡単だ。」
「なるほど……利口な考えですね」
ビーネの言っていることは理解できる。
自分でちまちま探すより国そのものに入れば情報収集もしやすい。
それがSランク冒険者ならなおさらだ。世界に数人しかいないSランク冒険者なら魔王討伐の話も出ているのだろう。
ビーネがレイの存在を知っているというのもあり、レイは質問をした。
「俺は魔王討伐のために冒険者になりました。その、魔王に関する情報ってあったりしますか?」
レイが聞くと、ビーネは軽く顔を振った。
「そうですか。」
「君が知っている情報のみだよ。脅威にはなっていないが確かに魔王は存在している。場所の特定はまだできていないらしいが……」
父親も同じようなことを言っていたな。
この人が言っていることは本当なのだろう。
少しだけ期待している自分がいたが、最初から一人でやろうとしていたことだ。
しょうがないと言い聞かせ、歩く。
「明らかに敵が襲ってこないですね。」
「いや……そろそろ来るよ」
「……?ッ」
ビーネの言葉に、レイも一瞬何かを感じ取った。
確かに、先程とは雰囲気が変わっている。
かなり奥の方に進んだのだが、ここの場所はかなり広い。
「私達を囲っているな」
「ですね……こいつらは最初からこれが狙いだったようですね」
直後……赤い皮膚の鬼のようなモンスターが二人を襲う。
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