13話 元魔王はダンジョンを攻略するようです
ビーネ聖騎士長から思いがけない言葉が飛び出す。
そう……Sランク冒険者という言葉だ。
(少ないって聞いていたが、案外近くにいるもんだな)
ビーネ聖騎士長……23歳にして一国の騎士団の団長にしてSランク冒険者というとんでも経歴の持ち主だ。
巷ではあと一歩で勇者になれたのでは?という声もあるくらいだ。
どうしてレイがそんな人の事を知らないのかは察してほしい。
国どころか城で魔術の研鑽をしていた彼……当然知るはずもない。
レイは少し驚きながらも、頷いた。
「わかりました。自分にできることがあれば手伝います」
「やけに積極的だな……警戒しないのか?」
怪訝な様子で言うビーネにレイは柔らかい笑顔で返す。
「困ってる人がいたら助ける。これが俺の冒険者としての決め事なのでお気になさらず」
「……そうか」
バツの悪い返事をしながらも逆にレイを不審がるビーネ。
レイは咄嗟の言葉に少し後悔しながらも周りを見渡して口にする。
「一体、どういったものなのですか?こんな人数の兵士たちが疲弊しているって……相当なものだと思うのですが」
「君の言う通りだよ……えっと……」
「すみません。自己紹介がまだでしたね。俺の名前はレイ・ノーヴァ……レイで大丈夫です」
「そうか。私も気軽にビーネと呼んでくれて構わない」
(彼がレイ・ノーヴァ……勇者の生まれ変わりと噂されていた子か……確かに彼には恐ろしい何かを感じさせるものがある)
この子ならSランク冒険者なのも納得したのか先程までの警戒心はなくなり、ビーネは今の状況を話し始めていた。
一通り話を聞いたレイは腕で頬杖をつくり唸り声を上げていた。
「う~ん……なるほど。要するに最近できたダンジョンの敵が強すぎていつ暴走するかわからない……ってことですね」
「そうだ。ロスカ国の領土というのもあり我々が調査したが、見ての通り……ボロボロだ」
「そんなに強いのですか?」
「強いな……だが、確信していることがある」
ビーネはそういうと、視線だけでなく体をレイの方に向け真摯に答える。
「君と私なら勝てる。だから……どうか力を貸してほしい。この通りだ」
再度頭を下げるビーネ。レイは顔を上げるように言ってその協力願いを受けた。
「先ほども言いましたが、困ってる人がいたら助ける。それが俺の冒険者ルールです。行きましょう」
十歳に見合わない顔つきをし、ビーネは驚きながらも苦笑し頷く。
このダンジョンを解決しないと帰るのを許されていない兵士たちはダンジョン付近の拠点で休んでもらうことにし、ビーネとレイの二人だけでダンジョンに向かった。
「大丈夫かな二人だけで……やっぱり俺達も……」
「バカか……俺達じゃあんな敵倒せねぇよ。それにわかったろ……ビーネ聖騎士長の邪魔になるだけだって……」
「そうだな……俺達が全員死なずにいられたのもあの人のおかげだし……」
「それに、今は謎のSランク冒険者の子供もいる。子供だけど!」
「そうだよ!あの人たちに任せてたらダンジョンもきっとなくなる!」
兵士たちは向かった聖騎士長とレイの心配をしながらも、信じて待つのであった。
◇
ダンジョンの入り口に着いた二人、レイは門を見上げながら口にする。
「すごい大きな門ですね。ダンジョンって突発的に出るものなんですか?」
「種類によるかな。基本的にダンジョンは決まった場所にしか出現しない。だが近年、突発的にダンジョンが出現するようになり……普通のダンジョンより敵が数倍、下手したらもっと強くなっている。Sランク冒険者は最近、こういう突発的ダンジョンに足を運ぶことが多いかな」
「……そうなんですね」
(確かにこの奥からただならぬ気配を感じる。あの兵士たちじゃ負けるのも納得がいくな)
軽く深呼吸をし、黒の服からマントに変えレイとビーネはダンジョンの先に向かった。
薄暗く、酸素も薄い……周りに敵が無数にいる。姿は見えないが二人は同時に気配を感じ取っていた。
ビーネは何かに気づき、立ち止まって声を上げた。
「このダンジョン……場所は同じだけど私の知っているダンジョンではないな」
「……というと?」
「……時間経過で変わるのか……はたまた……」
口元に手を当てながら思考するビーネ。
兵士を連れてやってきたときはこんな感じじゃなかった。
雰囲気や場所は同じだが、察知する敵の強さがまるで違う。
一言で表すのなら……
「一気に階があがったような感じだ」
ビーネがそう口にすると、後ろから迫りくる一体の敵。
レイはすぐに気づき魔術を発動させようとするが……
「……ッ!?」
レイが魔術を発動させる前に、ビーネは懐から剣を抜き……ものすごい速度で敵の首を落としていた。
「……安心しろ。立ち止まっていたとはいえ、油断していたわけじゃない。」
「そ、そうですか……ものすごく速いですね」
「それが私の売りだからな」
ドヤ顔交じりに言うビーネを見て、レイは苦笑しながらも見惚れてしまっていた。
(今の、並大抵の人間じゃ追えない速さだろ……この人だけ無傷だったのもわかるわ)
そうこうしているうちに、音に反応したのかわらわらと出てくるモンスターたち。
ビーネは剣を構え、レイに背中を預けるようにしていった。
「君の力……拝見させてもらうよ」
「……失望させないように努力しますよ」
そして互いがモンスターに走り出す。
レイの前方にいるのは狼数匹……そしてその奥には体中に目があるなんとも気色の悪い敵だ。
こちらを俯瞰しているように眺めている。
「なるほど……まずは手下どもを殺せってか!」
レイはそう言いながら右手を振り払うようにして魔術を発動する。
青い炎が辺り全体を包み込み、狼たちはその炎に怯む。
振り払っていた手を握ると、青い炎がパッと消えるのと同時に狼の姿が塵となり消えた。
(城とは違って力をセーブしなくていいってこんなに楽だったんだな!)
レイは心の中でそう言い、気持ちが高鳴ってしまう。
「もう少し楽しませてくれよ!モンスター共!」
そして俯瞰している敵の元へ走るレイ。
その光景を見ていたビーネは剣をふるいながら呟く。
「まったく……恐ろしい子だ。勇者じゃなくて魔王じゃないか?」
本当に不気味な子だ。
腰に剣をしまっているのに主は魔術で戦闘している。
極め付きはその威力……魔力が高いからというだけでは説明できない威力だ。
「まさに洗礼された魔術だ……私も負けてられないな」
そういいながらビーネは迫ってくる無数の敵……キメラを目に見えない速度で切り刻んだ。
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